映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

小谷承靖 監督「ピンクレディーの活動大写真」3608本目

アカデミー賞に背を向けるかのように「サザエさん」に続いてピンクレディと昭和にさかのぼってみる。

1976年にデビューしたわずか2年後、1978年12月公開の映画初作品。すでに「ペッパー警部」「SOS」「カルメン77」「渚のシンドバッド」「ウォンテッド」「UFO」「サウスポー」「モンスター」「透明人間」と大ヒットが続いたところ、つまり全盛期。

劇中、あまり脈絡なくステージ衣装で楽曲を歌う場面が次々に出てくるなかで、「サウスポー」ではすごく小さいセパレーツの、ラメだらけのブラとトランクスで野球をするっていうのが、あまりにも露出しすぎでなんか変なかんじ。

それにしても、このとき20歳くらいのミーとケイ、よく声が通るしダンスはキレッキレ。ジャストカウントで動くミーと、食い気味に先走って踊るケイ、懐かしいなぁ。韓流の歌って踊れるアイドルなんて足元にも及ばない巨大アイドルでした。

劇中劇(1)でミーとケイは仲良し姉妹。ミーは妹でOL、ケイは姉で看護師。二人どういうわけか同時に同じ男性に恋をするんだけど、これが田中健なんだな。姉妹げんかのセリフが漫才みたいにベタで、落ちがない・・・。田中邦衛や石立鉄男、秋野大作がギャグドラマをつないでいく感じも昭和のテレビ感が強い。

劇中劇(2)ではピンクの大きな着ぐるみが出てきてサーカスでモンスターと呼ばれます。この曲はマイケル・ジャクソンの「スリラー」のパクリかなと思ったら、スリラーは1982年なのでパクったとすればマイケルのほうか(笑)。このピンクのモンスター、サーカスで芸をやらせようとするのも今ではアウトだし、いろいろと何から何まで突っ込みどころばかり。そいつが本当はモンスターじゃなくてエイリアンで、UFOに乗ったらピンクレディは透明人間になってしまう。もはや三題噺の羅列みたいになっています。テレビだ、これは。ただ、宇宙船だのなんだののセットはけっこうよく作ってあって、昭和の豊かさを感じます。ちゃちくない。

劇中劇(3)はウエスタン。”西部劇の歌姫”ドレス姿かわいい。ヒーローは岡本富士太です。途中からカウガールスタイル、そしてまたドレス。西部の荒くれものの中に、なぜか大林亘彦。なるほど、どうりでとことんデタラメだったんだ・・・(一部演出してたみたいですよ)

だいいちタイトルの「活動大写真」っていうのが、製作者たちの戦前のセンスです。そしてターゲットは子どもなんだろうな。当時映画館かテレビでこれを見てたら、くだらないけど楽しいって思ったんじゃないかと思います。昭和のアイドル文化をフィルムに残した功績は認めてあげたい・・・。