映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

エリア・カザン監督「エデンの東」500本

大昔に見たことがあるけど、ちゃんと見るのは初めてかも。男の子たちの前髪がすごく可愛い。ジェームス・ディーンはいいにおいがこっちにまで漂ってくるような素敵な青年ですね。でも背広の大人たちもみんな色気がある。一方、女の子たちはわりあい、おざな…

ヴィクター・フレミング監督「風と共に去りぬ」499本目

1939年、初期のカラー作品ですが、ものすごく絵がきれいです。冒頭の風景もすごいし、どこを取ってもドラマチックで美しい絵ばかりです。しかしこの美しさは…クリスチャン・ラッセンの絵にも似ている。ちょっと書き割りっぽい。舞台は1861年〜1865年、南北戦…

ダニエル・アルフレッドソン監督「ミレニアム2 火と戯れる女」498本目

面白かった。 ダニエル・クレイグの「ドラゴンタトゥー」、「ミレニアム1」と堪能し、続いて見たのがこれです。極端なバイオレンスや、極端な異常者の犯罪、残酷かつ無意味な大量殺人、といったショッキングなものに安易に頼ることがないのが良い。家族の血…

寺山修司監督「田園に死す」497本目

厳しく孤独な自然と、あやしい天井桟敷と、濃い人間関係と、強烈な色彩。 いろいろなものをなまなましく感じて、ミックスしたら、体液の匂いが立ちのぼってくるような映画ができたのでした。現代の試写室にいる「私」たちの場面は、一瞬ほっとするけど、哲学…

内田けんじ監督「アフタースクール」496本目

先入観?でかなり誤解してました。(私そういうの多いな) 高校の同窓会を行うために昔の仲間に連絡したり、再会してやけぼっくいに火がついたりする映画だと思ってました。おもいきりミステリーだったんですね。先に見た「鍵泥棒のメソッド」に連なる、意外…

松田定治監督「丹下左膳」495本目

1958年、丹下左膳を大友柳太郎が演じたものです。 映画がカラーになったばかりのこの頃の時代劇って、本当に登場人物たちが生き生きと、美しい着物を着こなして誇らしげに演じていますね。 いまの時代劇を見ても、着物がきゅうくつそうに見えてにそういう華…

セシル・B・デミル監督「地上最大のショウ」494本目

サーカス映画って、テントを見ただけで切なくなってしまいます。(「天井桟敷の人々」しかり。この2作ほぼ同時代ですね)…しかし…ガチャガチャうるさい映画だなぁ。サーカスそのものは素晴らしいけど。なんか…あんまり面白くない。今から60年前のサーカスは…

ドン・シーゲル監督「ダーティ・ハリー」493本目

娯楽大作だなぁ。 ちょっとだけ暴力が過剰だったりするところが。 でも、こういう「ちょっと本当に怖い暴力」の映画って、たくさんありますね。テレビを録画したら、デフォルトが吹き替えでした。ハリー=クリント・イーストウッドの声がなつかしの山田康雄…

マイケル・ウィンターボトム監督「ひかりのまち」492本目

あー、ロンドン好きにはこたえられない。 ナディアの髪型がキュートでオシャレ。この子になってロンドンでウェイトレスしたい。広告カメラマンの彼とデートしたい。仲のいい姉妹たちとカフェで愚痴を言い合いたい。ロンドンには不安や憂鬱がつきもの。曇りの…

ミヒャエル・ハネケ監督「ファニー・ゲーム」491本目

見た後の気分最悪という前評判をきいて、あえて他の人の感想や「ネタバレ」もたくさん読んでから見てみました。(ショックをやわらげるため)ハネケ監督は、自分がドイツ人であるということをずっと原罪として重く抱え続けてきたんだろうか。 なぜ人はかつて…

ウィリアム・ワイラー監督「ベン・ハー」(前編、後編)490本目

1959年の映画化。チャールトン・ヘストンが主演、4時間近くの大作です。 BSジャパン(無料!)で前後編に分けて放送したのを録画して見ました。テレビで放送する映画だけをピックアップして教えてくれるアプリ「映画番組表」をスマホに入れたおかげで、見逃…

新藤兼人監督「竹山ひとり旅」489本目

新藤兼人監督作品を見るのは久しぶり。 この監督は、ドキュメンタリーではわりと冒険するイメージがあります。 斬新な手法をとる。 「竹山ひとり旅」では、竹山本人が冒頭と最後に出てきて演奏するけど、途中のフィクションの部分は演じるのが林隆三で、無頼…

ミーラー・ナイール監督「モンスーン・ウェディング」488本目

なんと、これは英語の映画なんですね。アメリカ映画なのか? インドで暮らす家族が、なぜか英語で話している。 これって実際ありうるのかな。イギリスやアメリカのインド人の流暢な(アクセントはすごいけど)英語を聞いてると、それもありうる気がします。…

タル・ベーラ監督「ニーチェの馬」487本目

じゃがいもばかりをゆでて食べるところを見れば、“赤貧”だということがわかる。 でも父はよく見るとギリシャ彫刻みたいに美しいし、石造りの家は紙と木でできた日本の家よりしっかりしてる。 彼らは少し前まで、もう少しいい暮らしをしてたんじゃないのか?し…

石井輝男監督「網走番外地」486本目

高倉健の映画って、やくざ物であろうとなかろうと、情緒的なものが多いと思うんだけど、この映画は意外と意外とさっぱりとしていて、ジャンルとしては単純に楽しめる「大脱走もの」ってかんじでした。面白かったです。 若い健さんはなんだか可愛いけど、特筆…

