映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ペトラ・フォルペ 監督「ナースコール」4068本目

とても評判がいいので見てきました。スイス映画で言語はおおかたドイツ語ですが、フランス語も混じってます。スイスでは両方の言語が使われているので、ナースは2言語できる必要があるのかもしれません。(移民の話すトルコ語は、わかる人を待たなければならなかったけど)

主役のフロリア・リンド看護師を演じたレオニー・ペオシュは、ミヒャエル・ハネケ「白いリボン」で若い教師が好意を持つベビーシッター、「セプテンバー5」ではテレビクルーを演じていました。大きな黒目がちの目が印象的で、だいたいどの役でも窮地にいるんだけど、場を暗くしない女優さんです。

それも関係してると思うんだけど、彼女は窮地でもおおむね冷静で、ミスをしても暴発しても、そんな自分を把握しています。自分を少し高いところから見ている自分がいる、という感じ。すごく緊張感の強い映画なんだけど、彼女のこのキャラクターに救われて最後まで見ていられます。

医師や看護師って本当に大変なんだよ!という映画やドラマって世界中にたくさんあるけど、ドラマチックな急病人とか大事故とかが起こりがち。この作品みたいに、比較的おとなしい患者や、急を争わない患者がほとんどの病院の平日でも、これほどの緊張と負担が日常的にあるんだよ、という静かな主張がじんわりと伝わってきます。

まったく同じ処置を同じ数、同じ重篤度の患者たちに行っていても、日本ではもっと笑顔ややさしさが求められるかも。休み時間に外でタバコとか吸ってたら(※何の問題もない)SNSに悪口を書かれたりしそうだし、人材不足はもっと深刻なのかもしれません。自分に多少でも余裕があるときは、できるだけ寛容でいたいものです。(そして、切れそうな自分を自分でゆるせる余裕も必要)

ラストはちょっと切ないような、やさしいような気持ちになりますね。言葉が通じなくても、なにか共有できるものがあるんだろうな。疲れている今だけ、見えるのかもしれません。この終わり方、女性監督だなぁと感じました。(男女の区別をするつもりもないけど、ゆるやかな傾向くらいはあるかもと思っています)