映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ヨーロッパ映画(90年代以降)

アニエス・トゥルブレ監督「わたしの名前は…」2542本目

哀しい、切ない、美しい、映画でした。万人が納得できるような勧善懲悪がもたらされないこの映画で、監督は何を表現、あるいは伝えようとしているんだろう?とても、そこに興味があります。 <ネタバレあります> 父親に罰が下されないこともモヤっとするけ…

マイク・リー監督「秘密と嘘」2530本目

冒頭の出演者名が左から右に流れるのがふしぎ。日本語の縦書きの文庫本みたいで。 最後はふつうに下から上に流れるのにね。 この映画は、主演女優賞をいくつも取ったらしいブレンダ・ブレッシン、お母さんの演技がやっぱり最大のポイントだなぁ。普通ですご…

ジョン・ブルーワー 監督「ビサイド・ボウイ ミック・ロンソンの軌跡」2529本目

ジギー・スターダストの頃までのボウイを「スパイダーズ・フロム・マーズ」として強力にサポートして、1993年に亡くなったミック・ロンソンについてのドキュメンタリー。 デヴィッド・ボウイはすごく素晴らしいアーティストだし長く第一線にいつづけた人だけ…

フレッド・グリヴォワ 監督「15ミニッツ・ウォー」2528本目

フランス語圏がアフリカにある。アフリカのヨーロッパ地勢図って頭に入ってないから難しいけど、ジブチはアラビア半島に一番近いアフリカだ。 この映画を見たあとで「アヴリルと奇妙な世界」を見たら、アヴリルの声はオルガ・キュリレンコがぴったりだと思え…

寺山修司監督「書を捨てよ町へ出よう」2526本目

尖ってるなぁ。純粋だなぁ。このとき寺山修司36歳。父親が戦死するという経験は今の若者にはないけど、青森の田舎で育つことや、個人を無視した社会のシステムに取り込まれることの無情は今とそれほど変わらないんじゃないだろうか。でも、今の36歳もこんな…

ヘルマン・クラル 監督「ミュージック・クバーナ」2519本目

最初の「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」と「アディオス」の間に撮られた映画。この間にコンパイ・セグンドをはじめとするメンバーの数名が亡くなっています。この映画はピオ・レイヴァと彼のThe Sons Of Cubaバンドを中心に、ドラマ仕立てになっていま…

アルベール・デュポンテル 監督「天国でまた会おう」2516本目

フランス的というのか、緊張感のある一挙手一投足や、フィーリング?でどんどん筋が進む感じに最初は完全に置いていかれてしまいましたが、二回見たらほとんど理解できた気がします。戦争の場面から始まるけど、ミシェル・ゴンドレーとか、そういうアート色…

ジャック・タルディ監督「アヴリルと奇妙な世界」2514本目

「タンタン」みたいな、線画に色を乗せたフレンチコミックをアニメ化したような映像。フレンチアニメと言われたら想像するような。すごく単純化された絵なんだけど、大人が見る風刺画みたいにリアリティがあります。そしてストーリーもなかなか緊迫。ルパン…

ファティ・アキン 監督「女は二度決断する」2513本目

見てて辛くなる、自分のことのように迫ってくる映画でした。ダイアン・クルーガー演じる主人公は、家族を愛し、真面目に暮らしている主婦なんだけど、昔はコカインをやったこともあった。夫はトルコからの移民。麻薬の密売で過去に摘発されたこともあるけど…

リー・クローニン 監督「ホール・イン・ザ・グラウンド」2510本目

アイルランド映画だそうです。緯度が高いので冬のアイルランドは多分こんなふうに陰鬱。それが美しくもあるけど、不思議なゴシックホラーのような雰囲気です。 この映画は、大きな穴がメインで穴の周囲や中で物語がどんどん進んでいくのかと思ったら、母と子…

ドーリス・デリエ 「命みじかし、恋せよ乙女」2509本目

すごく、いろんなところが未熟な青臭い感じだなぁ。主役のゴロ・オイラーの演技が硬いし、構成もぶっつなげた感じだし。でもなにか独特の美的感覚があるんだろうな。 入月絢というこの女の子は、ドイツ語がしゃべれるからキャスティングされたのかな。樹木希…

ジャン・リュック・ゴダール「イメージの本」2506本目

巨匠がわかる人だけがわかればいいと思って、自分の大事な映画の断片をたくさん集めて作った宝物。「コヤニスカッツィ」とかテレンス・マリックの映画とか「イントレランス」の仲間。って感じでした。巨匠つっても若いころは自意識過剰の気取り屋だった人が…

デビッド・バッティ 監督「マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!」2505本目

たまらん…この頃のロンドンほど最高に刺激的で美しい場所は、古今東西どこにもないんじゃないだろうか。 ロンドンに仕事で行ったのは1992年だからもうこういうロンドンの香りは何も残ってんかったけど、キンクスのカセットテープをいつも聞きながら、湾岸や…

マイケル・ラドフォード 監督「アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール」2499本目

なんと、英語だ。アンドレア・ボチェッリといえば、私が初めてイタリア旅行に行ったときにちょうど話題になっていた歌手で、私の中ではボチェッリ=イタリアだし、製作国イタリアとなっているけど、監督も俳優もハリウッド的でした。トスカーナ地方の風景が…

ヴィム・ヴェンダース 監督「世界の涯ての鼓動」2497本目

滞在型のこういう素晴らしいホテルに、仕事で泊ったり、ツアーで立ち寄ったりすると、「たまたま泊まってる素敵な独身男性と恋に落ちたりしたら素敵なんだけどな~」と妄想するような、知的で冒険心の強い二人の恋。世界中のさまざまなところへ動線をのばす…

