〈結末に触れています〉
「サスペリア」のダリオ・アルジェントが出てるんですよね。そういう興味からも、見てみたかった作品です。が、ギャスパー・ノエ監督作品は、よほど元気なときじゃないと引き込まれてウツになってしまいそうなので、ずっと寝かせてしまいました。
テーマとしてはミヒャエル・ハネケ「愛、アムール」に近い予感。(もう13年も前の作品か。ジャン・ルイ・トランティニャンもエマニュエル・リヴァも故人だ)
画面は常に二分されていて、夫と妻の世界は分断されている。それどころか、夫は認知症の妻のことを心配しながら仕事をしているつもりなのに、妻は夫のことを知らない人だと言い、家に帰りたいと息子に言う。妻の世界に息子はいるけど夫は入ってこられない。
息子のことを夫と勘違いしている瞬間があり、数十年前にさかのぼっている感覚なんだなと感じたすぐあとに、現実をそのまま理解できているような瞬間もある。
老いた夫は今も浮気を続けている、ほとんど会ってはいないけど、20年も続けてきた不倫相手に何とか会おうとしている。妻が夫を忘れそうになっているのは、そういう積み重ねがあるからかも。夫の大事な原稿を破ってトイレに流すのも。彼女は頭がしっかりしているときに夫の薬を毒と混ぜて殺したんだろうか。と一瞬思ったけど、その答がわかるような描き方はしてない。
彼女はぼんやりしながら、我に返ったときにガス栓をひねったんだろうか。。そのままベッドでシーツを頭からかぶり、自分の罪を悔いている。いつ病気で命が終わってもおかしくない、と思っているときに、その時期を自分で選ぶのは「悲惨」?「かわいそう」?最近わからなくなっています。
いつも赤裸々以上に露悪的な作品を作るギャスパー・ノエ、今回は「愛、アムール」に十分匹敵する人間の枯れ方を描いた作品だと思いました。
