映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

トニー・リチャードソン 監督「トム・ジョーンズの華麗な冒険」3024本目

むかしの映画で18世紀~19世紀を舞台にしたものって、賑やかだけどそれほどきらびやかでなくて、ちょっと入り込みづらい。この作品が、制作当時の1960年代のロンドンを舞台にリメイクされてたら、きっと「アルフィー」みたいな、今見るとまさにオシャレ!な映画になってたかもしれないんだけどなー(←まったくもってワガママだな私は)

この作品は、トム・ジョーンズという一介の捨て子が、女好きする性質で次々に身分の高い女性と恋愛を重ね、一方それを妬む人たちから足を引っ張られたりする。男に襲われて身を守ろうとして相手を死なせてしまい、あわや絞首刑…というところで助けが来る。巻き込まれ型だけど根に持たない、気のいいモテ男の生涯って感じかな。

ちょっと痛快だけど、今見るとあんまり名作って感じでもない。そういうところが、「時代」の違いなんでしょうね。

 

フランソワ・トリュフォー監督「華氏451」3023本目

U-NEXTでリメイクが公開されたり、「100分de名著」で取り上げられたりしたばかりなので、見てる人も多いかな。「~名著」講師が番組で「映画が素晴らしかったので研究を始めたが、読んでみたら原作より映画の方がよかった」とぶっちゃけトークをしてたくらいで、この作品の結末ほんと好き。まるで秘密結社とか無縁な森の人たち。私だったら何て名乗りたいかな…

彼らの出会いは、原作では夜遅く屋外だけど、この映画では空中を走るモノレールの中。何もない田舎に未来施設がぽつんとあるような。(このモノレール実物だよな。ググったらイギリスには懸垂式モノレールは存在しないようだ。探しても見つからなかったので試験路線かなと思ったら、この映画のWikipediaの解説に書いてあった。フランスの)

ジュリー・クリスティってもっと女っぽいイメージを持ってたけど、割とごつい。(好きだけど、特に今の彼女)

本の家の中で自分で点火する老婦人とか、おおむね原作に沿ってる気もするけど、クラシスはこの映画では学校の先生で大人なのが違うな。とはいえ、この作品で「人間らしさ」を象徴してるのが彼女であることは間違いなく、映画「マイ・ブックショップ」で町の小さな書店を独力で維持しようとする主人公の女性は「華氏451」のクラリスのような女性だから、彼女の老後の姿を今のグレイヘアのジュリー・クリスティが一瞬だけ演じたんだろうな(全編のナレーションも彼女)。

イギリスのなかで、そうやって本や人間らしさをいとおしむことが、脈々と受け継がれていることが何より素敵なのでした。 

華氏451 (字幕版)

華氏451 (字幕版)

  • ジュリー・クリスティ
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バリー・レヴィンソン監督「ダイナー」3022本目

今こういう映画見る人少ないだろうな、という作品ばかり見ている。

公開は1982年、ミッキー・ロークが俳優人生最高に二枚目でケビン・ベーコンは最高におバカでみんな若い。「See you at the Diner, OK?」ってカッコイイよなぁ。いつもの店で、あとでな。(でもこういうダイナーってマルホランド・ドライブとかベイビー・ドライバーとかのおかげで、今に恐ろしいことが起こるぞ、と思ってしまうのが不幸だ私は)

舞台は1959年で、結婚してる仲間もいるから、20代後半くらいの設定かな。やってることは70年代の若者と変わらない。その頃の流行もあるんだろうけど、彼らはわりと身なりがきちんとしてる。

こういう、ちょっと大人が主役の青春群像劇ってアメリカのTVドラマみたいだ。ミッキー・ロークが明らかに浮いててケビン・ベーコンはちょっと幼すぎて、他の男たちはあんまり印象が強くないので、なーんとなくちぐはぐな感じがする。当時の流行もあるんだろうけど、みんな身なりがよくてお坊ちゃんたちがつるんではしゃいでる感がある。レコードのB面がどうだこうだ、とか、なんか男どうしの内輪受けの世界。

監督は自分のふるさとボルチモアに思い入れを持っていたらしい。この映画は彼の青春なんだろうな。女性は…「あの女と寝たらxドル」という賭けの対象ですから、この映画を見て共感する女性は少ないだろうな。(かといって、女同士の友情を描こうとすると、とたんに騒がしいビッチ映画になってしまう気がする)

