高峰秀子って女優としても好きだけどエッセイなんかも一時期けっこう読んでました。これが、夫の松山善三が妻を主演させた初監督作品ですね。
彼女のかわいらしさというか、普通の人、隣人としての自然ですなおな反応の愛嬌は天性の才能です。今なら、「私は役ほど純粋じゃないです」とインタビューで言い訳をしなければいやな女になってしまうのかもしれません。昔は純粋に夢を信じていられた時代だったのです。こういう映画のよさを味わうには、その当時の観客の気持ちになりきるのがベスト。世代的にはハリウッドのたとえば「散りゆく花」よりだいぶ後だけど、
原泉が若くて優しい。厳しいけど優しくて天女みたいだ。長女の草笛光子は家出して銀座のマダムになっているけど、この人たちと同世代だと思えない…今も健康器具のCMに出てるなんて。
ろうあであることを恥じたり、たとえば背が低かったり美人じゃなかったり、太っていたり痩せていたり、成績が悪かったり運動が下手だったり、いろいろ恥ずかしく思う気持ちには共感できる。そういったことを恥じなくなるためには、自分で自分を教育するしかないんだと思う。
久しぶりにこんな純真な映画を見て、ちょっと心があらわれたような気分です。今の若い子が昭和の歌謡曲を聴いて胸にぐっとくるのも、似たような気持ちなのかもしれない…。