映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ダニエル・シャイナート&ダニエル・クワン監督「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」 3610本目

「スイス・アーミー・マン」で一度呆れているので、何の期待もしないで見ました(笑)。なんか旬だし。で、前作同様、子どもの心を持ち続けてる人たちが作ったと感じる部分も多いけど、どこか汎世界観というか汎次元というか、タイトル通り一瞬はすべてですべては一瞬だ、というような達観した、いにしえの中華思想のようなものも感じさせる作品でした。いつどこで、どんなに運命や次元が分岐しても、妻と夫と娘は出会う。巨大なエネルギーどうしの衝突を避けさせようと周囲はがんばるけど、結局のところ、きちんと向き合って和解するしか先に進む方法はない。たとえ生命のない世界の岩と岩でも。・・・という映画の芯の部分が普遍的なので、この作品は意外と10年後、20年後に日本で見ても面白いかもしれない。

キャストについていうと、ポスターなどからミシェル・ヨーがもっと最初からヒーロー然としているのかと思ったら、普通のこどもがヒーローになるような作品ではもう意外性がないからか、移民の中国系のオバサンがヒーローになるという、転生ものに近い形でしたね。

対する国税庁の監査人ジェイミー・リー・カーティス、最高でした。手がソーセージ。(こういう発想は監督が子どもの心を持ち続けてるとしか言いようがない)もし私が女優に転生したら、この人のこの役がやりたい。(めちゃくちゃ楽しそうなので)

キー・ホイ・クアンもすごく良かったですね。どこから見ても頼りない男が、スーツをびしっと着るとスマートなエリートに見える。

すっとぼけた爺さん「ゴンゴン」を演じたジェームズ・ホンはなんかすごく見覚えがある。いろんな作品に出てたんですね。94歳なのになんと闊達な。

ステファニー・スーについては情報が少ない・・・彼女だけ見てると、園子温の作品でも見てるような気になってしまうのはなぜだろう。

しかし、時空を超えて何度も出会う物語、古今東西すごく増えてる気がして、そこはもう新しくは感じないけど、アメリカにおける中国系のコインランドリー経営者家族が中心に世界が動くところが新しいんだろうな。アメリカで興行収入がすごかったと聞くとちょっと意外。私たちよりもアメリカの人たちのほうが、アジア移民のヒーローにみる意外性が大きくてバカ受けしたのかな、と思うと、ちょっと複雑な気持ち。。。