「ナースコール」がよかったので、こちらも見てみました。レオニー・ベネシュはここでも逆境のど真ん中ですが、黒目がちの大きな瞳とまっすぐな性格で、画面を暗くしない女優さんです。
「ナースコール」も胃が痛い作品だけど、これも途中で止めて逃げ出したくなるような場面がたくさんあります。でもカーラ先生は逃げません。決してものごとを途中で投げ出さないのがレオニー・ベネシュです!彼女のことを”さいなまれるドイツ(語圏)の良心”と呼びたい。
この映画に出てくる先生たち、子どもたち、親たちの”悪さ”って、凶悪に感じられることもあるけど、人間なら誰でももっている不安や疑いが悪い形で刺激されて集団増幅されてこうなったと思えて、他人事じゃありません。極端な外国人忌避や災害時のパニック、私たちの身近なところでいつ起こってもおかしくありません。この映画を見て驚いてる場合じゃないのです。そんなトラブルを、過呼吸に一人で耐えながら、まるで想定内みたいな顔をして対応を続けるカーラ先生を尊敬します。(フロリア看護師も)
この学校は「不寛容主義」だと校長が言う場面が何度かあります。正義に反する言動を厳しく対処する、と考えると理解できる気もするけど、小学生の子どものルールの逸脱に一切情状酌量の余地を与えないのはちょっとやりすぎ感があるし、第二次大戦であれほど反省を強いられた国にいながら寛容さを重視しないのは危ない気もしてきます。ちょいちょい子どものやらかしを報告しないカーラ先生は、そもそもこの学校の方針には合わなかったんではないんだろうか。
誰が悪いとか、誰が犯人だとか、どのように裁かれて、どうやってその後平和を目指したか、ということは何も語られません。でも、オスカー少年が学校に居残って、梃子でも動こうとしなかったのは、家に帰りたくなかったんだと思うよ。自分の母の性格や欠点は、彼が誰よりよく知ってるはず。愛情は強いのかもしれないけど、人の話を聞かず常に独善的。子どもの権利や将来を守り、できる限りフェアでいようとするカーラ先生のほうが確かだという感覚が、どこかにあったんじゃないかな。
彼が死んだ魚のような眼をして運ばれていった先で、家には帰りたくないと主張し、ひと悶着起こるというその先のストーリーを想像してしまいました。
