映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ヨーロッパ映画(90年代以降)

グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン監督「ハートストーン」3508本目

先日見た「ニトラム」を思い出しながら見ます。アイスランドもタスマニア島も、欧米社会のなかでは辺境中の辺境。人種差別や女性差別といった、世界の他の地域でテーマになりがちなものではなく、ムラ社会のなかで孤立していく同じ属性の人々の中の「違い」…

エドガー・ライト監督「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」3506本目

面白かった! おバカコメディなんだけど、大変テンポが良くて、笑える以上の充実感があります。さすがのエドガー・ライトなんだけど、なによりサイモン・ペッグがいるだけで可笑しい。それに、名前を知らないイギリスのおじさんおばさん俳優たちの演技のうま…

フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 監督「ある画家の数奇な運命」3501本目

ゲルハルト・リヒターのことは全然知らないんだけど、今初の日本での展覧会が行われていて、明日にでも行ってみようと思ってるというので予習のために見てみます。 感想。映画としてすごく面白い良作でした。主役のトム・シリング、ティモシー・シャラメのよ…

ダニー・ガルシア 監督「SAD VACATION ラストデイズ・オブ・シド&ナンシー」3480本目

このテーマの作品、けっこう見てるな。アレックス・コックスの「シド・アンド・ナンシー」、レック・コワルスキーの「D.O.A.」。 ナンシーが20歳で亡くなったのは1978年、シドは21歳で翌年亡くなった。安全ピンや破れたTシャツの”ロンドン・パンク”が終わっ…

ケネス・ブラナー監督「ベルファスト」3478本目

冒頭に流れる歌がパワフルで、ヴァン・モリソンみたい、と思ったら当人だった。ちょっと声が細くなったな。頑固で純粋な彼のキャラクターが北アイルランドらしさなのかな。 広がるヨーロッパらしい風景、まだ見ぬベルファスト。言葉はアイルランドなまりで、…

エドガー・ライト監督「スパークス・ブラザーズ」3475本目

今夜ひさびさに、華々しくも、にぎにぎしくも、スパークスのライブを見に行くという折に、U-NEXTで見られるようになったので、再見します。 兄弟の両親のことや、小さいころの写真、バンドを始めた初期のこととか、衝撃だったなぁ・・・。インタビューを受け…

エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ監督「スペシャルズ!政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話」3445本目

サブタイトル長いよ~ それに、映画で描かれてる現実はとても複雑なのに「悪い政府vs民間のいいやつら」という二元対決に持ち込んで単純化しようとしている。こういうのは好きじゃないなぁ。 この「正義の声」という施設は、他のどの施設からも断られた重…

パブロ・ベルヘル 監督「ブランカニエベス」3444本目

<ネタバレあります> ブランカニエベスはスペイン語の「Snow White」=白雪姫か。スペイン語の響きは魅力的だけど、どういう映画かわからずうっかり見逃してしまいそうだったので、邦題は「白雪姫とこびと闘牛士団」とかのほうがいいような気もします。 ス…

アイラ・サックス 監督「ポルトガル、夏の終わり」3442本目

<ネタバレあります> 日本では、人の名前の映画タイトルが、風景とか状況を表現したタイトルになることがちょくちょくある。もともと邦画は「丹下左膳」みたいな既知の英雄や「横道世之介」みたいに特異な名前でもなければ、タイトルに人名が使われることが…

ジェラール・クラウジック 監督「WASABI」3432本目

たまたまテレビで見た。そういえばこんな映画あった。 全体的に、おもしろくも新しくもないのが残念。ちっともリュック・ベッソンっぽくない。彼が自分で「レオン」の焼き直し版を作りたいと思うわけがない。日本の誰かが「お金を出すからこの女の子で『レオ…

アニエス・ヴァルダ監督「アニエスの浜辺」3422本目

監督がやっと自分のことを語り始めた。完結編「アニエスによるヴァルダ」に至る前の、自分の生い立ちを振り返る作品だ。これもまた彼女の愛するものたちを散りばめた、宝物のアルバムみたいな、優しくてかわいくて美しい作品。 いつものように、映画のあちこ…

ロマン・ポランスキー監督「オフィサー・アンド・スパイ」3416本目

ポランスキー監督の作品も、新作はだいたい映画館で見てる。園子温やウディ・アレンの作品も、反感持ちつつよく見てる。人格と作品は別と割り切ってるというより、いろいろな観点で語弊があると思うけど、アール・ブリュットの作品に惹かれるように、彼らだ…

クリスティーナ・リンドストロム、 クリスティアン・ペトリ監督「世界で一番美しい少年」3414本目

「ベニスに死す」を見直したとき、「自分の中の美醜の価値観が試される映画」って感想を書いた。今まで美しいと思っていた人たちより美しい人がいるんだ、という感覚。 「ミッドサマー」は強烈な映画だったけど、見た後で彼が出てたと聞いて、すぐ、あの老人…

ジャッキー・モリス/デヴィッド・モリス監督「ヌレエフ-世界を変えたバレエ界の異端児-」3405本目(KINENOTE未掲載)

エンディングが感動的だ。ヌレエフがおそらく最盛期の頃に公開インタビュー番組に出演したときの、彼の登場で、鳴りやまない拍手に彼が陶然とした表情を浮かべる。その後はエンドロールとともに、この映画で取り上げたバレエ公演の映像ダイジェストを、出典…

ヤン・シュヴァンクマイエル監督「オテサーネク 妄想の子供」3404本目

すごいなと思うけど「いいな」と思ったことのないシュヴァンクマイエル作品をまた見てしまうのは、”怖いもの見たさ”以外の何物でもない。木でできた赤ん坊って…「アネット」かよ!(ちょっと違う) チェコスロバキアのスロバキアのほうは絵本の国、ファンタ…

