映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

エドワード・ヤン 監督「クー嶺街少年殺人事件」1642本目

1991年の作品なんだけど、レンタルはなんとVHSしか出ていません。
昨今のレンタルVHSの中で特に見づらいな・・・。字幕フォントの輪郭がぼやけてて、耳だけでは北京語はちっともわからないし、240分もあるし・・・。なかなか苦難の道のりです。

まあまあちゃんと見てたはずなのに、ネタバレサイトを探して見てたら、かなり重要な人物が死亡する場面を見逃してたり・・・。今年になってリストア版が劇場公開されてたようなので、それがBlu-rayとかVODで出たら見直そう。

さて。内容は、やんちゃな坊やたちにしか見えない不良少年たちが思いのほかワルで、少女を取り合って殺しあったり、なかなか壮絶なのですが、それを見ても少年少女たちがあどけなくて、日本の任侠映画とかとは全然おもむきが違うのです。そういえば「カップルズ」も、ロマンチックコメディのようなタイトルにかかわらず結構ワルい男の子たちのお話でした。この描き方の違いも興味深い。「悪童日記」とかもそうだけど、日本人である限り避けられない”幼き者は純粋無垢で愛らしい”という感覚を捨てれば、こういうあからさまな実態が初めて直視できるのでしょうか。

新藤兼人 監督「ブラックボード」1643本目

1986年の作品。
たまたまだけど、「クーリンチェ少年殺人事件」を見たばかりなので興味深いです。
どちらも、大人の知り得ない少年少女たちの狭くてドロドロした世界の中で起こった出来事で、「ハニー」と「猛」が重なって見えます。

演技経験がすくない少年少女ばかり出演してるので、なんかみんな棒読みなんだけど、このくらいの年の子達って内向的で抑揚のない喋り方をする子が実際多い気がする(私もだったな)ので、いいのかな。特にこの、佐野量子演じる矢澤智子の不思議な、誰ともフィットしない間合い・・・。
この映画では、いじめっ子の猛の手下のうち、男の子2人が造反して猛はやられてしまったけど、智子は彼を信じて、従い続けた。

誰が不幸だとか誰が傷ついてるとかは一切言わない映画。
「いじめって何なんだろう?」と新藤監督は問いかけたかったのかな。

サザンオールスターズの、この頃のヒット曲が、当時の少年少女の心象風景を表してるようでした。

ブラックボード [DVD]

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