映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ソイ・チェン 監督「トワイライト・ウォリアーズ」4049本目

うわ~、なんてイメージ通りの、昭和のTVゲームみたいな九龍城。しびれます。

タイトルの意味は、”たそがれ戦士”かしら。たそがれなのは香港か、かつてのアクションスターか。ハイウッドでも、かつてブイブイいわせてたじいちゃんたちがほのぼのと、あるいはキレッキレに活躍する映画がいくつも作られてますが、そういうのを踏まえても、スカッとする快作となりました。

九龍城…いにしえのゲーム「クーロンズ・ゲート」…(シェンムーなんてのもあったな)私は返還少し前の香港に仕事がらみで数回行っただけだけど(九龍城はもう入れなかったけど重慶大厦にはドキドキしながら行ったら、新宿の小滝橋通りのブートレグ屋や中野ブロードウェイみたいだった)、この作品中の香港はそれよりだいぶ”昭和”な感じで、バブリーダンスで知られる「ダンシング・ヒーロー」の中国語版が流れたり、VHSの日本製エロビデオが大量に並んでいたり、私の見たことのないディープな20世紀の香港へのノスタルジーが満ち満ちています。

ノスタルジー?それとも憧れ?

こういう作品を評価する際には、「懐かしむ世代」と「憧れる世代」の両方からバランスよく評者を選んだ方がよさそう。たとえば禁酒法時代のアメリカを描くなら、もはや視聴者にリアルタイムに歴史を知る人はわずかなので”憧れ度”で評価することになるだろうけど、九龍城はシニアにはノスタルジアでも、若い人にもできれば楽しんで見てほしいので。実際、どうなのかな。「バブリーダンス」みたいに濃いギャグとして楽しむのかな。(この振り切った演出をシリアスに見る人はいないと思うけど)

全体のトーンは期待通り、大げさで大がかりな演出、アクション、ギャグのセンス、とことん楽しませてやろうという作り手の執念がたっぷり。香港が今もこんな映画が作れる国(地域)でほっとした、という気持ちです。中国はアジアのハリウッドとしての香港の巻き返しを狙ってたりするのかな。

当然のように字幕で見始めたけど、なにか違和感がある。そうだこういう映画は吹替で見なければ!途端に楽しさ100倍。さっぱりわからない中国語で見るんじゃなくて、吹替え版をテレビで見ていた、子どものころの気持ちで見るのがいいんです。

出演者は、サモ・ハン・キンポー(デブゴン)年取ったけど今も精悍です。若手の主役はレイモンド・ラムっていうのね。(坊主だとちょっと山根和馬に似てる)若手といってももう46歳なのか!香港俳優の年齢にそぐわない若さは驚異。その親くらいの年齢という設定のルイス・クーは55歳。レイモンド・ラム演じる陳洛軍の仲間となる若手たちは、みんなカッコいいですね。このあたりが若いオーディエンスにも魅力に映るかな。

ノスタルジアと激しく作りこまれたアクションと、イケメンと世代交代と、いろいろな要素を大きく盛り盛りにした、サービス精神のかたまりみたいな映画でした。後世に残る名作を作ろうとかより、今作れる最高のエンタメを作ろう、という情熱が伝わってきた気がします。