映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ヨーロッパ映画(90年代以降)

サム・メンデス監督「1917 命をかけた伝令」2704本目

<ネタバレあり> 予告編や前評判や他の方々の感想をたっぷりインプットしてから見ましたが、一言でいうと「すごく面白いエンタメ大作」と感じてしまった。ほぼ実話で、人の命がやすやすと奪われる映画なのに。007シリーズのサム・メンデス監督、大量のエキ…

バルタザール・コルマウクル 監督「湿地」2703本目

<ネタバレというかネタ推測あり> 北欧ホラー、しかもアイスランド。レイキャビクは島の中では南西にあって比較的温暖で明るい街だったけど、この映画を見ると、アキ・カウリスマキの映画の中のル・アーブルみたいに陰鬱だ。しかも悪趣味。遺体から取り出し…

ジョー・ライト監督「プライドと偏見」2699本目

ひとりジェーン・オースティン特集。この映画を見てなかったのは不思議。今から15年も前の作品だ。 キーラ・ナイトレイ、ロザムンド・パイク、その両親はドナルド・サザーランドとブレンダ・ブレッシン(「秘密と嘘」の!)、ジュディ・デンチにキャリー・マ…

ジョン・ジョーンズ 監督「ノーサンガー・アベイ」2698本目

英文学の授業では「ノーザンジャー・アビー」と習った気がする。ノーサンガー・アベイはコックニーっぽくないか?舞台はイングランド南部のバースだということなので、ロンドンとそう遠くないけど。 主役の純朴な女の子を演じるのは、スター・ウォーズ ロー…

ペアニレ・フィシャー・クリステンセン 監督「リンドグレーン」2691本目

「長くつ下のピッピ」「カッレくんのぼうけん」子どもの頃愛読したわ~。めちゃくちゃヤンチャで賢い子どもたちが大活躍する、ワクワクドキドキな物語でした。 その作者、そういえば女性だっけ。日本人の場合、まあまあ読んだ覚えがある私ですらこんな認識な…

ヨールン・ドンネル 監督「ファブリックの女王」2688本目

マーケティング的には、タイトルに「マリメッコ」を入れたほうがいいと思うけど、NG出たのかな?まさかね。 マリメッコって確かに、他のどの生地よりセンスが鋭くて素敵なんだけど、びっくりするくらい高い。綿の布を縫っただけ、って意識があるからそう感じ…

ロイ・アンダーソン監督「散歩する惑星」2676本目

変な映画だったなぁ。知らずに見たらアキ・カウリスマキ監督の作品だと思っただろうな。 登場人物が全員、顔が白塗りになってる。中盤で登場する、処刑された若者(首からずっと縄を下げてる。ずっと話しかけてくるけど言葉が通じない)も同じ白い顔をしてる…

クシシュトフ・キェシロフスキ 監督「トリコロール 赤の愛」2640本目

青、白、と見たのでこれもまた見ました。イレーヌ・ジャコブすごく可愛いけど、青・白の二人の女性の強さを見せつけられた後だと頼りない気もする。(私もこんな頼りない女性だったはずなのに、ヨーロッパの映画ばかり見てると強いのが普通って感覚になって…

ペドロ・アルモドバル監督「ペイン・アンド・グローリー」2593本目

今やこの監督の作品はさかのぼってほとんどもれなく見てるのに、劇場で新作を見るのは初めて。なぜなら、私が見るようになってから彼はほとんど新作を撮ってないからです。その間彼はどうしていたのか。いろんな、今までの映画に散らばっていたヒントがこの…

ミシェル・フランコ 監督「或る終焉」2590本目

<ネタバレあります> どう捉えるか、難しい映画だな。こういう映画は観るものによって解釈が分かれるんだろう。原題は「Chronic」慢性的。邦題は監督の意思と無関係だと思うので、この映画を「Chronic」と名付けた監督の気持ちを推し量ってみよう。 慢性的…

イザベル・コイシェ監督「あなたになら言える秘密のこと」 2589本目

陰のある金髪の女性。地味な工場の仕事を、不必要なほどまじめにこなす彼女。4年間無遅刻無欠勤で、山のように買いだめた石鹸で何度も何度も手を洗う彼女。この役を演じているサラ・ポーリーは同じ監督の「死ぬまでにしたい10のこと」の彼女だ。無理にでも休…

テリー・ギリアム監督「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」2574本目

待ってましたー!テリー・ギリアム!ドン・キホーテ! 原題はちゃんと「ドン・キホーテを殺した男」なのね。そして現代の風車は粉ひきとか水くみじゃなくて風力発電…。という21世紀の設定で映画を撮りに来たはずだったのに、クレイジーな靴屋のドン・キホー…

トミー・ヴィガント 監督「バチカンで逢いましょう」2564本目

アメリカか、でなければフランスのハートウォーミングな家族ドラマ、というしつらえなんだけど、イタリアが舞台の映画。ドイツ映画で「ハートウォーミングな家族ドラマ」をやるには、イタリアの明るさや軽さが必要だったのかもしれません。(※バグダッド・カ…

アニエス・トゥルブレ監督「わたしの名前は…」2542本目

哀しい、切ない、美しい、映画でした。万人が納得できるような勧善懲悪がもたらされないこの映画で、監督は何を表現、あるいは伝えようとしているんだろう?とても、そこに興味があります。 <ネタバレあります> 父親に罰が下されないこともモヤっとするけ…

マイク・リー監督「秘密と嘘」2530本目

冒頭の出演者名が左から右に流れるのがふしぎ。日本語の縦書きの文庫本みたいで。 最後はふつうに下から上に流れるのにね。 この映画は、主演女優賞をいくつも取ったらしいブレンダ・ブレッシン、お母さんの演技がやっぱり最大のポイントだなぁ。普通ですご…

