映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

サム・メンデス監督「1917 命をかけた伝令」2704本目

<ネタバレあり> 予告編や前評判や他の方々の感想をたっぷりインプットしてから見ましたが、一言でいうと「すごく面白いエンタメ大作」と感じてしまった。ほぼ実話で、人の命がやすやすと奪われる映画なのに。007シリーズのサム・メンデス監督、大量のエキ…

バルタザール・コルマウクル 監督「湿地」2703本目

<ネタバレというかネタ推測あり> 北欧ホラー、しかもアイスランド。レイキャビクは島の中では南西にあって比較的温暖で明るい街だったけど、この映画を見ると、アキ・カウリスマキの映画の中のル・アーブルみたいに陰鬱だ。しかも悪趣味。遺体から取り出し…

衣笠貞之助 監督「狂った一頁」2702本目

1926年の作品。まあなんと昔の映画。昭和の初めです。精神病棟らしい、窓にパイプの入った小さい個室で、いかにも狂女然とした人たちが狂態をさらしています。音楽はあるけど台詞はない。サイレント映画だけど、画質が悪いことを除けば少しも古さは感じませ…

ノ・ヨンソク 監督「昼間から呑む」2701本目

タイトルが良すぎて借りてしまった。私は赤羽で時々やります(笑) ここまでではないけど、私もわりと無計画に旅行するほうなので、無為にバス停で何時間も過ごすのとか、なんとなく共感します。 それにしても、この画質の悪さは?「フロリダ・プロジェクト…

ラズロ・ベネデク 監督「セールスマンの死」2700本目

終身雇用ってものに縁がないアメリカのセールスマン。たいがいの人が、年を取れば商売のカンも鈍る。息子たちが一人前にならないうちは、それでも自分が真剣に稼がなければならない。妻の性格が良すぎて、そんな夫に明るくやさしい。 だんだん見ているうちに…

ジョー・ライト監督「プライドと偏見」2699本目

ひとりジェーン・オースティン特集。この映画を見てなかったのは不思議。今から15年も前の作品だ。 キーラ・ナイトレイ、ロザムンド・パイク、その両親はドナルド・サザーランドとブレンダ・ブレッシン(「秘密と嘘」の!)、ジュディ・デンチにキャリー・マ…

ジョン・ジョーンズ 監督「ノーサンガー・アベイ」2698本目

英文学の授業では「ノーザンジャー・アビー」と習った気がする。ノーサンガー・アベイはコックニーっぽくないか?舞台はイングランド南部のバースだということなので、ロンドンとそう遠くないけど。 主役の純朴な女の子を演じるのは、スター・ウォーズ ロー…

エルマンノ・オルミ監督「ポー川のひかり」2697本目

図書館にこの映画のDVDがあったので借りて来ました。この監督の「聖なる酔っぱらいの伝説」でルドガー・ハウアーに惚れたのはわりと最近のこと。この映画の、学問を全否定して田舎に引っ込んだ教授は「女性生徒がみんな惚れる」二枚目です。日本でリメイクし…

セルジオ・レオーネ監督「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」2696本目

<ネタバレあり> この映画は上映まもなく見たはず。ジェニファー・コネリーが大きくなったらエリザベス・マクガバンになるのが納得いかなかった。怖くて悲しい映画だったなという記憶はあるけど、デニーロだしギャングだからぜったいシチリアマフィアだと思…

今村昌平監督「カンゾー先生」2695本目

今村昌平の映画でまだ見てないのが何本かあったので、順次見て行こう。 これは坂口安吾の原作があるんですね。今村昌平作品なので、人間の皮をはいだようなむき出しのドロドロの性とか死とかがあります。どの人の家もめっちゃ散らかってます。 柄本明は年齢…

デヴィッド・クローネンバーグ監督「シーバース」2694本目

私は素人だけど「日経アーキテクチュア」を購読してたこともあるくらい建築が好きなので、冒頭からこの何でも完璧に揃った機能的アパートにぽーっとなってしまいます。ベルリンの「ヴァイセ・シュタット」みたいで。でも監督が監督なのでこのあとの展開は覚…

湯浅政明 監督「夜は短し歩けよ乙女」2693本目

これ、面白い。 アニメ映画なんだけど、絵の動かし方がとてもユニークで飽きない。主人公の「迂遠な男」の声を謎の実力派ミュージシャン星野源がやってるのも、奥が深くていい。舞台が歌舞伎町とか六本木とかじゃなくて京都の先斗町ってのもいい。先斗町には…

グレタ・ガーウィグ監督「わたしの若草物語」2692本目

(ネタバレあり)(他の映画の結末まで書いてる) ギンレイホールでカップリングされていたもう片方の「リンドグレーン」と比べて、やっぱりハリウッド。(こっちはフィクションだという違いも大きいけど)時系列が行ったり来たりするのがわかりにくいけど、…

ペアニレ・フィシャー・クリステンセン 監督「リンドグレーン」2691本目

「長くつ下のピッピ」「カッレくんのぼうけん」子どもの頃愛読したわ~。めちゃくちゃヤンチャで賢い子どもたちが大活躍する、ワクワクドキドキな物語でした。 その作者、そういえば女性だっけ。日本人の場合、まあまあ読んだ覚えがある私ですらこんな認識な…

ユン・ガウン 監督「わたしたち」2690本目

本当は仲良くなれそうだと思った子たちが、”子どもなら誰でもやってしまうささやかな意地悪”に満ちた教室で、生き延びるために姑息で必死な争いを続ける。 誰かひとりが無謬のかわいそうな主役になったりしないところが良いです。誰も開き直ってガキ大将にな…

