映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョルジオ・グルニエ 監督「ブリティッシュ・ロック誕生の地下室」3630本目

タイトルは間違いではないけど、地下室っていうと密閉された倉庫か何か、少なくとも客を入れたりしない録音スタジオかなと思う。これはイーリング・クラブという、かつてロンドン郊外で一部のコアなブルースマニアたちを熱狂させたライブハウスのお話。

ブルースクラブだった時期は1950~60年代の一時期だけで、その後ディスコになったりしたけど今は存在しないようです。・・・って書いてるそばから、高まるテンションを抑えるのが大変。だってローリング・ストーンズやフーやクリームやジミヘンがこの店から生まれたんですよ!それほど当時の若者はアメリカのブルースに夢中で、初めてブルースの店ができたとたんに、猛者たちが結集して夢のようなコミュニティが生まれていった・・・。

なにが悔しいって、90年代に私はロンドンに半年も滞在して、このクラブがあったEaling Broadway駅も何度も乗り降りしてたんですよ。マーク・ボランのお墓は探したけど(※結局到達できなかった)、こんなクラブ(当時はもう跡地)が目の前にあったなんて、なんで知らなかったんだろう。アンプのマーシャルもこの辺にあったなんて。あの地味な駅へと、彼らがロンドン中心部から下りのセントラルラインに乗ってはるばる通ってたなんて。

Time Outとか買って、Mean Fiddlerでウィルコ・ジョンソン・バンド、Town &Country Clubでニナ・シモン、Earls Courtでダイヤーストレイツを見たり、そういえばマッドネス主催のMadstockっていうフェスにも行ったけど、少し昔のレジェンドの歴史のことは、私が情報を入手できる範囲を超えてました。ああ、あの頃のロンドン。こんなに音楽から遠ざかる日が来るなんて想像できなかった。。

また自分語りになってしまった。すみません。

アレクシス・コーナーは名前を聞いたことがあったけど、シリル・デイヴィスは知らなかった。パワーあふれるボーカル、なんて普通のルックス(失礼)。惜しい、なんというボーカリストがいたんだ。惜しすぎる。

私みたいに何かに夢中になるのに時間がかかる者は、大概の同時代のシーンに乗り切れず、すこし前の音楽ばかり聴きがち。しばらく行かなかった間に、ロンドンはきっとスポーツバーの多い、昔とは全然違う街並みになっただろうし、私は「住んでいる人」から「住んでた人」、「住んだことがある人」、いやもう何も関係のない通りすがりの観光客だ。身内だと思っている人たちや、故郷だと思っている場所には、おっくうがらずに会いに行きつづけないとダメだな・・・。

今年こそ久々に行けるかな、ロンドン。