ジョン・ブルーワー 監督「ビサイド・ボウイ ミック・ロンソンの軌跡」2529本目

ジギー・スターダストの頃までのボウイを「スパイダーズ・フロム・マーズ」として強力にサポートして、1993年に亡くなったミック・ロンソンについてのドキュメンタリー。 デヴィッド・ボウイはすごく素晴らしいアーティストだし長く第一線にいつづけた人だけ…

フレッド・グリヴォワ 監督「15ミニッツ・ウォー」2528本目

フランス語圏がアフリカにある。アフリカのヨーロッパ地勢図って頭に入ってないから難しいけど、ジブチはアラビア半島に一番近いアフリカだ。 この映画を見たあとで「アヴリルと奇妙な世界」を見たら、アヴリルの声はオルガ・キュリレンコがぴったりだと思え…

寺山修司監督「書を捨てよ町へ出よう」2526本目

尖ってるなぁ。純粋だなぁ。このとき寺山修司36歳。父親が戦死するという経験は今の若者にはないけど、青森の田舎で育つことや、個人を無視した社会のシステムに取り込まれることの無情は今とそれほど変わらないんじゃないだろうか。でも、今の36歳もこんな…

ヘルマン・クラル 監督「ミュージック・クバーナ」2519本目

最初の「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」と「アディオス」の間に撮られた映画。この間にコンパイ・セグンドをはじめとするメンバーの数名が亡くなっています。この映画はピオ・レイヴァと彼のThe Sons Of Cubaバンドを中心に、ドラマ仕立てになっていま…

アルベール・デュポンテル 監督「天国でまた会おう」2516本目

フランス的というのか、緊張感のある一挙手一投足や、フィーリング?でどんどん筋が進む感じに最初は完全に置いていかれてしまいましたが、二回見たらほとんど理解できた気がします。戦争の場面から始まるけど、ミシェル・ゴンドレーとか、そういうアート色…

ジャック・タルディ監督「アヴリルと奇妙な世界」2514本目

「タンタン」みたいな、線画に色を乗せたフレンチコミックをアニメ化したような映像。フレンチアニメと言われたら想像するような。すごく単純化された絵なんだけど、大人が見る風刺画みたいにリアリティがあります。そしてストーリーもなかなか緊迫。ルパン…

ファティ・アキン 監督「女は二度決断する」2513本目

見てて辛くなる、自分のことのように迫ってくる映画でした。ダイアン・クルーガー演じる主人公は、家族を愛し、真面目に暮らしている主婦なんだけど、昔はコカインをやったこともあった。夫はトルコからの移民。麻薬の密売で過去に摘発されたこともあるけど…

リー・クローニン 監督「ホール・イン・ザ・グラウンド」2510本目

アイルランド映画だそうです。緯度が高いので冬のアイルランドは多分こんなふうに陰鬱。それが美しくもあるけど、不思議なゴシックホラーのような雰囲気です。 この映画は、大きな穴がメインで穴の周囲や中で物語がどんどん進んでいくのかと思ったら、母と子…

ドーリス・デリエ 「命みじかし、恋せよ乙女」2509本目

すごく、いろんなところが未熟な青臭い感じだなぁ。主役のゴロ・オイラーの演技が硬いし、構成もぶっつなげた感じだし。でもなにか独特の美的感覚があるんだろうな。 入月絢というこの女の子は、ドイツ語がしゃべれるからキャスティングされたのかな。樹木希…

ジャン・リュック・ゴダール「イメージの本」2506本目

巨匠がわかる人だけがわかればいいと思って、自分の大事な映画の断片をたくさん集めて作った宝物。「コヤニスカッツィ」とかテレンス・マリックの映画とか「イントレランス」の仲間。って感じでした。巨匠つっても若いころは自意識過剰の気取り屋だった人が…

デビッド・バッティ 監督「マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!」2505本目

たまらん…この頃のロンドンほど最高に刺激的で美しい場所は、古今東西どこにもないんじゃないだろうか。 ロンドンに仕事で行ったのは1992年だからもうこういうロンドンの香りは何も残ってんかったけど、キンクスのカセットテープをいつも聞きながら、湾岸や…

マイケル・ラドフォード 監督「アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール」2499本目

なんと、英語だ。アンドレア・ボチェッリといえば、私が初めてイタリア旅行に行ったときにちょうど話題になっていた歌手で、私の中ではボチェッリ=イタリアだし、製作国イタリアとなっているけど、監督も俳優もハリウッド的でした。トスカーナ地方の風景が…

ヴィム・ヴェンダース 監督「世界の涯ての鼓動」2497本目

滞在型のこういう素晴らしいホテルに、仕事で泊ったり、ツアーで立ち寄ったりすると、「たまたま泊まってる素敵な独身男性と恋に落ちたりしたら素敵なんだけどな~」と妄想するような、知的で冒険心の強い二人の恋。世界中のさまざまなところへ動線をのばす…

マリア・ペーテレス 監督「レディ・マエストロ」2496本目

どれくらい事実なんだろう。生い立ちや、コンサートホールの仕事を首になったこと、ピアノ教師についたこと、音楽学校に入ったこと、指揮者に師事したこととかは事実だろうけど、御曹司フランクの存在がどうもフィクションっぽい感じがする。ロビンって存在…

サミュエル・コラルデ 監督「北の果ての小さな村で」2491本目

アイスランドより北のグリーンランドの話だ!アイスランドは一つの国だけど、グリーンランドはデンマークの一部です。グリーンランドに比べれば、北海道は南の島。かなりの地表が氷で覆われてます。去年アイスランドで初めて氷山や流氷を見て大興奮してしま…