映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジャック・カーディフ監督 「あの胸にもういちど」3996本目

うわぁ変な映画。「サイケ」でイメージする映像ともまた違う。アメリカ西海岸文化が海を渡ってヨーロッパアレンジが加わったのか。音楽はなんか「すばらしい世界旅行(大昔やってた旅行番組)」みたい、明るくて底がない。

この監督は大昔の「黒水仙」や「赤い靴」を撮った撮影監督なのね。まず何より「絵」にこだわるんだろうな。

アラン・ドロンといえば、私も小さいころからいわゆるあの二枚目ってイメージですが、逆にマリアンヌ・フェイスフルに関しては、私が彼女を知ったのは、かわいいお嬢さんだった時代ではなくて、薬物や飲酒ですっかりのどをつぶした後、1979年にこの映画より1オクターブ低いダミ声で歌った「As teas go by」のセルフ・カバーだったので、若いころはこんなに可愛かったんだ、と思ってしまいます。ダミ声は地獄の底から響いてくるようで、彼女が経験した底なしの苦難を思ってものすごく怖くなったものでした。でもその後、おばさんになってから出演した映画、「マリー・アントワネット」の彼女が良くて、若い娘(当時の私)が無駄に恐れることなんかない、若いころの苦労を経て成熟する人もたくさんいるんだ、と今は思えます。

そのマリアンヌ・フェイスフル、なんかそばかす顔の少年みたいな感じ。無邪気すぎてCMみたいです。で、彼女本当は走ってない?止まってるところしか近接ショットがないような。

夫と住むフランス、アルザスからドロンの待つドイツ、ハイデルベルクへと、あのバイクで国境を超えるのね。夫がまた堅物っぽい。。。そりゃアラン・ドロンに惚れられてしまったら逃げるのは無理でしょう。しかしドロンはどこか陰のある大人の男で、こんな子羊ちゃんに惚れるより金持ちの年上女をだましてるほうが合ってる気がしてしまいます。

マリアンヌ・フェイスフルは徹頭徹尾、国境警備員やガソリンスタンドの従業員、パブの客など、あらゆる場所、あらゆる年齢や職業の男たちから色目を使われて、(みんないやらしい目で見るのよ)などと意識しつつ、まんざらでもないような表情。男の目から見たファンタジーを彼女に語らせることで罪の意識を軽くしてるけど、この映画そのものが、裸に黒のレザーを着た超絶セクシーな女ライダーという性の対象を中心としたソフトなエロスの映画なわけで、最近の女性エクスプロイテーション映画の監督たちからはボコボコにされそうな世界です。小さいころから大人のマンガ雑誌のルパン三世の峰不二子とか見てた私にしてみれば、誰もがオフィスで吸っていたタバコと同じように、どこか懐かしい世界なんだけど。

このあとマリアンヌ・フェイスフルが”男のおもちゃ”にされて荒んでいったことを知っているので、それでもやっぱり切ないですね。。。

あの胸にもういちど(字幕版)

あの胸にもういちど(字幕版)

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