映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ヨーロッパ映画(90年代以降)

ペドロ・アルモドバル監督「ハイヒール」2403本目

やっぱりアルモドバル監督の作品は面白いなぁ。 必ず「えっ」というようなヒネリが入るんですよね。何本見ても予想できず、毎回驚かされる。そして必ず、とても大きな愛に包まれる。ラテン的な愛憎が新鮮。普通の日本人の私は、いつも誰かの愛情をちょっぴり…

マイク・ニューウェル監督「コレラの時代の愛」2402本目

美麗なタイトル。こういうところに凝ってる映画って好きです。イラストはそこだけだけど、力の入った作品だと伝わってきます。 この映画は、一人の無垢な少女に一目ぼれして、その後一生愛しつづけた男の話。原作はガルシア・マルケスで、舞台は彼が若いころ…

ヘニング・カールセン 監督「わが悲しき娼婦たちの思い出」2401本目

ガルシア・マルケス原作ということで探して見つけた作品。KINENOTEで一人も感想を書いていないどころか、見た人もいないなんて!日本未公開作品とはいえ、宣伝とかしなかったんだろうか。 これはノーベル賞作家の遺作だそうで、90歳のコラムニストが誕生日の…

ナディーン・ラバキー 監督「存在のない子供たち」2393本目

辛い映画だったなぁ。かわいそう、かわいそう、と口から出そうになるのを抑えながら見ました。難民の貧困や苦難は日本でも大きな問題だけど、貧富の差の開きが問題になっているレバノンの、これが実態だとしたら本当に切ないです。貧富の「貧」がこの映画の…

フアン・ホセ・カンパネラ監督「瞳の奥の秘密」2392本目

<ネタバレちょっとあるかも> 見終わってから英語のタイトルを見たら、複数形だったのでちょっと驚いた。奥に秘密を秘めた瞳は一人のじゃなくて複数の人たちのだった。25年前に妻を破壊されて失ったモラレスも、25年間の事件を追いつつずっと一人の人を愛し…

クロード・ルルーシュ監督「男と女 人生最良の日々」2389本目

原題は単に「人生最良の日々」なんですね、知らない人はいない「男と女」の第三編。ジャンルイ・トランティニャンを「愛、アムール」で知った私としては、「うっわ老けたな!」ということもなく、美老人のように装ったらどんな感じだろうとずっと思ってまし…

ジェームズ・アイヴォリー 監督「最終目的地」2384本目

シャーロット・ゲンズブールにアンソニー・ホプキンスに真田広之で、舞台はウルグアイとは、あまりにインターナショナル色が強いし個性がばらばらで…、何このキャスティング?作家の妻も主役の伝記作家も、全員集合しても接点がありそうな、カップルになれそ…

ジャン=ピエール・ダルデンヌ 監督「少年と自転車」2376本目

<ネタバレ> 「ある子供」の続編的な位置づけとされてれるんですかね、この映画。 少年が守ってくれる人を得て、はっと目が覚めたように大人びた挨拶ができるようになったり、攻撃されても立ち上がって前へ進めるようになっていくのが、とても救われます。…

アレクサンドル・コット 監督「草原の実験」2371本目

舞台はカザフスタンらしい。主役の女の子の容貌は、北欧とアジアとアラブが長年混血してきたふうの、涼やかな美しさです。この子を見てるだけでもいいな、この映画は。 監督はタルコフスキーとパラジャーノフを敬愛しているのに違いない。静かで美しい風景と…

ロバート・アルトマン監督「ゴスフォード・パーク」2365本目

とっても英国的な洋館が舞台。執事がいてマギー・スミスがいて、おまけに殺人事件まで起こる。人気ドラマの「ダウントン・アビー」とか見てる人にはおなじみの世界かな。アガサ・クリスティ好きな私としても、なんとなく覚えのある世界。 アルトマン監督の映…

アルノー・デプレシャン 監督「キングス&クイーン」2363本目

この監督の作品は初めて。なんで借りようと思ったのか思い出せない。。。 150分もある大作だけど、テレビドラマのように日常的で、テンポよく流れていくのでちっとも長く感じません。要は、ノラ(多情な女性の典型的な名前?)の最初の男、二番目の男、結婚…

ペドロ・アルモドバル監督「KIKA」2361本目

アルモドバル監督の作品は、女性それも母を礼賛するのが多いなぁ。男性は彼女たちを粗末にして殺されるような役どころが多い。女(キカ)はこの映画でもまた()父とも息子とも寝るんだな…。 なぜかファッションデザイナーのベルサーチとコラボしてる。なぜ…

アンドレア・ディ・ステファノ 監督「エスコバル 楽園の掟」2360本目

中南米こわいな。いや、今はどうなんだろう。 「バリー・シール」は同じテーマの作品だけど、アメリカ側の協力者についてアメリカ目線で描かれていたので、中南米の闇については、「あとはムニャムニャ…」という感じでわからないままでした。「麻薬王」なん…

ビガス・ルナ監督「ハモンハモン」2355本目

1992年のスペイン映画。翌年に日本でも公開されてたんですね。 今は、ペネロペ・クルス(またはハビエル・バルデム)の若かりし頃に興味を持って見る人が多いんだろうな。二人とも若い!ペネロペ18歳ハビエル23歳。ペネロペはまだふわっとしたお嬢ちゃんのよ…

グスタフ・モーラー 監督「THE GUILTY(ギルティ)」2354本目

タイトルの「Guilty」に「The」がついてるってことは、名詞なのかな。「犯罪者」?「最も罪深い者は誰か」というニュアンスを感じてしまうと思っていたら、事実とても深いタイトルだったと、見終わってから実感しました。 誰が誰を殺そうとしているのか。誰…

