映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

その他の国の映画(90年代以降)

リーアム・ファーメイジャー 監督「スージーQ」3587本目

(「ワイルド・ワン」を頭の中で思い出してると、途中から榊原郁恵の「夏のお嬢さん」になってしまう人、私以外にもいませんか?) ランナウェイズより前にヘビーな女性ロッカーといえばスージー・クアトロしかいませんでした。なんてカッコいいんだろう、し…

アンヌ・フォンティーヌ 監督「美しい絵の崩壊」3515本目

<結末にふれています> 私の大好きなナオミ・ワッツと「コングレス未来学会議」のロビン・ライトか。監督は女性。彼女がオドレィ・トトゥで撮ったココ・シャネルの映画はピンとこなかったけど、この作品はどうだろう。 ナオミ・ワッツ演じるリルとロビン・…

ポール・サルツマン 監督「ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド」3509本目

邦題のうち「インド」だけ日本語。デヴィッド・リンチが製作総指揮なので超越瞑想のPRっぽいのかなと思ったら、その色は弱めな印象でした。 これより後に作られた「ビートルズとインド」というよく似たタイトルのドキュメンタリーがU-NEXTで配信中で、そっち…

テッド・コッチェフ 監督「荒野の千鳥足」3498本目

もう、日本の配給会社がマジメに宣伝する気がないのが明らかなこの邦題(笑)。「死霊の盆踊り」と双璧を成すといっても過言ではないな。 オーストラリア映画か・・・。「マッドマックス」だの「クロコダイル・ダンディ」だの、思い切るとドッカーン!とやら…

ピーター・メダック 監督「チェンジリング」3492本目

<結末にふれています> カナダ映画だし、アンジーが出てるほうの「チェンジリング」がなかなかの秀作だったので、この作品はどうも、マイナー感があります。 1980年作品にしては、あの頃のアメリカ映画のどこか賑やかな風合いがなくて、同じ頃のドイツ映画…

ジャスティン・カーゼル 監督「ニトラム」3455本目

オーストラリアのタスマニア島は、私が老後を過ごしたい場所No.1。(というか叶わない夢)英国の流刑地だった歴史を持つオーストラリアの中でも、特別過酷な刑務所があったのがタスマニア島の端っこの半島にあるこのポート・アーサー。今は穏やかで優しい丘…

フェルナンド・メイレレス 監督「ブラインドネス」3320本目

原作のジョゼ・サラマーゴ「白の闇」を読み終わったところ。パンデミック物ってことで読んだんだけど、強烈な作品でした。「複製された男」も彼が原作なんだけど、さすがの面白さ。面白いけど胸が悪くなるような世界。で、映画があとになりましたが、伊勢谷…

アッバス・キアロスタミ監督「風の吹くまま」3290本目

「桜桃の味」の2年後に作られた作品。 つづら折りの道をたどって登っていく車…墓穴を掘る人…といった既視感。でもこの作品は主役の監督が役者っぽいのと、砂の風景だけでなく青いベランダ、白い壁といったギリシャ?トルコ?にも似たカラフルさが印象に残る…

パブロ・フェンドリック 監督「ザ・タイガー」3252本目

評点も悪いし見どころが想像できなかったけど、ガエル君の映画なので見てみた。 タイトルは虎だけど登場するのは豹。確かに。私はジャングルの獣たちのように戦い、殺すガエル君が虎のような者だという意味かと思ってたけど、特にそういう言及はなかったかも…

パウロ・モレッリ 監督「シティ・オブ・メン」3226本目

すごくよく出来てた「シティ・オブ・ゴッド」の続編ということで見てみた。 全然感触が違う。こっちの画面のほうが慣れてる…日常を撮った感じがする。「ゴッド」はおもちゃみたいな公営住宅が舞台だったけど、今度は山腹に沿って建つ違法建築のスラムが舞台…

フェルナンド・メイレレス 監督「シティ・オブ・ゴッド」3225本目

すごく面白かった。悲惨な恵まれない子どもたちの映画…とは描かれてない。スラムの子どもギャングたちがどんな風に世代交代して、どんな風に凶悪化していったかを語るのは、カメラの後ろという傍観者の地位を手に入れたことで生き延びて、抜け出すことができ…

フランシス・リー監督「アンモナイトの目覚め」3220本目

<後半のストーリーに触れています> U-NEXTの”見どころ”に書かれている「ウィンスレットとローナンの体当たりの演技合戦」がセンス悪いなぁ。濡れ場のことを”体当たりの演技”っていう、使い古された常套句。映画を見るのは女優のヌード目当ての男ばかりだと…

デイモン・ガモー 監督「あまくない砂糖の話」3182本目

とうとう初めて、健診の結果コレステロール(LDL)が”要治療”の域に達してしまった。今までは、健診の前にしばらくイカとかステーキとか揚げ物とか食べなければいいんでしょ?くらいしか考えてなかったけど、これはちょっと本気出すしかない…。 私は最近、揚…

ラーフル・ジャイン 監督「人間機械」3174本目

インドの工場労働の実態を撮ったドキュメンタリー。タイトルが気になって見てみました。原題「Machines」には、働いている人間も機械みたいだ、という意図が込められていると思うので、ドキッとするような邦題は実はほぼ直訳かも。 染色工場で働いている人た…

リチャード・スタンリー監督「カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇」3150本目

ちょっと昔の作品かと思ってたけど、まさかの2019年製作。CGバリバリではあるけど、1995年くらいにはもう実現してた感じのエフェクトだしなぁ。(だいいち、ニコラス・ケイジってところが1990年代っぽいし、なぜか全然老けてない) その妻を演じるジョエリー…

