シャーロット・ランプリングの「さざなみ」の監督か!すごく深いところにある心理を丁寧に繊細に描いたすごい作品でした。この作品は、ほとんど期待しないで見たけど、こちらもすごくいい作品でした。
「異人たちの夏」は見た記憶があるけど記録をとってなかった。あっちはわりあいよくある幽霊譚のように感じたけど、こっちはこれまでの長い年月と、これからの長い年月の中の、孤独や無理解をわずかずつでも解きほぐしていこうとする、深い思索と思いやりの物語のように感じられて、最後に少しの驚きとやさしい気持ちが残りました。
主役アダムは見覚えがあると思ったら、モリアーティですね(TV[シャーロック」の)。それほど悪人っぽいわけじゃないけど、なぜか、何考えてるかわからない雰囲気がある。相手となるハリーのポール・メスカルも、健康で優しい若者なのに、どこか崩れた弱さを感じさせて、そこが魅力にもなっている。という、不思議なケミストリーの二人。
父と偶然出会って、「久しぶり!」と家へ向かう感じとか、すごく新鮮ですね。いきなりだけど自然で、原作を知ってるのに「えっと、この人死んだ父だよね?」と疑い始めてしまう。
というシチュエーションに、ゲイであることのカミングアウト(死後の!)や、無理解から理解への心の動きを重ねたのもすごい。原作と違う結末も、この物語を完成させる上でとても重要な決断だった、と納得します。
見終わったあと、人間って本当に複雑で傷つきやすくて、行動や言葉だけがその人を表すわけじゃない…と、自分を振り返りたくなります。自分の大事な人たち、大事だった人たち、そして大事な自分自身のこと。この映画のように再会することは望めないなら、生きている間に、何かやっておくことがあるかもしれない。もっと話しておいた方がいいことがあるかもしれない。…さすが「さざなみ」の監督です。
ストーリーを追うだけでも面白いし、かつ深い、また新しい名作に出会えたなぁと感じています。