マリア・ペーテレス 監督「レディ・マエストロ」2496本目

どれくらい事実なんだろう。生い立ちや、コンサートホールの仕事を首になったこと、ピアノ教師についたこと、音楽学校に入ったこと、指揮者に師事したこととかは事実だろうけど、御曹司フランクの存在がどうもフィクションっぽい感じがする。ロビンって存在…

サミュエル・コラルデ 監督「北の果ての小さな村で」2491本目

アイスランドより北のグリーンランドの話だ!アイスランドは一つの国だけど、グリーンランドはデンマークの一部です。グリーンランドに比べれば、北海道は南の島。かなりの地表が氷で覆われてます。去年アイスランドで初めて氷山や流氷を見て大興奮してしま…

ダニエル・ギル監督「モダンライフ・イズ・ラビッシュ ロンドンの泣き虫ギタリスト」2487本目

iPhoneで音楽を聴きながら、スタバのラテを持ってオフィスに通う、そういうモダン・ライフがラビッシュ(くだらない)ってことね。それに対する言葉は「オールドファッション」。音楽はLPで聴く、コーヒーは喫茶店のカップで飲む。そういうこだわり青年が、同…

マーク・ギル監督「イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語」2486本目

劇場で見逃した後、いつソフト化されるのかと思っていたら、とっくになっていました。KINENOTEのアラートって一度も上がったことないな。 モリッシーとジョニー・マーのスミスは、大学生の頃の私たちの憧れで、バンド仲間とよくテープを貸し借りしたもんでし…

デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン 監督「裸足の季節」2456本目

裸足の季節といえば松田聖子1980年のデビュー曲なのであって、この映画は2015年制作のトルコが舞台の映画だけど原題は「Mustang」。野生の馬という意味…なるほど、無邪気な少女たちを野生の馬にたとえた。だから裸足をイメージしたんですね。少女時代の終わ…

パヴェウ・パヴリコフスキ 監督「COLD WAR(コールドウォー) あの歌、2つの心」2451本目

「イーダ」という映画を見たことがあります。あれも白黒で、静かな映画だったなぁ。ここで初めてちゃんとポーランドの歴史をひもといてみる。第二次大戦後、ソ連に属してはいなかったけど「従属する衛星国」だったと。この映画のなかでは、まるで東ベルリン…

ルイ・ガレル監督「パリの恋人たち」2449本目

「グッバイゴダール」でめんどくさいゴダールを自分で演じたガレル監督が、また自分を主役として撮った映画。ゴダールの流れをくむ、女性礼賛にともなう男の卑下をこの映画でも描いています。だって原題は「L'HOMME FIDÈLEA (FAITHFUL MAN)」、従順な男って…

グザヴィエ・ドラン監督「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」2440本目 

ふつうLife and deathでしょう。最初からDeathとくるところが不穏です。 そもそもドラン監督の作品は、生霊みたいに死にとりつかれていると感じることがよくあります。死の中でも、老母が老衰で死ぬとかじゃなくてpremature death。若くて美しい人がむざむざ…

ペドロ・アルモドバル監督「抱擁のかけら」2433本目

2009年の作品。年代がわかりづらいけど、比較的新しいほうか。 「謎のカバンと女たち」が見たいけど、作り置きのガスパチョを勝手に客が飲もうとすると、薬が入っているので飲むな…見覚えがあるなぁ。「神経衰弱ぎりぎりの女たち」だな。タイトル違うけどこ…

ペドロ・アルモドバル監督「ハイヒール」2403本目

やっぱりアルモドバル監督の作品は面白いなぁ。 必ず「えっ」というようなヒネリが入るんですよね。何本見ても予想できず、毎回驚かされる。そして必ず、とても大きな愛に包まれる。ラテン的な愛憎が新鮮。普通の日本人の私は、いつも誰かの愛情をちょっぴり…

マイク・ニューウェル監督「コレラの時代の愛」2402本目

美麗なタイトル。こういうところに凝ってる映画って好きです。イラストはそこだけだけど、力の入った作品だと伝わってきます。 この映画は、一人の無垢な少女に一目ぼれして、その後一生愛しつづけた男の話。原作はガルシア・マルケスで、舞台は彼が若いころ…

ヘニング・カールセン 監督「わが悲しき娼婦たちの思い出」2401本目

ガルシア・マルケス原作ということで探して見つけた作品。KINENOTEで一人も感想を書いていないどころか、見た人もいないなんて!日本未公開作品とはいえ、宣伝とかしなかったんだろうか。 これはノーベル賞作家の遺作だそうで、90歳のコラムニストが誕生日の…

ナディーン・ラバキー 監督「存在のない子供たち」2393本目

辛い映画だったなぁ。かわいそう、かわいそう、と口から出そうになるのを抑えながら見ました。難民の貧困や苦難は日本でも大きな問題だけど、貧富の差の開きが問題になっているレバノンの、これが実態だとしたら本当に切ないです。貧富の「貧」がこの映画の…

フアン・ホセ・カンパネラ監督「瞳の奥の秘密」2392本目

<ネタバレちょっとあるかも> 見終わってから英語のタイトルを見たら、複数形だったのでちょっと驚いた。奥に秘密を秘めた瞳は一人のじゃなくて複数の人たちのだった。25年前に妻を破壊されて失ったモラレスも、25年間の事件を追いつつずっと一人の人を愛し…

クロード・ルルーシュ監督「男と女 人生最良の日々」2389本目

原題は単に「人生最良の日々」なんですね、知らない人はいない「男と女」の第三編。ジャンルイ・トランティニャンを「愛、アムール」で知った私としては、「うっわ老けたな!」ということもなく、美老人のように装ったらどんな感じだろうとずっと思ってまし…