映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

日本映画(80年代まで)

市川崑監督「ビルマの竪琴(1956年)」2940本目

最近の戦争映画はおおげさな音楽を排して、現場音っぽい銃撃や息遣い、無音状態でむしろ観客の緊張感をうながすものが多いように思うのですが、この映画は始まってすぐ、美しい竪琴の奏でる音楽(手作りでこの美しい音はないけどな)が流れて、ふっと緊張が…

野村芳太郎監督「影の車」2920本目

1970年の作品。千葉の住宅地といっても、電車の沿線の土地はまだまばらにしか開発されてなかった時代。 真っ赤なゴシック体で行頭記号までつけて表示されるクレジットが異様…。 美しい笑顔の加藤剛は平凡なサラリーマン。事件に巻き込まれそうな予感…そうい…

増村保造 監督「からっ風野郎」2858本目

<ネタバレあり> 増村監督が、三島由紀夫原作を映画化するのに飽き足りず、彼を主役に1本撮ってしまいました。…いや違うな。「潮騒」や「炎上」はこの前だけど、これより後に映画化された作品も多い。「黒蜥蜴」、「憂国」、「音楽」…。他の作家の文学作品…

増村保造 監督「音楽」2843

これは大橋裕之原作のアニメじゃなくて、三島由紀夫原作の1972年の作品。間違えてレンタルしたわけじゃないです(笑)。数年前にこの原作のほか数冊、彼が書いた大衆小説(「平凡パンチ」に連載したような)を読んだら、面白くて達者でびっくりしました。今…

森崎東監督「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」2835本目

1985年作品。まるで「男はつらいよ」みたいな雰囲気で始まります。これは名古屋の沖縄集落が舞台なんだ。 担任の先生を誘拐して身代金で儲けようとする不良高校生、ヌードダンサーが町に帰ってきて原発ジプシーと結婚するという。これって1985年のリアルかも…

溝口健二監督「西鶴一代女」2786本目

1952年の作品、主演は田中絹代。 教科書にも出て来た「好色一代女」の映画化。好色といっても片っ端から手を出すんじゃなくて「恋多き」という意味でしょうか。この映画では「男運が悪い」という意味しかなさそうです。田中絹代は真面目でひたむきな薄幸女性…

本多猪四郎 監督「モスラ対ゴジラ」2778本目

「モスラ」割と最近見たはずなのに、見覚えがないな…と思ったら、これじゃなかった。モスラの出る映画って10本も作られたんですね。この映画は、小美人の服装が花みたいですごく可愛いし、モスラの造形も愛嬌があります。モスラの卵も小じゃれたイースターエ…

斎藤耕一 監督「津軽じょんがら節」2777本目

江波杏子は、すごく大人っぽい中年の女性というイメージだから、若くてびっくり。(なんで驚くんだろう、誰だって若い頃はあるのに)寺田農も若いなぁ、細いなぁ。 津軽の荒い波、情緒あるなぁ。だいいちDVDジャケットがいいですよね。大人の日本昔ばなし、…

長谷部安春 かんとく「野良猫ロック セックス・ハンター」2768本目

借りるのに勇気がいるタイトル!(笑)でも全然まったく、いやらしい映画じゃないです。 海外の映画好きの人たちが、梶芽衣子の出演作品のイメージイラストを描いたのをたくさんTwitterで見たのですが、その中にこの作品もあって、見てみたくなりました。 ま…

増村保造監督「曽根崎心中」2766本目

歌舞伎をよく見てた時期があったんだけど、外資系勤めが長かった私には信じられない男尊女卑や厳格な身分制度が当然で、耐えられず逃げ出したり死んだり殺し合ったりする男女が美しく描かれるという世界観が、むかむかする一方で、胸が痛くなるほどの感動を…

大林宣彦監督「麗猫伝説」2764本目

1983年の「火曜サスペンス劇場」を劇場版として1998年にリリースしたもの。 冒頭に岩崎宏美の歌の「火曜サスペンス劇場」のタイトルバックが流れるんだよ。これテレビ番組そのものじゃない?あまりに昭和感が強くてちょっとびっくり。画質も相当悪いけど、当…

大友克洋監督「AKIRA」2738本目

これもずっとまた見たかったんですよ。大友克洋の単行本は大学生の頃むさぼり読んだものでした。映画はいつどうやって見たのか思い出せないけど、VHSをレンタルしたのかな。 AKIRA COMMITTEE(アキラ製作委員会、ですね)という文字が冒頭に表示されて、逆輸…

斎藤武市 監督「愛と死をみつめて」2737本目

1964年の作品。一世を風靡したらしく、その後に生まれた私でも「甘えてばかりでごめんね」という歌を覚えてます。(あれは実は映画より前に出た、関係ない歌らしい)小さい頃、姉とマンガのようなものを描いて遊んでたときに、姉が”骨肉腫で顔の半分を取るこ…

荒井良平 監督「怪猫有馬御殿」2733本目

映画史の中で語られる「化け猫女優、入江たか子」について、一本くらいは見ておこうという趣旨でレンタル。でも本当は、戌年生まれで猫嫌いの父が、母に内緒でこっそり「小さい頃に見た化け猫映画が怖かった」と話してくれたことが忘れられなかったこともあ…

塚本晋也監督「TOKYO FIST 東京フィスト」2721本目

塚本晋也自身が主演で、彼の実弟のでボクサーの塚本耕司が共演。二人で争う女は藤井かほりが演じます。3人とも存在感が濃くて、異常に熱くわだかまるマグマみたいなものが体の中に詰まっている感じ。塚本作品って変わらないなぁ。マグマはどこから来るのか、…

