これも劇場に行きそびれた作品。公開からもう2年近くたつなんて!
予告編でだいたい筋はわかっていて、要は若い売り出し中の女優(ナディア・テレスキウィッツ、「悪なき殺人」に出てた)が大物プロデューサーに犯されそうになって逃げる、プロデューサー死ぬ、彼女疑われる、でもあわれを誘う言動で大衆が味方につく、それを妬んだ真犯人で往年の大女優イザベル・ユペールが名乗りを上げる。すごくフランス的だしフランソワ・オゾンらしいしイザベル・ユペール以外に考えられない配役。予想通り面白かったけど、「ひねり」がすごく現代的。
あえて舞台を1930年代にしてあるけど、大物プロデューサーはハーヴェイ・ワインスタインに見えるし、関係者たちの計算があっちいったりこっちきたりするのも、今でもありそう。これを全部口に出して言ってしまうのはフランスではリアルなんだろうか。警察は怪しいものはすべて疑い、無実であっても犯人に仕立て上げたがる。同居している女友達の弁護士は、彼女に有利にはたらくよう、あれこれ知恵を絞る。恋人は「政略結婚するけど愛人でいてくれ」などとぬかす。中でもやっぱり、彼女の無罪判決とその後のスターダムを見てから登場する大女優がフランス的で笑えます。プライドが高いのかゼロなのか謎。どっちにしても、大物プロデューサーは女性の敵であることは疑いなくて、殺されてスッキリ、という映画なのは男性から見ると納得いかないかもしれないけど。これ、1930年代の映画だったら最後に若い女優がなんらかの罰を受けたり、教訓めいたことをナレーションして終わりだろうなぁ。(マレーネ・ディートリッヒの「情婦」とか)
というわけで、これもまたひとつの#MeToo映画のバリエーションなのでした。