映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

イングマール・ベルイマン監督「魔術師」2464本目

馬車が木立の向こうから走ってくると、その背後から夢のように美しい陽射しがさしこんでくる。印象的な場面だけど私でも知っているスヴェン・ニクヴィストの撮影ではないようでした。 マックス・フォン・シドーが若い上に「髪を黒く染めて付け髭をつけている…

武内英樹 監督「翔んで埼玉」2463本目

めくるめく魔夜峰央の世界。ビジュアル系とか宝塚とか、もっというと歌舞伎や戦隊ものアニメにも通じる”不自然さの”が体質的に嫌いな人は、はなから見ないほうが良い。この世界に異常に親和性の高いGACKTと、何にでもなりきれる天才二階堂ふみがいれば、すで…

ルネ・ラルー監督「ファンタスティック・プラネット」2462本目

目の赤い、なんか怖いキャラクターのこの映画、ずっと気になってましたが、コロナがらみのAmazon経由シネフィルWOWOW無料ということで見てみました。1973年の作品なんですね!なんとなくモンティ・パイソンのつなぎアニメみたいな品質とテイストなのが納得で…

オットー・プレミンジャー監督「軍法会議」2461本目

ゲーリー・クーパーってどうも私は印象が薄い。日本人的に真面目できちんとしていてちょっと神経質そう。親しみは感じるんだけど、私は映画にもっと破天荒なものを求めてるのかも。 この映画は、プレミンジャー監督がお得意の”けれん味”を極力抑えて、ストー…

ジャック・ベッケル監督「モンパルナスの灯」2460本目

これを借りた理由は多分、宝塚の「赤と黒」を見たからだ。以前見たジェラール・フィリップ主演の「赤と黒」は宝塚にはあるまじき悪党の物語なのに、それを忠実になぞりつつ清く美しい宝塚流にちゃんと完成していた先日の公演はなかなか素晴らしくて、改めて…

キャスリン・ビグロー監督「ハートブルー」2459本目

あのハードボイルド女性監督が、1990年にキアヌ・リーヴス主演の映画を撮ってたとは。原題は「Point break」、辞書では「一点突破」と出ました。 要領のいいスマートな銀行強盗に立ち向かっていく、まだ美少年然としたキアヌ。その銀行強盗はじつはサーファ…

川島雄三監督「風船」2458本目

高度成長期の日本の、大企業で仕事や接待にいそしむやり手サラリーマンと、ホステス。 ナイトクラブではジャズ演奏の前で、ローラースケートを履いて踊りながら歌う(口パクだけど)、北原美枝。こういうショーを本当にやってたのかな。「太陽の季節」と同じ…

ティム・バートン監督「ビッグ・フィッシュ」2457本目

水中の映像から始まって、「シェイプ・オブ・ウォーター」を思い出す。ちょっと前までは、こういう童話的な世界の作品を見ると、ギレルモ・デル・トロに限らず”ティム・バートンらしい”と思ったものだけど、 最近は”ウェス・アンダーソンっぽい”とか”ミシェ…

デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン 監督「裸足の季節」2456本目

裸足の季節といえば松田聖子1980年のデビュー曲なのであって、この映画は2015年制作のトルコが舞台の映画だけど原題は「Mustang」。野生の馬という意味…なるほど、無邪気な少女たちを野生の馬にたとえた。だから裸足をイメージしたんですね。少女時代の終わ…

ピング・ランプラプレング 監督「THE POOL」2455本目

タイで作られたワニパニック映画。いや「プール大脱出ゲーム」かな? 冒頭、男性が血まみれで目覚めたら、いきなり大ワニが足に喰らいついてきていて、勘弁してほしい。怖い映画だ…と思って見てたのに、大勢いた人が消えたり、女の子がプールに飛び込んだり…

マイク・ニコルズ 監督「シルクウッド」2454本目

かなり昔に見て、メリル・ストリープがとても悲しい役をしていた記憶だけあったのですが、なんだか気になったのでタイトルだけを頼りに探して見直してみました。 冒頭を見ただけで思い出した。まだ若いメリル・ストリープやシェールが核燃料の工場で働いてて…

パティ・ジェンキンズ監督「ワンダーウーマン」2453本目

ワンダーウーマンは黒髪のヒーローなので、シャーリーズ・セロンではないんだな…。 冒頭からいかにもなCGの使い過ぎ(自然に見せるための手数が足りてない?)で、マンガよりもマンガ的なのがちょっと気になるけど、ガル・ガドットを起用した新しい女性ヒー…

イ・チャンドン 監督「バーニング 劇場版」2452本目

<ネタバレあり> 原作たぶん読んだはずだけどあまり覚えてない。 「普通っぽいけどわりと精悍かつ知的で意外と女にもてる主人公」「美人で感受性が強く純粋なヒロイン」「世界を手に入れたようなお金持ち」という定番の登場人物。フィッツジェラルドのグレ…

パヴェウ・パヴリコフスキ 監督「COLD WAR(コールドウォー) あの歌、2つの心」2451本目

「イーダ」という映画を見たことがあります。あれも白黒で、静かな映画だったなぁ。ここで初めてちゃんとポーランドの歴史をひもといてみる。第二次大戦後、ソ連に属してはいなかったけど「従属する衛星国」だったと。この映画のなかでは、まるで東ベルリン…

オリヴァー・ストーン監督「ウォール街」2450本目

(ネタバレというのか?これは?) 一言でまとめると、インサイダー取引はダメよ!という映画。日本でも優秀な人たちから次々に証券会社に入社していったバブルの頃のお話です。なんとなく、のちの「ハゲタカ」のオリジナルという感じもしますが、こっちはお…

