映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

鈴木清順監督「夢二」2972本目

「陽炎座」に続いて見ると、濃いですねー。なんというか…雅叙園の蔵の中の世界、って感じ。どろりとした妖艶な美の中に耽溺しながら、楽し気にちょっと狂っていく。それが3本続くと、もうストーリーとかどうでもいい気がしてくる。全体を通している美しさは、夢二とはそれほど関係なくて、鈴木清順っていう人の妄想の世界なんだよな。妄想を形にできるのって才能だ。

毬谷友子って、江戸時代の怪しいほほえみを浮かべた美人画の人に似てる気がする。(画家の名前はわからない)笑顔が張り付いたようでちょっと得体が知れないふうなんだ。この映画には、ぴったりはまってますね。

広田レオナは狂言回しなのかな。パワフルで愛嬌があります。宮崎萬純は、透明な美しい板絵みたいなところが、宮沢りえっぽくもある。

しかし何より、一番美しいときの沢田研二と玉三郎が共演してるのが、今となっては得難い見どころだなぁ。

それはそうと、「何度も出てくる湖に舟を浮かべた場面」 は「13日の金曜日(1980年)」がネタ元ですよね。ですよね??

夢二

夢二

  • 発売日: 2015/04/15
  • メディア: Prime Video
 

 

サルヴァトーレ・サンペリ 監督「青い体験」2971本目

頭使わなくていい映画が見たくなって、これを選んでみました。

この監督はこういう映画ばっかり撮ってたみたいだなぁ。セクシー・コメディっていうのかな。家政婦ラウラ・アントネッリ、キュートですね。 ぱっと見、セクシーというより可愛い。ヴィスコンティ監督の「イノセント」で愛のさめた妻の役をやったのは、この映画のわずか2年後。

コメディ…のはずだったんだけど、思春期の次男がだんだん、父と婚約した家政婦の彼女をいたぶるようになってきます。泣いちゃったらもう、コメディじゃないよなぁ。。。

なんでそういう成り行きになるかというと、次男ジーノの視点だから。頭がエロでぱんぱんになってる少年の欲望は攻撃性を帯びる。家政婦のほうは、せっかくの結婚話をなんとか実現させるために、次男問題をなるべく穏便に解決しようと、ちょっとくらいなら…と思っている。(甘いのではないかい?エスカレートしたらどうする?)

監督は14歳か!?というくらい思春期の攻撃性をわかってる、という気がするんだけど、どうでしょう?(でもこういう、憧れと紙一重の攻撃性がイジメにもつながるんだよな。次男には早く理性のほうも大人になってほしい)

「いい子だと思ったけどブタだった!殺してやる!」と言って力いっぱい抵抗する家政婦。可愛い坊やに恋の手ほどき、みたいな映画だとばかり思ってたら、軽いバイオレンス映画か?と思ったら、家政婦のほうもそんな「プレイ」にノリノリで、はしゃいで家の中を逃げ回ってる。この二人、精神年齢が同じ…。

無事父と家政婦は結婚式を迎えるけど、この新婦、この先ずっとこのまま貞淑な妻でいるわけないよな、という不安を周囲に与えつつ、イタリアだからいいか…。

疲れた頭にはちょうどいい娯楽映画でした。

鈴木清順監督「陽炎座」2970本目

これもずっと見たかった。癖のある役者さんがたくさん出てますね~。最初に流れるキャストの名前を見てると期待がふくらみます。しかし長いな。そして難解。でも難解な映画って好きですよ、監督の大妄想世界という感じがして。妄想こそ個性。

若き劇作家がパトロンの罠にかかって、彼の女たちと心中する道行へといざなわれる…というのがストーリーだけど、ミュージックビデオみたいに、考えずに映像美術を楽しむ作品だと思います。綺麗だし、血が流れてもおどろおどろしくなくて耽美的。今なら蜷川実花の映画とかと同じジャンルといってもいいかも。

つづいて「夢二」も見てみよう。

陽炎座

陽炎座

  • 発売日: 2015/04/15
  • メディア: Prime Video
 

 

ビリー・ワイルダー監督「あなただけ今晩は」2969本目

 ビリー・ワイルダーなのでヒネリがあるかも?と構えそうになったけど(「失われた週末」「サンセット大通り」を思い出して)、「フロント・ページ」を思い出して緊張がほぐれました。第一、シャーリー・マクレーンとジャック・レモンだから100%コメディだ。

この頃のシャーリー・マクレーンって可愛いですね~。いわゆる美人ではないけど、くるくる変わる表情、トパーズみたいなキラキラ光る瞳。スリムで元気で、一緒にいると自分まで明るくなりそうな女の子です。(メイクと服と髪型はヒドイけど)ジャック・レモンは、真面目でお人よしの役がぴったりだな。人はいいのにインチキで、適当なことばっかり言ってるバーのマスター、ひどい(笑)最後にはちゃんと助けになるようなことをやってあげるんだけど、だったら最初から助けてやれ~。

アル中のマルチーズの「コケット」最高。脱獄してきたのに、取っておいた警官のときの制服を出してきて、取り調べ隊に交じってごまかす場面は、お見事。元々がフランスの舞台劇だったなんて思えないハマリっぷりでした。

あなただけ今晩は [DVD]