マイク・フィギス監督「リービング・ラスベガス」2689本目

この監督の作品は初めて。ニコラス・ケイジがしょっぱなからアルコール依存症の借金魔で、この最低な男をこれからどうするつもりだ、という気になります。 彼が出会ったチャーミングな娼婦エリザベス・シューの元締めはジュリアン・サンズ。「眺めのいい部屋…

ヨールン・ドンネル 監督「ファブリックの女王」2688本目

マーケティング的には、タイトルに「マリメッコ」を入れたほうがいいと思うけど、NG出たのかな?まさかね。 マリメッコって確かに、他のどの生地よりセンスが鋭くて素敵なんだけど、びっくりするくらい高い。綿の布を縫っただけ、って意識があるからそう感じ…

ロマン・ポランスキー監督「ポランスキーの欲望の館」2687本目

イタリア資本があったのでイタリアふうのエロティックコメディを作ろうという趣向だったのか。タイトルとジャケットを見ると、おどろおどろしい老人が次々に若い女性をいけにえにするような映画化と思ったけど、原題は「何?」だと聞いて、もっと軽くてチャ…

リチャード・フライシャー監督「海底二万哩」2686本目

この監督の作品、意外と見てました。「ソイレントグリーン」は覚えてるけどあとはあまり記憶にない…。この映画は1954年なのでセンスが古くても当たり前なんだけど。「ロリータ」や「邪魔者は殺せ」のジェームズ・メイソン、「M」や「罪と罰」の癖のある悪役…

ブノワ・プショー 監督「グザヴィエ・ドラ バウンド・トゥ・インポッシブル」2685本目

グザヴィエ・ドランは美しくてなんだか特別な子供みたいな不思議な監督であり俳優なのですが、このドキュメンタリーでは彼の現場での様子や、突然脚光を浴びるまでのことが俳優やプロデューサーによって語られます。つかみどころのない人だけど、誰から見て…

ルパート・グールド 監督「ジュディ 虹の彼方に」2684本目

小さい頃大好きだった「オズの魔法使い(私のはシェリーが出る、ホンダがスポンサーだったやつね)」のジュディ・ガーランド版を見直したとき、彼女の壮絶な薬物中毒のことも知りました。この映画では、晩年の彼女にはダメなこともあったけど、素直で可愛い…

クロード・ルルーシュ監督「愛と哀しみのボレロ」2683本目

世界きってのロマンチストな監督(と私は思っている)が戦時下の恋や家族を描くとどうなるのか。不思議な音楽映画、なのかな。男女が出会った場面の次はもう結婚式だ。ミュージカルやオペラみたいに、解説で「物語が大きく動き始めるのは20年後のことでした…

ロマン・ポランスキー監督「赤い航路」2682本目

ポランスキーの映画にヒュー・グラントが出てる。何というありえないことだ。船のトイレで倒れていたのはやっぱり、現ポランスキー妻のエマニュエル・セニエだ。彼女がヒュー・グラントをバーのカウンターで罵倒している。おかしい…。気の利いたトークでもし…

セバスティアン・レリオ 監督「グロリアの青春」2681本目

グロリアが通うダンスクラブは、中高年の出会いの場なんだろうか。毎回わりと積極的に男性に声をかけるグロリア。笑顔がチャーミングな初老の女性です。夫や妻と別れたり先立たれたりして独身の人たちって、この年代だとどれくらいいるんだろう。素敵だけど…

リナ・プライオプライト 監督「アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生」2680本目

信じられないくらいお洒落で美しい高齢女性たちがじゃんじゃん出てきます。 「お金があるからできる」って感想に書いてる人が多いけど、彼女たちは多分、若い頃に買い集めたものを使いまわす知恵とセンスを持ってる。ストリートスナップを撮られる人の中には…

スタンリー・クレイマー監督「おかしな、おかしな、おかしな世界」2679本目

「おかしな」は「mad」なんだ。笑える!というんじゃなくて、どうかしてる、金の亡者になっちゃってる、というニュアンスかな。 CGもない時代なのに危険をかえりみないアクションの連続、バラエティに富んだ登場人物…と楽しいけど、あまりに人間ドラマがなく…

グザヴィエ・ドラン監督「マティアス&マキシム」2678本目

この監督の作品はずっと公開すぐに劇場に見に来てるな。 前作の「ジョン・F・ドノヴァン」がなんとなく監督の初期の集大成というか一区切りのように思えていたので、今回は次の時代の始まりのつもりで気楽に見ることができました。 主人公たちは30歳。女は…

今村昌平監督「赤い殺意」2677本目

今村昌平の作品を見るのは久しぶり。集中して映画を見始めた頃に衝撃を受けた作品がいくつもありました。この作品は「山さん」(太陽にほえろ!での役名)が悪者なんだ。冷静沈着なあの山さんが…。このとき32歳、まだいい人にも悪い人にも見えない。 今村昌…

ロイ・アンダーソン監督「散歩する惑星」2676本目

変な映画だったなぁ。知らずに見たらアキ・カウリスマキ監督の作品だと思っただろうな。 登場人物が全員、顔が白塗りになってる。中盤で登場する、処刑された若者(首からずっと縄を下げてる。ずっと話しかけてくるけど言葉が通じない)も同じ白い顔をしてる…

ジェイ・ローチ 監督「スキャンダル」2675本目

原題は「爆弾」。タイトルが「スキャンダル」でポスタービジュアルが3人の美人キャスター、これじゃまるで彼女たちの社内不倫の映画みたいだ。この映画のテーマはセクハラなのでスキャンダルって言葉とはニュアンスが違う。日本で上映したところでセクハラが…