映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

マイク・リー監督「ターナー、光に愛を求めて」2129本目

ロンドンに滞在した間、テート・ギャラリー(今はテート・ブリテンと名前が変わった)に何度も行くうちにすっかりターナーのファンになってしまった私ですが、若い頃に自分を絶世の美青年として描いた自画像にだまされて、最近まで「素敵、ターナーさま」と…

イエジー・スコリモフスキ監督「エッセンシャル・キリング」2128本目

ヨーロッパ4カ国の共同制作。スコリモフスキ監督は非・ハリウッド的で挑戦的な映画を作り続けてる監督だと思うのですが、この映画を作った意図はなんだったんだろう。タイトルを訳すと「必要な殺人」。それは、アメリカ人を殺したアラブ系の男を殺すこと?…

高橋伴明 監督「愛の新世界」2127本目

楽しかった! 25年前の渋谷の女王様・ホテトル嬢・小劇団といった様々な人々の、欲や見栄や楽しみやモヤモヤ。小劇団系のいろんな人たちが入れ替わり立ち替わり出てるのも楽しい。 萩原流行もいいな・・・。クレジットされてないのにクドカンが出てるし・・…

瀬々敬久 監督「友罪」2126本目

この監督の作品には、「8年越しの花嫁」や「64」があり、「ヘヴンズ・ストーリー」やこの「友罪」がある。私は後者のほうが好きで、この映画は割と良かった。でもタイトルは「友罪」(友のためにおかす罪)じゃなくて「罪友」(罪を負ったものどうし)だよ…

リドリー・スコット監督「ブレードランナー ファイナル・カット」 2125本目

改めて、美術の素晴らしさに驚きますね。予算不足だなんて信じられない。最初はドン引きした「協力わかもと」のサイネージ(という言葉ができたのも最近だけど)も美しく感じる。未来的だけど落ちついたヴァンゲリスの音楽も素晴らしい。セットの安っぽさを…

チャールズ・デ・ラウジリカ 監督「デンジャラス・デイズ:メイキング・オブ・ブレードランナー」2124本目

ボリュームたっぷりだし、監督やメインキャスト、プロデューサー等々、この映画を作った主要な人たちがたくさん出てるので豪華です。普通にレンタルDVDに入ってる10分のインタビューとは違う。と言っても、それ以上に特に構成されてるわけでもない。 BSプレ…

濱口竜介 監督「寝ても覚めても」2123本目

演技経験のほとんどない人たちを使って撮った実験的な「ハッピーアワー」の監督じゃないですか。今回はきっちり作った映画ですね。 東出昌大はいまや定番の若手俳優だけど、相手方の唐田えりかの初々しいこと。こういう、地味めで清楚な子って韓国映画ではよ…

ジアド・ドゥエイリ 監督「判決、ふたつの希望」2122本目

レバノンとパレスチナの関係性なんて考えたことなかった。地図で見たらまさに隣り合ってるんですね。レバノンはイスラエルよりもシリアよりも小さい国なのに、どちらからも難民が流れ込んできていて、人口の10%に達してるという。現状に満足していない地元…

ナタウット・プーンピリヤ 監督「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」2121本目

面白かった。題材も新鮮だし、タイの若いエリートたちの奮闘ぶりは、悪気たっぷりに悪いことをしてるのに、どこか応援したくなる。 カンニングっていうこと自体は、試験というものがある限り、有史以来世界中で行われてきたことだと思うけど、舞台が日本でも…

スティーヴン・ソダーバーグ 監督「恋するリベラーチェ」2120本目

この映画ずっと気になってました。リベラーチェは実在したアーティストで、美しいものを愛し続けたキッチュな大スター。きらびやかな、イメージ通りの”ゴージャスなゲイの人生”を生きたのに、おおやけにはゲイであることは隠し通した・・・って隠せるもんな…

大林宣彦監督「花筐/HANAGATAMI」2119本目

戦前の画家のキッチュなコラージュ作品みたい。昭和の大監督の耽美的な作品群も思い起こさせる。だいいちDVDジャケットがなんて美しいんでしょう。役者さんたちの動きも言葉もすべて様式的で、何もリアルじゃない、お人形みたいな美しさ。 どうして、大監督…

マーティン・ブレスト 監督「ミッドナイト・ラン」2118本目

1988年の作品。80年代らしさが好きです。ベトナム戦争後の気さくさや気楽さがまだ残っていて、豊かになりつつあるアメリカ。ロバート・デニーロのフランクで切れ者で肝の据わった個性がフルに発揮されていて、とても面白かった。”相棒”となるチャールズ・グ…

マイケル・アリアス 監督「鉄コン筋クリート」2117本目

雑誌に連載してた昔、友達が絶賛してた。週刊誌はほとんど一色刷りだけど、この映画は全体的に黄・赤が強くて(空まで青じゃなくて黄色の強いグリーン)、複雑(描き込みが細かい)なので、立体曼荼羅をぐるりと見ているようで、紙と印象が違います。 近未来…

リュック・ベッソン監督「フィフス・エレメント」2116本目

タイトルだけを見て、ミヒャエル・ハネケ「セブンス・コンチネント」を思い出して、生きる気力を無くしそうになったけど、元気が出るような映画でした。「レオン」+「ブレードランナー」かな?ベッソン監督って、おかっぱで童顔で気が強くて戦闘能力の高い…

ブラッド・アンダーソン監督「ワンダーランド駅で」2115本目

綺麗な女優さんだなぁ、ホープ・デイヴィス。こんな風な、しなやかで扱いやすい金髪そ無造作に束ねて、自然体で愛想笑いとかしないで彼女みたいになってみたい。というような、今だけの思いつきで、こういう映画を見るのが楽しい。絵がとても地味で日常っぽ…