ジャファル・パナヒ 監督「人生タクシー」3096本目

映画監督がドキュメンタリーを撮るためにタクシー運転手に扮して町を流す。違法だよな~、けが人が乗ってきたりするしな~、でも、そもそもこの監督は映画製作も出国も禁じられてるというので、もういいやって感じなのかな。 と思ってたけど、これはモキュメ…

マシュー・ハイネマン 監督「ラッカは静かに虐殺されている」3027本目

重たそうなやつも見てみる。U-NEXTに入っているということは、家にTSUTAYAがあるようなものだ。そういえばTSUTAYAから太っ腹な「新作も旧作も5本無料!」っていうハガキが来てた。もう長いことTSUTAYAでレンタルしてないからな…。 「娘は戦場で生まれた」は…

ハニ・アブ・アサド 監督「オマールの壁」3019本目

「パラダイス・ナウ」の監督の作品。あの作品は見る前かなりビクビクしてたけど、恐ろしすぎない演出でした。これもそうだな。ただ、恐怖をあおる演出じゃないとはいえ、若いオマールの巻き込まれ度は「パラダイス・ナウ」にも匹敵します。彼、なんも悪くな…

ハニ・アブ・アサド 監督「パラダイス・ナウ」2979本目

<ネタバレあり> ザイードとハーレドはふつーの、別段志が高いわけでもない若者。彼らはある日「選ばれて」、ジハードという名の特攻へ行かされる。髭を剃られて一張羅みたいなのを着せられて、ちょっとばかりいいご飯を食べさせられて、考えるひまもなく。…

リー・ワネル監督「透明人間」2953本目

「透明人間」と「見えない人間」はちょっと違う。原題のほうが合ってる。だってクラゲは透明だけど見えるでしょ(←ヘリクツはいいから) しかしこの映画、あまり怖くなかった。というか全然怖くなかった。ずっと前から「今度は光学迷彩の透明人間の映画が出…

ステファン・エリオット 監督「プリシラ」2925本目

この作品は、90年代に働いてた会社のゲイの同僚の話に出てきた記憶があります。ドラアグ・クイーンが出てくる映画って意外と何本も見てるけど、この映画はどういうアプローチなんだろう。 ていうかクイーンたち、テレンス・スタンプとヒューゴ・ウィーヴィン…

エチエンヌ・デロジェ監督「鏡」2917本目(KINENOTE未掲載)

タルコフスキーじゃないよ、グザヴィエ・ドランが13歳のときに出演した短編映画。お試し中のU-Nextで見ました。 「マイ・マザー」の頃の彼と比べて明らかに身体が小さいんだけど、表情とか雰囲気は意外と変わらない。もっと中性的かと思ったらすでに男の子だ…

ピレ・アウグスト監督「マンデラの名もなき看守」2913本目

ビレ・アウグストがこういう映画(社会派、っていうの?)も作ってたんだ。 ネルソン・マンデラがらみの映画はいくつか見たけど、管理者側の作品は初めて。もう、人間はいい人と悪い人に分かれるっていう考えは止めるしかないのだ。上に立つ人がいると、恨み…

マウロ・リマ監督「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」2892本目

ブラジル映画ってあまり見たことないな、テーマがサッカーなら「なるほど」だけど天才ピアニストが題材だし。ポルトガル語って不思議、スペイン語というより最初なぜかドイツ語かと思った。タイトルのバッハはドイツ人だし。 若い天才が大きな挫折をする映画…

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督「渦 官能の悪夢」2866本目

<ネタバレ?あります> すごく変わった映画だ。もしこれが初めて見るヴィルヌーヴ監督作品だったら、「私はこの監督の今後に期待する」とか感想を書いたんじゃないかな。 デヴィッド・クローネンバーグの映画に出てきそうな、”汚い”しゃべる魚は、何度も、何…

ドゥニ・ヴィルヌーヴ 監督「静かなる叫び」2847本目

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品。私にとっては「メッセージ」の監督、だな。「複製された男」も変で面白かった。この映画はカナダで作られたフランス語作品。名前から見ても、フランス語圏の人なんだな。この監督の作品はどれも好き。 この作品は、「始まっ…

アルフォンソ・キュアロン監督「ROMA/ローマ」2705本目

いつまで待ってもレンタルされないし、名画座にも降りてこないので、とうとうNetflixに加入しました。キュアロン監督作品、久しぶり。 このローマはメキシコにあるローマという地名なのね。「パリ、テキサス」みたいな。白黒のメキシコ映画というとルイス・…

ブノワ・プショー 監督「グザヴィエ・ドラ バウンド・トゥ・インポッシブル」2685本目

グザヴィエ・ドランは美しくてなんだか特別な子供みたいな不思議な監督であり俳優なのですが、このドキュメンタリーでは彼の現場での様子や、突然脚光を浴びるまでのことが俳優やプロデューサーによって語られます。つかみどころのない人だけど、誰から見て…

セバスティアン・レリオ 監督「グロリアの青春」2681本目

グロリアが通うダンスクラブは、中高年の出会いの場なんだろうか。毎回わりと積極的に男性に声をかけるグロリア。笑顔がチャーミングな初老の女性です。夫や妻と別れたり先立たれたりして独身の人たちって、この年代だとどれくらいいるんだろう。素敵だけど…

グザヴィエ・ドラン監督「マティアス&マキシム」2678本目

この監督の作品はずっと公開すぐに劇場に見に来てるな。 前作の「ジョン・F・ドノヴァン」がなんとなく監督の初期の集大成というか一区切りのように思えていたので、今回は次の時代の始まりのつもりで気楽に見ることができました。 主人公たちは30歳。女は…