フランク・リビエラ 監督「ステーキ・レボリューション」3402本目

昨日も病院で悪玉コレステロールをなんとかしろと言われたばかり・・・。衝動的にステーキをUBERしたりしないよう、食後に見ました。 まあまあ長く生きてきたので、神戸のとろける霜降りステーキも食べたし、フィレンツェで柔らかくて味のいい赤身のTボーン…

ダンカン・ジョーンズ監督「月に囚われた男」3401本目

<ネタバレあります> この監督の「ミッション8ミニッツ」は見てたけど、デヴィッド・ボウイの息子の、あのゾーイだとは知らなかった。「8ミニッツ」も良くできた面白い作品だと思ったけど、これもまた引き込まれました。 サム・ロックウェルの、普通にや…

フロリアン・ゼレール 監督「ファーザー」3378本目

アンソニー・ホプキンスとオリヴィア・コールマン。 私の父も認知症になってしばらく病院や施設にいたので、もうしょっぱなから「ああ~~、そうそう」。記憶と想像と思考の区別がゆるやかになっていくので、世話をしてくれている人が自分のものを盗んだとか…

ティエリー・フレモー 監督「リュミエール!」3376本目

先日ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリンのリュミエール(原題は「スクラダノフスキー兄弟」)」というミスリーディングなタイトルの映画を見て、本物のリュミエールのことも知りたくなって見てみました。 1860年代生まれの「映画の父」(父と伯父、か?)…

ベルナルド・ベルトリッチ監督「魅せられて」3368本目

これも淀川長治氏ご推薦。ベルトリッチ作品も見てないのがたくさんある。解説を見てこれは「ドリーマーズ」みたいな作品かと思ったら、舞台となっているトスカーナの風景がゆったりとして素敵な雰囲気の中で、マリファナなど回しながら、親世代の人たちと主…

エドガー・ライト監督「スパークス・ブラザーズ」3364本目

「アネット」に続いてこれも初日に見てきました。でも劇場の観客はパラパラ。あっちはアダム・ドライバーやマリオン・コティヤールが出てるし、カンヌで受賞してるし、上映館が少ないのでけっこう埋まってたけど、こっちは人気のあるバンドでも難しい音楽ド…

ヴィム・ヴェンダース監督「誰のせいでもない」3360本目

ヴェンダース監督の作品、意外と見てないのが多い。 主役のジェームズ・フランコは「トゥルー・ストーリー」の悪いやつか。ダニー・ボイルの「127時間」で耐え抜いた彼でもある。恋人はレイチェル・マクアダムス、事故の被害者の母はシャーロット・ゲンズブ…

レオス・カラックス監督「アネット」3356本目

「クラスに一人はいる変わり者のみなさーん」と、スパークス初来日公演(確か)で岸野雄一は観客に話しかけた。…確かにスパークス好きは変な人が多い。「ハーフネルソン」時代からアルバムは全部持ってるし来日公演はフェス以外全部行ってる(※FFSまで見た)…

川和田恵真 監督「マイスモールランド」3352本目

劇場公開は2022年5月6日だけど、NHKBS1で放送したものを録画して3月27日に見た。(Netflixみたいな感じ)メイキング映像まで見たよ。 クルド人問題だけでなく、近代史や政治には相当うとい私ですが、「風の電話」に出てくるクルド人の町は見たし、クルド料理…

ヌリ・ビルゲ・ジェイラン 監督「読まれなかった小説」3348本目

<ネタバレだらけです> 「雪の轍」の監督か。あの映画も面白かった。この映画の舞台はトロイの木馬で知られるトロイ。トルコ国内にあるとは知らなかった。 主人公の青年はモラトリアム感が漂う、小説家志望の青年。大学卒業後は教師を目指していたが、初め…

アンドレイ・ズビャギンツェフ 監督「裁かれるは善人のみ」3347本目

<結末にふれています> 裁かれたのは父コーリャだけだから、彼を「善人」とする明確な邦題の意図があるわけだな。てことは彼は多分無実という前提…。あるいは、浮気女リリアも、裁かれた善人の一人だろうか。 この監督の「ラブレス」を見たとき、あまりの絶…

リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督「イゴールの約束」3332本目

1996年に作られた、ダルデンヌ兄弟の最初の長編作品。主役の少年がジェレミー・レニエなんだよなぁ。この間見た、ギャスパー・ウリエル主演の「イヴ・サンローラン」で彼を守り続けた中年男ピエールを演じてたのが彼だ。26年前はうら若き少年だったのだ。 そ…

マルク・フィトゥシ 監督「間奏曲はパリで」3331本目

ユペール先生の出演作を見るのは、ライフワークの一つみたいになってる。女性としてあっぱれというか…鼻っ柱強くどんな役でも(というか、あえて常にアクの強い役を)演じ続ける彼女をリスペクトしています。 彼女が演じるブリジットはフランスの郊外で牛を…

ベルトラン・ボネロ 監督「SAINT LAURENT サンローラン」3329本目

イヴ・サンローランを描いた映画はドキュメンタリーを含めて何本か見た気がするけど、これは見てなかった。「たかが世界の終わり」で惚れそうになったギャスパー・ウリエルが亡くなったという話を聞いたので、彼の軌跡として見てみる。 若き日のイヴを演じる…

リサ・バロス・ディーサ監督「グッド・ヴァイブレーションズ」3327本目

タイトルを見るとビーチ・ボーイズの映画かなと思うけど、違うのだ。「マイアミ・ショーバンド」の虐殺事件のあと、どのバンドのツアーも北アイルランドを避けて通るようになってしまい、そこで生まれたアイリッシュ・パンクを盛り立てるレコード・レーベル…