フレッド・ジンネマン 監督「ジュリア」2114本目

幼ななじみの大好きな女友達(ジュリア=ヴァネッサ・レッドグレイヴ)がレジスタンスに走る。自分(リリアン=ジェーン・フォンダ)は冒険が苦手な女だけど、彼女に会いたい、彼女の頼みなら聞いてあげたい、という気持ちで何回も国境を越える”運び屋”の役…

マリク・ベンジェルール 監督「シュガーマン 奇跡に愛された男」2113本目

面白い。私、こういう謎ってそうとう好きです。失われた名曲たち、誰も知らないミュージシャン。 答が存在する謎にたどり着けない、目の前に透明な壁があって、その先が見えてるのに行けない、そんな謎。頭が子どもみたいに純粋な「?」でいっぱいになって、…

カーティス・ハンソン監督「L.A.コンフィデンシャル」 2112本目

1997年といえば20年以上前の映画だ。どうりでラッセル・クロウもケヴィン・スペイシーも若い。不思議なくらいこの二人が似て見える。二人とも、若い頃のほうが強面のケンカの強い町のワルっぽいなぁ。お堅く見えるガイ・ピアースが「メメント」では激しい性…

今井正監督「武士道残酷物語」2111本目

なんて激しいタイトル。でも思っていたのと全然違う内容でした。 確かに、侍が農民を切り捨てるようなタイトル通りの武士の残酷さも描かれますが、不倫に対する罰だったり、会社組織の厳しさだったり、「武士」より後にも続いてきた序列とか組織とかの残酷さ…

イェジー・スコリモフスキー 監督「早春」2110本目

1970年のイギリス映画。(否、監督自身がDVD収録のインタビューで、アメリカと西ドイツの合作だと言ってる) 「エロティックな青春」系の甘酸っぱい映画かなと思って途中まで見てたけど、よく見ると「11ミニッツ」で私の度肝を抜いた老監督の監督デビュー…

ウィリアム・ワイラー 監督「おしゃれ泥棒」2109本目

原題は「How to Steal a Million」。邦題「おしゃれ泥棒」、いいですね。古き良き時代のファッションやトレンドも楽しめる映画、って見る前からワクワクしてきます。 おしゃれ泥棒っていう美容室が実家の近所にあったっけ・・・1980年代までその名前でやって…

スタンリー・キューブリック監督「シャイニング」2108本目

また見てしまった。初めて見たときは心底震え上がったけど、それから6年近くを経たいま、暗号文書を読み解くように、隅々まで見落とさないように見入っている私はさほど怖がっていません。シェリー・デュヴァルの表情や、のったりとした動きは、なんだか可笑…

冨永昌敬 監督「パンドラの匣」2107本目

太宰治作品が最近(といっても10年前あたりだけど)映画化されている。人間失格も、ヴィヨンの妻も、斜陽も。歴史は繰り返す。 染谷将太が、比較的アクの少ない「ひばり」と呼ばれる役どころの分、川上未映子の怪演が目立ちます。この人やっぱりなんか変わっ…

山下敦弘 監督「午前3時の無法地帯」2106本目

面白い・・・。同じビルの同じフロアの会社の人たちって、エレベーターで顔を合わせて会釈するだけなのに、妙にいろんな噂話が聞こえてきたりして、近くの他人?という不思議な関係ですよね。その人たちの間に何かが生まれたら?というラブコメです。 専門学…

岡本喜八監督「大誘拐 RAINBOW KIDS」2105本目

なんか懐かしい雰囲気。昭和のころのテレビの娯楽ドラマっぽい。この頃はまだ、木造の昔ながらの納屋のある農家もたくさんあったのかな。 おばあちゃん&誘拐団「レインボウ・キッズ」が主役だと思うんだけど、ジャケットは刑事を演じた緒形拳ひとり。実態は…

ブルノ・ユラン 監督「ファイアbyルブタン」2104本目

アート映画というジャンルになるらしい。冒頭に現れるのは、ルブタンのブーツを履いた半裸の美しい衛兵たち。 優雅な行進をしていても、正直、華麗なる靴より、ぷるぷると揺れるおっぱいの方が気になります。。。次は前髪ぱっつんの黒髪の美女によるストリッ…

シドニー・シビリア 監督「いつだってやめられる 闘う名誉教授たち」2103本目

満を持して第3作=最終作。 いつも音楽に勢いがあっていいね。音楽だけは英語で、欧米というより英米の新しい楽曲が時々大きく流れる。それ以外の場面は基本、音楽なし。この感じが、ずっとムード音楽を流すことで映像のムードを決めてしまうアメリカや日本…

シドニー・シビリア監督「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」2102本目

「いつだってやめられる」シリーズ第2作。最初の作品は、食い詰めた研究者たちが思い余ってスマート・ドラッグの研究開発販売に乗り出す、という素晴らしい設定の愉快な映画でした。続編がどうくるか?と思ったら、再びの「なるほど感」、司法取引を行なっ…

品川ヒロシ監督「サンブンノイチ」2101本目

6年も前の映画か。藤原竜也がすでに、おっさんっぽさを身につけている。 「悪魔のエレベーター」は、書店の店頭の熱の入った手書きポップにほだされて買ってみたら、大忙しのどんでん返しだらけで盛り上がりました。同じ人の原作をお笑いの人が演出したのが…

ローラン・カンテ 監督「パリ20区、僕たちのクラス」2100本目

フランスの映画だなぁ。さまざまな人種や生活の違いがごちゃごちゃにいる中で、少年少女たちと教師が反発しあって、でもそこにい続けて、できれば少し近づけないかと、心のどこかで感じてる。そういう場面を、どこまでリアルにドキュメンタリーのように作れ…