映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ポール・バーホーベン 監督「ブラックブック」3637本目

「トータル・リコール」「氷の微笑」、イザベル・ユペールの「エル」を監督した、あのバーホーベン監督の2006年の作品。全編ドイツ語です。この監督の作品は、人物のたたずまいがリアルで、よく知っている誰かを見ているような生々しさがあります。(たとえロボットや娼婦でも)

ナチスの支配下にあるオランダのユダヤ人女性歌手が、ナチスの手を逃れようとして家族を失い、お金をだまし取られ、ぎりぎり生き延びて復讐に燃えます。敵を愛してしまう女スパイ。追いつめられては逃げのびて、生死のきわを走り抜けていく。裏切るのも愛するのも信じるのも彼女にとっては真剣です。

面白かったなぁ。映画らしい映画だ。それほど響いてこない映画との違いを説明するのが難しいけど、やっぱり人物たちの邪悪さと、それと裏腹な脇の甘さ、日常生活の普通さ、とかがリアリティを作り上げてるのかな。何一つ奇をてらったところのないバーホーベン監督作品、とてもいい作品でした。