ピーター・ボグダノヴィッチ監督「ラスト・ショー」485本目

「ペーパームーン」と同じ監督が、同じく1970年代に、1950年代ふうに撮った作品。 もはや70年代も大昔なので、「あれ、シビルシェパードってカラー作品出てなかったっけ」などと混乱してしまいます。こういうアメリカの、なんつーことない郊外の町の、なんつ…

ベルナルド・ベルトリッチ監督「シェルタリング・スカイ」485本目

愛し合うことって、素晴らしけど恐い。 愛し合ってるけど行き詰まってる夫婦がいて、さいはての地でその片方が死病におかされる。病院も薬も見つからない。不安や恐怖と戦いながら看病しても、願いはかなわず。妻はひとり、隊商に混ぜてもらって旅を続ける。…

ミヒャエル・ハネケ監督「隠された記憶」484本目

この監督の作品を見るのは「愛、アムール」「白いリボン」に続いて3本目。 「愛」が究極の愛、「白いリボン」は集団のなかに生まれる悪意と疑いの怖さをそれぞれ描いた作品という印象でした。そしてこの映画のテーマは、DVDに収録されている監督自身のイン…

細田守監督「おおかみこどもの雨と雪」482本目

絵がとってもきれい。 ストーリーは、あまり大きな起承転結はありません。たくさん人や虫が死んだり、世界を一人で救ったりすることもありません。でも、それで見応えがないというわけではないです。 家族で行きていくこととか、ダイバーシティを尊重しつつ…

ソフィア・コッポラ監督「ヴァージン・スーサイズ」481本目

タイトルやテロップに使われてる丸文字(というか、若い女の子が書く飾り文字)が強烈だわ。 「東京カワイイTV」だの、きゃりーぱみゅぱみゅだの、の世界。 そして、彼女たちがブロンドの清潔な美少女たちだということ、理想的な両親それも敬虔なクリスチャン…

スティーブン・スピルバーグ監督「戦火の馬」480本目

馬かわいい。 おばちゃん=エミリー・ワトソン、純真で図太い、いい存在感です。 「奇跡の海」に出てましたね。あの演技もよかった。 あ、またベネディクト・カンバーバッチが出てる。賢くてちょっとイヤな奴を演じると、とても良いです。映画全体としては、…

ファラー・カーン「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」483本目

いやーすごいものに参加してしまいました。 今夜は横浜の映画館「ジャック&ベティ」の“マサラナイト”! 「恋する輪廻」の上演前に「オーム・シャンティ・オーム」のダンス教室、それから入口でクラッカーをたくさんもらって参戦。幕間(3時間もあるんで途…

野村芳太郎監督「コント55号とミーコの絶体絶命」479本目

1971年作品。 最初にはっとしたのはオープニングのテーマ曲のハイカラさ。音楽誰だろう?と思って見たら中村八大だった。さすが!劇中、由美かおる(21歳だけど今と同じかんじなのが驚異的)がゴーゴークラブで歌う歌もしゃれてますが、歌詞が女工哀史みたいだ。…

ジェームズ・ワトキンス監督「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」478本目

見る映画を選ぶのって難しいなぁ。 これもそれなりに話題になったし、予告編を見たときはいけそうだと思いました。 画面のゴシック的美しさに、とても引きつけられるし、急に成長してパパになってしまったダニエル・ラドクリフはやっぱり熱く知性あふれる魅…

ピーター・ボグダノヴィッチ「ペーパー・ムーン」477本目

白黒なので驚いた。そんなに古い映画だっけ?と思ったら、1970年代にあえて白黒で作られた映画だったんですね。とにかくテータム・オニールがいい。生意気でふてぶてしくて、ちっちゃくて賢い。 堂々と煙草もふかすし、正々堂々と大人をだます。 この可愛さ…

デヴィッド・クローネンバーグ監督「危険なメソッド」476本目

ユングとフロイトかぁ。しかもほとんど事実に基づいたストーリーなんですね。 シャーロックホームズ対エルキュールポワロみたいなフィクションかと思った(←無知でほんとすみません)キーラ・ナイトレーの怪演。 美しい身なりをした美しい人なのに、心がみにく…

イザベル・コイシェ監督「死ぬまでにしたい10のこと」475本目

もしも自分が余命宣告を受けたら、こんな風に過ごしたい…という夢とあこがれを描いた、美しくクリーンな映画でした。女性にしか作れない作品だと思います。これほど生きることに対する欲をさらっと捨てられる人って、どれくらいいるんだろう。死にたくないよ…

ニールス・アルデン・オプレヴ監督「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」474本目

US版と比べてみたくて借りました。こっちがオリジナルだし、第2話、第3話もあるし。その結果。 基本のストーリーは、当然同じだし、ミステリアスな雰囲気やどきどきする感じも共通です。こっちも面白い。 ミカエルはこっちの方がジャーナリストっぽいかな…

アレックス・コックス監督「シド・アンド・ナンシー」473本目

「裏切りのサーカス」を見た後に、この映画を見てみたくなりました。 当時パンク嫌いだった人や、まだ生まれてなかった人たちは、この映画をどう見るんだろう?シド&ナンシー…まさに私と同時代で、遊びでよくPretty Vacantとか演奏してた私ですが、どうせま…

ジャック・タチ監督「郵便配達の学校」472本目

「ぼくの伯父さん」DVDをレンタルしたら、特典映像として短編映画が一本入ってた。 こういうの、見逃してる人もいるんじゃないかな?ジャック・タチ40歳のときの初監督作品(と、思われる)。 わずか14分ていどの短編です。 タチが自転車で、てきとうに怠…