ルイ・ガレル監督「パリの恋人たち」2449本目

「グッバイゴダール」でめんどくさいゴダールを自分で演じたガレル監督が、また自分を主役として撮った映画。ゴダールの流れをくむ、女性礼賛にともなう男の卑下をこの映画でも描いています。だって原題は「L'HOMME FIDÈLEA (FAITHFUL MAN)」、従順な男って…

諏訪敦彦監督「風の電話」 2448本目

これもまた「別府ブルーバード劇場」にて。観客はきわめてまばらだけど、今日は館主の方もいらして、湯の街で映画文化を長年守り続けてきた方の笑顔がとてもまぶしかったです。 この映画は、感想を書くのが難しいですね。作り手と現実の被害者やその家族の方…

イ・ビョンホン監督「エクストリーム・ジョブ」2447本目

面白かった!こういう抱腹絶倒なおバカ映画って大好きです。 「なんか乗り切れなかった」という感想の人もけっこういますが、私にとってはこの映画はまさに好みのタイプでした。「パラサイト」には富裕の差にもとづく敵・味方という敵対関係があって入り込め…

マリエル・ヘラー監督「ある女流作家の罪と罰」2446 本目

マスコミに出てこない地味なアル中の作家が、忘れかけられたスターの伝記を書いても売れそうにない。その作家は食い詰めて、とうとうスターからの手紙の贋作作りを始める…。 コメディエンヌとして名高いメリッサ・マッカーシーが地味な中年女性をうまく演じ…

真利子哲也 監督「宮本から君へ」2445本目

俳優がみなすごく役に入り込んでいて、深い演技で見ごたえがありました。好き嫌いはあるだろうけど、力の入ったいい映画だと思います。これはやっぱり監督の力なんだろうな。 真利子哲也 監督って「デストラクションベイビーズ」だし、バイオレントなイメー…

千切谷知子演出「扉の向こう ロック歌手・宮本浩次という生き方」 2444本目

是枝監督がプロデュースしてますね。なんのつながり?ファン?最後のクレジットにテレビマンユニオン(制作会社)、フジテレビって出てましたね。もともとテレビ用に作った作品だそうです。 私がエレカシをちゃんと聞き始めたのは、ソニーからポニキャンへ移…

キース・フルトン監督「ロスト・イン・ラ・マンチャ」2443本目

ああ、辛い…切ない… テリー・ギリアム大好きなんですよ。監督としてもアニメーターとしても、「スペイン宗教裁判」の演者としても。彼のコリコリに凝った映像を愛する者として、素晴らしいドン・キホーテ(ジョン・ロシュフォール)、かわいいサンチョ・パン…

マーティン・スコセッシ監督「キング・オブ・コメディ」2442本目

「ジョーカー」を見たときにこの映画との関連を指摘したものを何度か見たので、ずっと見たかった。レンタルDVDはなかなか順番が回ってこないけど、こういうのが今はAmazonプライム会員無料で見られるんだなぁ…。 でこの映画を見てみたところ…「ジョーカー」…

ジャック・スマイト監督「エアポート’75」2441本目

昔テレビで見たかも。タイトルが昔っぽくて、かつ、飛行機も空港も大好きな私としては気になるテーマなので見てみました。 英語が始まったとたん(あ、吹き替えじゃないんだ)と思ってしまったくらい、テレビドラマっぽい始まり。この頃ほかにもたくさんあっ…

グザヴィエ・ドラン監督「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」2440本目 

ふつうLife and deathでしょう。最初からDeathとくるところが不穏です。 そもそもドラン監督の作品は、生霊みたいに死にとりつかれていると感じることがよくあります。死の中でも、老母が老衰で死ぬとかじゃなくてpremature death。若くて美しい人がむざむざ…

三浦大輔監督「娼年」2439本目

「恋の渦」「愛の渦」の監督か。それで納得した。あの2つの映画も、エロスを追求するんじゃなくて性ってほんと人間そのものだよね、と、動物の交尾を観察するように、あけすけに描写した映画だった。この映画の場合、最後のオチはどうでもよくて(というこ…

ジャン・リュック・ゴダール監督「女は女である」2438本目

なんか、納得しました。 ゴダールって女のことをちっとも理解してないけど、その美しさや優雅さに心酔してとりこになっていた、ある意味フェミニストなんじゃないかな。アンナ・カリーナにしれっと「みんな私の言うことを聞くわ、だってわたしは、とても、き…

ルキノ・ヴィスコンティ監督「若者のすべて」2437本目

ダメだ、この映画苦手…。 イタリア人のおばちゃんと息子たちとその女たちが、ずーーっと怒鳴り続けてるのを聞いてるのがツラくて。どん底まで不幸な映画はほかにもあるけど、私はこういうのダメなんだ。 ルキノ・ヴィスコンティは、アラン・ドロンをはじめと…

アレックス・コックス監督「レポマン」2436本目

エミリオ・エステベスがいちばんエネルギッシュだった頃。監督は「シド&ナンシー」のアレックス・コックス、テーマ曲はイギー・ポップ。勢いあります。 <以下、ネタバレのような気もする> ストーリーは、なんかぐちゃっとしていて“夢オチ”的な乱暴な終わ…

アンソニー・マラス監督「ホテル・ムンバイ」2435本目

「ホテルxxx」という映画はほかにもたくさんあります。不穏な映画もあるけど、おおむねハートウォーミングな作品が多い印象なので、この映画に限っては、単にそのまま日本語にするんじゃなくて「ホテル・ムンバイ~緊迫の60時間~」とか「~決死の脱出~…