マキノ雅弘・松林宗恵監督 「ハワイの夜」2708本目

とってもとってもロマンチックでセンチメンタルな、昭和30年代の少女マンガみたいな映画。初期のアメリカの無声映画とかも、このくらいロマンチックなものってけっこうあったんじゃないでしょうか。淀川長治が「キレイキレイ」と表現したような。リリアン・…

衣笠貞之助 監督「狂った一頁」2702本目

1926年の作品。まあなんと昔の映画。昭和の初めです。精神病棟らしい、窓にパイプの入った小さい個室で、いかにも狂女然とした人たちが狂態をさらしています。音楽はあるけど台詞はない。サイレント映画だけど、画質が悪いことを除けば少しも古さは感じませ…

今村昌平監督「赤い殺意」2677本目

今村昌平の作品を見るのは久しぶり。集中して映画を見始めた頃に衝撃を受けた作品がいくつもありました。この作品は「山さん」(太陽にほえろ!での役名)が悪者なんだ。冷静沈着なあの山さんが…。このとき32歳、まだいい人にも悪い人にも見えない。 今村昌…

森谷司郎 監督「日本沈没」2614本目

子どもの頃にテレビで見たかもしれないけど、怪獣も出てこないし、大人の人たちが怖い顔して言い合ってる場面が多いので、多分ちゃんと見てないと思う。 小林桂樹がまさかのヨゴレ役、というか高名な科学者なんだけど見た目がヨレヨレなのが珍しい。藤岡弘が…

山田洋次監督「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」2600本目

超大人気シリーズでありながら、ずっと下町のロケで制作してるイメージが強くて、冒頭からけっこう豪華な海賊船のセットが現れて「意外とお金かけてんなー!」。マンネリを避け、ヒットのごほうびとしてもこういう趣向にしてみたのかもしれません。 寅さんシ…

中川龍太郎監督 2586本目「わたしは光をにぎっている」

これはどういう映画なんだろう。この監督の作品は初めてです。もう見た方々の感想を見ると、めっちゃ点数低い人と100点の人がいる。予想できない(笑) 主役の松本穂香、見たような見ないような…プロフィールを読んでやっとわかった。「ひよっこ」で有村架純…

野口照夫 監督「薔薇とチューリップ」2582本目

図らずも今朝の「あさイチ」に原作者の東村アキコが出てこの映画について語ってました。K-POPアイドル2PMのジュノが好きすぎて、熱烈なファン(東村氏自身も含まれる)のあいだで彼を日本に呼ぼうという話が出る→彼の出る映画を作ろう→東村、彼を主役にマン…

大林宣彦 監督「HOUSE ハウス」2575本目

<ネタバレだらけ> やっと見た。あの大林監督の怪作と聞いてたけど、池上季実子!と大場久美子!が可愛いらしくて(檀ふみも!)池上季実子の父が笹沢左保だったり、新しいお母さんが鰐淵晴子(綺麗すぎてサイボーグ)。尾道三部作と同じように、少女たちの…

木下恵介監督「笛吹川」2549本目

白黒フィルムを鮮やかに彩色した画面。1960年の作品。 面白いですね、なんか怖いですね。賽の河原かと思ったら合戦場のあと、累々と死体が横たわっているフィルムを紅色に染めています。今なら、元の色をもう少しうまく着色できるんだろうな。1960年っていっ…

山本薩夫 監督「にっぽん泥棒物語」2537本目

「にっぽん泥棒物語」というより「元泥棒と冤罪」って映画でした。 三國連太郎、こんな若い二枚目のうちから、ロクデナシな泥棒の役なんかもやってたんだなー。悪徳刑事にアクたっぷりの伊藤雄之助。熱血な正義の弁護士は、なんと千葉真一。まだ肉体派の片り…

木下恵介監督「夕やけ雲」2535本目

貧しい戦後の日本の街並みが、懐かしいような気がして(生まれる前だけど)ずっと見ていたい。とても美しく思えて。 賢くてけなげな、小さい妹は菊沖典子という子役。映画はこれしかKINENOTEに記録がありません。どんな大人になったんだろうな。主役の少年を…

寺山修司監督「書を捨てよ町へ出よう」2526本目

尖ってるなぁ。純粋だなぁ。このとき寺山修司36歳。父親が戦死するという経験は今の若者にはないけど、青森の田舎で育つことや、個人を無視した社会のシステムに取り込まれることの無情は今とそれほど変わらないんじゃないだろうか。でも、今の36歳もこんな…

本多猪四郎監督「ガス人間第1号」2501本目

まぁ私もジャンル問わずなんでも見る方ですよね。 この映画はタイトルだけ見ると、おどろおどろしい、今見るとちゃちい特撮とか使ったパニック怪獣映画かなと思うじゃないですか。でも冒頭は、きょとんとした顔で立ち上がった銀行員の面々をなめるカメラ。ず…

川島雄三監督「風船」2458本目

高度成長期の日本の、大企業で仕事や接待にいそしむやり手サラリーマンと、ホステス。 ナイトクラブではジャズ演奏の前で、ローラースケートを履いて踊りながら歌う(口パクだけど)、北原美枝。こういうショーを本当にやってたのかな。「太陽の季節」と同じ…

川島雄三監督「愛のお荷物」2405本目

子どもは神様からの授かりものではないのか、この映画では徹頭徹尾“お荷物”扱いで、妊娠した女性は「申し訳ありません!」と父となる男やたちに謝り続ける。逆だろ!時代が違う映画を見るときはわりと寛容なほうだと思っていたけど、これはなんとも。 といっ…