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  • 発売日: 2005/09/30
  • メディア: DVD
 

 

ダニエル・ロアー 監督「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」2968本目

やっと配信が始まった!これ映画館に行きそびれてたやつ。

ザ・バンドがいかに素晴らしいバンドで、なぜロビー・ロバートソンが孤立してバンドを解散しなければならなかったか…他のメンバーはロビーが勝手にやめた、というようなことを言ってたこともあったけど、それだけじゃないと思ってたので、ロビーの言い分を一度きちんと聞かなきゃならなかった。彼だけが音楽の第一線に生き残って、依存症にもならずにちゃんとお金も稼いできた。でも、バンドを続けていくより辞めたほうが、みんなが今までのみんなに戻れるって思ったんだろう、と思ってたら、だいたいそんな話だった。つまりこの映画はロビーの釈明ともいえる。彼ももう77歳だって。彼がザ・バンドを語るのも、そろそろこれで最後の機会かもしれない。

この作品では、ロビーとリーヴォンの長年の関係について時間を割いて語られていて、ツアー中に亡くなったリチャード・マニュエルや突然死したリック・ダンコについては語られていなかったのは、よかったんじゃないかな。悲しい話ばっかりにならないほうが。

ほんとに、こんないい音楽はない、こんなにいいバンドはなかった。彼らがバンドを組んで、「ラスト・ワルツ」で頂点をきわめる世界一のアンサンブルに至ったというのは神様がもたらしたすごい出来事で、彼らの音楽を聴くことができてよかったのだ。私はとっくに解散して何十年もたった後で突然好きになって聴き始めたので、そのときすでに何人か亡くなっていたんだけど、レジェンドという感じではなくて身近で良い音楽って思ってたから、亡くなっていたことがすごく悲しい。(プレスリーとかチャップリンが故人なのは悲しくないのにね)

これ、映画館で見たら大泣きして隣の人に迷惑かけたかも。行かなくてよかったか!?

ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった(字幕版)

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  • 発売日: 2021/05/01
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ロブ・ライナー 監督「プリンセス・ブライド・ストーリー」2967本目

「コングレス未来学会議」に続いて、ロビン・ライトのデビュー作を見てみる。

つまらないロマンチック・コメディかなぁと思って見始めたら、なんかちょっと変だ。この年代にしては年を取りすぎているピーター・フォーク(老けメイク)がお祖父さん役。彼が読んで聞かせるおとぎ話の中の美しい少女がロビン・ライト。「恋におちたシェイクスピア」のときのグウィネス・パルトロウみたいに初々しくて透明です。相手役の少年ケアリー・エルウィスも美しい。でも…この映画は、何もかもが作り物っぽくて、モンティ・パイソンのアメリカ版みたいだな。あるいは「LIFE」みたいなコメディ番組の中の場面みたい。読み聞かせられる子どもの気持ちで見ると、懐かしいようなストーリーでありながら突っ込みどころ満載。日本でいえば「日本むかしばなし」のちょっと変なお話みたいで、この作品を子どもの頃に見たらキャッキャ喜んで、大人になってからもまた見たくなる、って感じかなー。

えっ音楽はマーク・ノップラー(ダイアー・ストレイツの。すぐ変換できないくらい昔のバンドだけど)。

プリンセス・ブライド・ストーリー

プリンセス・ブライド・ストーリー

  • 発売日: 2017/11/10
  • メディア: Prime Video
 

 

アリ・フォルマン監督「コングレス未来学会議」2966本目

タイトルだけ見ると、なんとなくテリー・ギリアムの作品っぽくないですか?

前半は普通に見てたけど、CGデータ化された20年後にロビン・ライト(そのままの名前と姿で登場。「マルコビッチの穴」みたい)が砂漠で開かれる「未来学会議(コングレス)」への入口を通り、薬を口にしたところからアニメーションになります。カラフルな世界で虹色の魚が空を飛んだり…今敏の作品みたい。

肉体をスキャンしてCGキャラクターを作るところまでは理解できるけど、薬を飲むと特定の人のキャラクターになるってところに飛躍があって、6人目のロビン・ライトとしてコングレスに入場したあとの成り行きはリアルなロビン・ライトが薬を飲んで自分でみた幻覚の世界なのか、なんなのか、よくわからないまま、まあいいや、と物語は進んでいきます。

ニューヨークはシンガポールのガーデンズ・バイ・ザ・ベイみたいな熱帯庭園になってる。これ描くの楽しかっただろうな…。ロビン・ライトがそのまま登場したりするから、オリジナル作品かなと思ってしまうけど、原作は「惑星ソラリス」と同じ、スタニスワフ・レム。本のほうの感想を見てみても、この映画の原作という気がしません。

「解毒剤」で戻ってきたあとのリアルで荒れた世界…この感じ、「戦場でワルツを」の最後の最後の実写映像みたいで、なんだか急にしんみりしてしまいます。 アリ・フォルマンの語り口には、言葉にならない不思議な説得力がありますね。

さて、この映画の中でも語られていた「プリンセス・ブライド・ストーリー」を見てみるかな…。

コングレス未来学会議(字幕版)

コングレス未来学会議(字幕版)

  • 発売日: 2016/02/10
  • メディア: Prime Video
 

 

 

進んでいきます。