リン・ラムジー 監督「ビューティフル・デイ」2353本目

ホアキン・フェニックスが、認知症の母と同居する、とても怪しい男を演じています。「ジョーカー」の彼の役と重なりますね。トッド・フィリップス監督あるいは別の製作者がこの映画にヒントを得た可能性が高い? とても芸術性の高い美しい映像でした、特に水…

ペドロ・アルモドバル監督「ジュリエッタ」2343本目

「ジュリエッタ」は海外向けのタイトルのようで、原題は「Silencio」。「マルホランド・ドライブ」に出てくるナイトクラブの名前と同じなので、沈黙という意味ですね。この監督の映画はドタバタ喜劇も多いけど、この映画はわりと重い。知的で繊細な主人公ジ…

アリーチェ・ロルヴァケル 監督「幸福なラザロ」2338本目

不思議な映画だったなぁ。 「なんでも屋くん」でしかなかったラザロ少年が、高熱に浮かされて崖から落ちて「たぶん死んだ」感じになり、一方、伯爵夫人に搾取されていた村人たちは警察に導かれて村を後にする。数十年後、彼らは都会で食い詰めて詐欺や盗みで…

アンドレイ・ズビャギンツェフ 監督「父、帰る」2328本目

「ラブレス」も切ない切ない映画だった。日本にも悲しくて美しい映画を撮る監督はいるけど、子どもの切なさといったら…。この映画も、不愛想な兄弟が中心にいて、忘れられかけてた父が帰ってくる。「父帰る」というテーマは古今東西の小説や映画で語られてき…

ダニー・ボイル監督「イエスタディ」2322本目

ふーむ。設定は面白いし、リリー・ジェームズは可愛いし、ヒメーシュ・パテルは可笑しいし、終わってほんわかするけど、ダニー・ボイルってこんなにヒネリを利かせない監督だったっけ?「スコットランドで一番汚いトイレ」みたいなインパクト、あけすけな生…

ペドロ・アルモドバル監督「私が、生きる肌」2309本目

おもしろい映画を撮る監督が、ベテランになって今度は「普通の人々」と違う特別な設定をしたくなってこんな映画作っちゃったのかな?とも思ったけど、この映画は珍しく原作があるから、いつもとちょっと違うテイストというか方向性になったんだろうな。 アン…

ペドロ・アルモドバル監督「私の秘密の花」2308本目

またアルモドバル監督の映画。そのうち全部見てしまうだろう。面白いんだ、この人の映画は。毎回何かびっくりするところがある。この映画もやっぱり面白かった。ちゃんと見てないとなんだかキツネにつままれたような感じになるけど(昏睡状態の息子の話は、…

是枝裕和監督「真実」2304本目

賞をとった監督がすぐに外国の俳優で撮る映画は、ふだんの映画より面白くないというジンクスが私の中にあって(偏見かな)、かなりドキドキしながら見ましたが、是枝監督のドラマチックな作品(「誰も知らない」「万引き家族」とか・・・少なくとも中で誰か…

アニエス・ヴァルダ 監督「顔たち、ところどころ」2283本目

顔がたくさん、場所もたくさん、というのが原題なので、邦題はじつは直訳。顔たちがところどころにあるんじゃなくて、顔も「ところ」もいろいろ、という意味ですね? このおばちゃんとお兄ちゃんがどういう人なのか、全然知らないまま見ました。普通っぽいポ…

アレクセイ・ゲルマン 監督「神々のたそがれ」2271本目

泥まみれの悪いテーマパークみたいだ。ギリギリ、大丈夫なところに線を引いてその中で映像を作っているので、突然の死や残酷な映像をびくびくと恐れながら見る必要はない。柵の中からジャングルを覗いてる観客みたいな気持ちで見ればいい。 こういう映画って…

マイク・リー 監督「家族の庭」2270本目

痛いお話。日本でも40代、50代の女性の数名に一人がメアリーになりうる。 ここまでしぶとく、ひとつの家庭に入り込もうとしないで、途中であきらめる人ならその倍はいる。トム&ジェリーの夫妻は、冷静なように見えても、50の同僚が30の息子に手を出そうとし…

マイク・ニューウェル 監督「ガーンジー島の読書会の秘密 」2269本目

原題の直訳=会の名前は「ガーンジー島 文学と芋皮パイクラブ」か。 面白かったし、いい映画だった。 英国のはしっこの小さな島の「読書会」というだけで、思索深くユニークで地域に根差した、何かすごく珍しくて面白いことが始まる予感がしますよね。 推理…

パトリス・ルコント監督「スーサイド・ショップ」2268本目

えっパトリス・ルコントが監督?「髪結いの亭主」の?ということは安心して見ていいやつだな・・・。 テイストは「アダムス・ファミリー」とか「ナイトメア・ビフォー・クリスマス」と同じで、どうやったらポジティブを避けられるか考えて考えて作ったアニメ…

フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 監督「善き人のためのソナタ」2267本目

感動した・・・。こういうふうに、感情を抑えて抑えて作られた静かな映画ほど、深く刺さる。 東ベルリン出身の知り合いの夫妻は、壁が崩壊する前に教育を受けたので英語がほとんど話せない。仲良くなっても、当時のことは決して話さない。ベルリンで当時の生…

ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン監督「隣の影」 2241本目

アイスランド映画とは珍しい。先週旅行して帰ってきたところなので、延々と広がる溶岩台地、美しい流氷、あるいはやたらと人気のレイキャビクのホットドッグなど、感動を新たにできたりするかしらと期待して見に行ってきました。 アイスランド映画といえば見…