映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

早川千絵監督「ルノワール」3949本目

<ストーリーに触れています>

ルノアールじゃなくてルノワール。(ルノアールは「名画に恥じない喫茶店」)イレーネという、血統書つきのコリー犬のような豊かな髪の少女の肖像の複製画をフキは病院の売店で見つけて、ひと目で気に入ります。しばらくは父親リリー・フランキーの病室、やがてそれは自宅の壁に飾られますが、彼女自身を表すような象徴的な示唆ってあったっけ。彼女が夢想したり憧れることはいくつかあって、クルーズ船に乗り込んで、エンジョイしている外国人客と一緒に踊ることもそのひとつ。

しかし映画全体はつかみにくいですね。「ナミビアの砂漠」並み。フキの性格を見てると「こちらあみ子」も思い出す。だいたいは、自分の外の世界で起こることより、自分で想像したことのほうがリアルに感じられるお年頃の少女が、事実・想像、事実・想像、を繰り返している映像なのかな。

大学生の男から逃れて、いや、追い出されてから、彼女はほんとうに雨に降られたんだろうか。おんぶされて帰ってバスタオルで頭をぐしゃぐしゃ…は妄想なんだろうけど。どうやって知らないところから家にたどりついたんだろう、と思った人は観客の8割くらいはいるんじゃないか…。

あと、母の浮気の時系列がいまひとつよくわからないけど、相手は一人?

にしても、父のふがいなさの演技、リリー・フランキー良かったです。石田ひかりも最低でとても良かったけど、この夫婦はフキの祖父母の年齢じゃないかとも思う。こういうのって「冷めきった夫婦」と呼ばれて捨て置かれるだけなのかもしれないけど、曲がりなりにも夫婦として生きてきた人たちが、最低限のケアや心配りをしないのがまあまあ普通、っていうのはイカンよなぁ…。

フキを演じた鈴木唯、まばたきしない大きな目が、将来の二階堂ふみ化を楽しみにさせます。中島歩もいいです。彼はすっかり「どこかこじらせていてちょっと面倒くさいイケメン」がはまり役になってますね。

YMOの「ライディーン」でキャンプファイアーを踊るのって、変なのに妙にリアル。この時代はまだ誰も携帯を使ってないので、これ事実かなぁと思いました。

で、全体を通じていうと、すごく面白かったです。わかりにくいけど面白い。この監督の作品はこれからも見ると思います。