映画のセリフと男女のやり取りが一致するとか、鏡のはしに会いたくない男が映りこむとか、こまかい演出に凝ったところがあります。

この映画、当時は「イケてる奴らがつるんでる感じがカッコイイ」って感じだったのかな。今見ると、それほどピンとこなかったですかね…。

アルバート・マグノーリ監督「プリンス パープル・レイン」 3021本目

これ実は見てなかったんだ。VODは音楽ものの作品が多くてありがたい。当時プリンスの良さはあまりわからなかったけど、あれほど世界を沸かせて、ふっと消えるようにいなくなってしまったアーティストのことは知りたいです。

王子様のような服装、やけにきれいな肌、鼻の下のヒゲ、大きく盛り上げた髪型、黒く縁取った丸い目。どれも、私だったら選ばない風貌で、生理的に難しい感じだったんだよな。でもこの作品の中では、たまにしゃべると意外と素直な感じだし、もしかしたら身近にいたら魅力的だと思ったかもしれない。

アポロニアさんキレイだなぁ。この作品に出てくる男はみんなギラついていて、女はみんな胸を半分もうはだけてる。ストーリーはMVにおまけでついてるストーリーみたいだけど、楽曲は本物だし、プリンスの演技が多少なりとも見られてとても興味深かったです。 

 

 

青山真治監督「空に住む」3020本目

多部未華子が両親を急に亡くしたかわいい編集者で、岩田剛典が人気急上昇中のイケメン俳優で、二人とも「誰もが憧れるタワーマンション」に住んでて、エレベーターで出会ってなんとなく付き合い始める…韓流ドラマか?最近は日本のドラマでここまでベタな設定はないだろう。

原作者はEXILEとかの歌詞を書いているLDH所属の作家なんだ。制作会社もLDH傘下。岩田剛典を出して動員して、主題歌を売るという企画映画だった。

困ったな、どう見ればキネ旬ベストテンだなぁと実感できるんだろう。これ映画館に見に行ったら腹立っただろうな(短気なもので、すみません)インタビューの質問項目がまた、つまらない。

多部と岩田はいつも端正で二枚目すぎるので、中盤から多少、二人のくせのある面を出してくれて、それだけは良かったかな。

エンディングになんとかSoul Brothersの歌が流れるのが一番ツラかったなぁ。 

空に住む

空に住む

  • 多部未華子
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ハニ・アブ・アサド 監督「オマールの壁」3019本目

「パラダイス・ナウ」の監督の作品。あの作品は見る前かなりビクビクしてたけど、恐ろしすぎない演出でした。これもそうだな。ただ、恐怖をあおる演出じゃないとはいえ、若いオマールの巻き込まれ度は「パラダイス・ナウ」にも匹敵します。彼、なんも悪くないんですよ。何一つ、人を傷つけたり国家を危険にさらしたりなどしてない。ひたすら一人の女性を愛し、仲間や家族を思っていただけ。描き方が淡々としているから、最後まで冷静に見られるけど、終わってからズンと胃にくるような重さがあります。

恋人に会うために上ってはいけない壁を上った。多分、素直でまっすぐな人が利用されるんだ。そこはどの国のどの地域で何をしている人にも普遍的にいえることだから、すごく重いんだな。彼には銃を撃つ資格というか、必然性があった。という気持ちを抑えられないです。 

オマールの壁

オマールの壁

  • アダム・バクリ
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ジャック・ドゥミ監督「ローラ」3018本目

アヌーク・エーメの若かりし姿。彼女が「男と女」で見せる「んふ」っていう笑いが素敵だったのですが、この作品ではちょっぴり若すぎるかな。日本のタレントのローラに似てるかも、目鼻立ちが大きくて話すと子供っぽい感じが。この作品ではむしろ、少女セシルを演じてるアニー・デュペルーがすごく可愛いくて、フランスの女の子ってオシャレで素敵~と思ったけど、この子これ以外に映画には出なかったのね。

ジャック・ドゥミといえば「シェルブール」と「ロシュフォール」じゃないですか。日本の女子全員がため息をつく憧れの世界ですね。好きになった人と結ばれたり、ふられたり、どの恋も甘酸っぱく少し心を満たしてくれる。

それにしても逆光の室内の映像が多い。自然な光を生かしたいのかな。ロマンチックな作品だったけど、「シェルブール」と「ロシュフォール」の色彩を思い出すと、やっぱり「カラー前夜」って印象だったかも。

ローラ (字幕版)

ローラ (字幕版)

  • ジャック・アルダン
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