映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ポール・トーマス・アンダーソン監督「ワン・バトル・アフター・アナザー」4044本目

面白かったー!

PTA監督はこういう風に、不可逆的運命論(※私は彼の映画は全部これがテーマだと思っています)の映画をエンタメとして昇華してくれたのか。

デカプリオは、すごく勢いがあるけどちょっと抜けた男を演じさせたら最高。無謬の男をやると逆に極悪感がきわだって、憎まれてしまう。まるで合言葉を思い出せないくだりが何度も何度もつづくの、最高でした。もうこの場面だけで見てよかった。革命を起こす理想主義の人たちの不完全さは、怖い革命映画じゃなくて、ドキュメンタリーを見ても切々と感じていたから。

ベニチオ・デル・トロの謎の貫禄、いい人なだけじゃない、妙に戦闘に強い、過去をにおわせるこの感じもいいです。

そしてショーン・ペン。最初、誰だろうこのおじいさんは、見たことあるけど…と思ってたら、あっ、ショーン・ペンだ。すごくいい俳優さんだと思ってたけど、この役も最高ですね。本心は自信のない威張りやの白人男性。彼の部屋が爆破される、みたいなエンディングでもよかった気がします(※注:マリア・ブラウン)。

タイトルが「戦闘に次ぐ戦闘」なので、爆弾が次々に爆発するとか、大きな戦闘が連鎖するとか、もっと大きなものを予想したけど、映画の中ではデカプリオがつぶやくくらいで、実際のところ「もめごとに次ぐもめごと」とか「こぜりあいが連続する」くらいの規模間のものもありました。でもむしろ、画面の迫力とかエフェクトの大きさとかに頼らないところがよかったです。

デカプリオの妻はテヤナ・テイラー、強そう!激しくて、かつ魅力的な革命家にぴったりです。彼らの娘を演じたチェイス・インフィニティ(名前が最高ですね)も、強いけど繊細で折れそうな年頃の女の子として、とてもよかった。

リコリス・ピザの、モディリアーニ(の絵)みたいな風貌のアラナ・ヘイムも出てましたね。真面目そうに見えるけど革命家。

これだけ映画を見てきて、テーマだけ見ても新規性を感じなかったのに、こんなに面白い映画がまだまだ作れると思えるのは、ほんとに幸せなことだなーと思います。

さ、もう一度見よう。(ありがとうVOD)