映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アレハンドロ・ロハス/フアン・セバスチャン・バスケス監督「入国審査」3950本目

コロナ明け、ふたたび旅を始めた私としては、この映画の話を聞いていてもたってもいられず、劇場に見に行ってきました。

パスポートやESTAに不備もなく、仕事か短期間の観光で入国したことしかないけど、出張前にバンクーバーで二泊することにして、シアトルの空港でフライトを予約してカナダへ飛ぼうとしたときは、かなり根掘り葉掘り質問を受けたなぁ。(教訓:海外に行くときは、目的地までの往復フライトを日本で手配していくべし)あの頃からホテルの料金は倍以上、ドルも1.5倍になってしまって、アメリカはすっかり遠い国になってしまった…。

この作品はわずか77分だけど、バルセロナの空港へ向かうタクシーの中から始まり、77分のうち70分はニューヨークの空港の入国審査場なんじゃないかな?ここでの70分は、長い。1分が1日にも思えます。スペインに住む、スペイン人とベネズエラ人のカップルが、アメリカのグリーンカードの抽選に当たってすべての手続きを済ませ、無事着陸!‥…と思ったら、手続きはまだ続いていた、いや、これからが本番。「Pareja de hecho」というスペインの事実婚登録制度で登録済の二人だけど、1人ずつ分けられて、まぁプライベートなことを訊く訊く。圧迫面接、いや警察の取り調べですねこれは。その中で、男が隠していた過去が明らかになったりする。もう入国できずに帰国させられるのかしら、それとももっと悪いことがあるんだろうか…。

結末は書きませんが、「この先不安しかない」って気持ちになった人も多いと思います。どんでん返しの見事さ、突き放すような終わり方とユーモア。目のつけどころの良さ、テンポの良さ、人間洞察とユーモアなど、魅力のたくさんある映画です。「落下の解剖学」とか「悪なき殺人」とか、フランスの最近の監督の映画はちょっと怖いけど、この監督たちは隠れてくすっと笑ってるような明るさを感じます。スペイン?ベネズエラ?のお国柄なのかな~。