映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

太田旬 監督「忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー The FILM #1入門編」3816本目

これは2014年公開なのか。2009年に亡くなったので、すでに5年も経ってた。でも2024年の今も、まだ「#2」は出てないみたいだ。

切なくなりそうでなかなか見られなかったけど、見てみたら、耳に懐かしい音が心地よくて、実家に帰ったみたいな気分だった。まだ実家にいた10代の頃にいつも聞いてたからだな。もう実家は存在しないし、いつも流してたら口ずさむようになった母もとっくにいない。寝てたらご飯が出てくる、ぬるま湯みたいな快適もないし、夕食の後片付けを後回しにしてコタツで食べたぶどうもない。普段こんなにリラックスすることって、一人暮らしなのに不思議となくて、映像が終わったらまたいつもの生活に戻るのがなんともいえない気持ちになった。母がよく戦後の懐メロ番組を見てたのは、こんな気持ちだったのかな。

こういう粗くて生々しいシンプルな音楽は、最近あまり聞かない気がするな。完璧に作り込まれた分厚い音が多い。みんなすき間を恐れて詰め込んでしまうみたいな。昔はロックフェスももっと安かったし、聴いても聴かなくてもいいみたいな感じで、ピクニックのついでみたいだった。

世界って気づかないうちに少しずつ性質が変わっていくのかもしれない。10年後はどんな世界になってるんだろう。いろんなことを諦めて、好きだったものはもうないとわかっても、まだ好きな監督の次の作品が見たい。好きな作家の次の小説が読みたい。と思うので、私は明日も自分自身の姿で目を覚ませてよかったと思うんだろうな。