映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ミヒャエル・ハネケ監督「カフカの『城』」1281本目

不条理劇って、悪い夢みたいだな。 でも、ハネケ監督の作品には、その後もずっとどこかこの"悪い夢”みたいな感じが続いてる。 こういうのを舞台で神の視点で演出しつづけていたので、もっと驚きを!もっと胸にガツンとくるものを!とエスカレートして今に至…

ヴィム・ヴェンダース監督「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」1280本目

ヴェンダース監督らしい、静謐な美しい映像によるドキュメンタリー。写真家サルガドの作品世界をたどる映画なので、静止画作品をたくさん使っていて動く絵は少ないのですが、監督自身によるナレーションが全編に流れ、途中、写真とオーバーラップする形でサ…

パトリシオ・グスマン監督「光のノスタルジア」1279本目

珍しく、途中寝てしまったので正確な感想が書けません、すみません・・・。チリのアタカマ砂漠で、過去に独裁政権下で埋められた遺体を探し続ける人々。同じ土地に、地上にいくつかしかない天体観測に最適な場所を求めて集まってくる人々。 2つのドキュメン…

ミヒャエル・ハネケ監督「タイム・オブ・ザ・ウルフ」1278本目

”ディストピアもの”と呼んで良いでしょうか、具体的に語られない事情で食料の供給がほとんど断たれていて、人々は生き延びるために日々の生活の糧を争っている、という世界。 冒頭は一見、私たちが暮らしている世界の一部のように見える形で始まります。家族…

ベン・シャープスティーン、 ハミルトン・ラスク監督「ピノキオ」1277本目

監督名を出してもわからないと思うけど、ディズニーアニメのピノキオです。なんて美しい色彩、なんて可愛い子供や動物達の表情。何も知らずに見たら、どこかの立派なアニメ製作会社の最新作だと思ったかも。1940年の公開ですって!戦前ですよ。白雪姫が1937…

フェデリコ・フェリー二監督「サテリコン」1276本目

しまった、またフェリー二借りてしまった。わりと苦手なのに。 しかしこの悪徳にまみれた感じ、意外と良いかも。現代的なファッショナブルな男女よりわかりやすい。 彼の描きたい背徳の世界ってのは、基本はこういう獣の世界なんだな。やっとわかった。 いつ…

オリヴァー・ストーン監督「7月4日に生まれて」1275本目

1989年の作品。オリヴァー・ストーン監督作品は「JFK」しか見てないけど、あれが1991年。それより前の、トム・クルーズがまだ美少年といえた頃の作品。ここ2、3年で浴びるほどアメリカの反戦映画を見てきたので、刺激を受けることはもうありません。むしろ…

マーヴィン・ルロイ 監督「哀愁」1274本目

1940年の作品。 原題はWaterloo Bridge。イギリスが舞台のアメリカ映画です。 美しい美しい、悲しい悲しい物語。昔の映画の清楚さってハンパない。バレリーナのマイラを演じる27歳のヴィヴィアン・リーが、可憐でかわいらしいこと。友人キティ役のヴァージニ…

フェデリコ・フェリーニ 監督「青春群像」1273本目

1953年、今から53年も前の作品。フェリーニ監督の比較的初期の作品だそうです。 この監督の作品って、女あしらいがうまい自分を悲観するナルシストの中年男性が中心になってる印象があって、どうしても反感をおぼえてしまうのです。そういう男たちを映画でさ…

アラン・アーカッシュ 監督「ロックンロール・ハイスクール」1272本目

1979年の映画。 冒頭から、ゆるいギャグ、甘い演技、でもちょっとしゃれたアメリカのローカルCMのような明るさ。 タイトル曲に乗せて、振り付けもなしにデタラメに体を動かす、アイシャドウ濃すぎる、髪のカール強すぎる女子高生たち。 B級だ、B級映画以外の…

ビリー・ワイルダー監督「アパートの鍵貸します」1269本目

1960年の作品。 この頃には、色を使わないエンタメ映画の構成、カメラワーク、光と影といった映画のフォーマットや技術はかなりの完成度に達してたんだな、と思いました。シャーリー・マクレーン(可愛い。いやもう可愛い。)演じるフランの気持ちの揺れなん…

ダミアン・ジフロン監督「人生スイッチ」1271本目

これはアルゼンチンの監督の映画だそうです。やっぱり中南米の映画監督って好き。 感情はこんな風にどかーん!と放出したほうがいい。出さないと鬱屈して何も解決しないままになっちゃうんだよね。いつも熱くて、常にやりすぎちゃう人たち、どうしようもなく…

ロイ・アンダーソン 監督「さよなら、人類」1270本目

変な映画だったわ〜。 スウェーデン作品か。アキ・カウリスマキ作品のような静止画感、これが北欧ってやつか? ギンレイホールでもう一つの「人生スイッチ」と組み合わせるために、同様のオムニバスコメディのこの作品を選んだのかな。しかし体裁が同じでも…

原田眞人 監督「駆込み女と駆出し男」1268本目

戸田恵梨香が主演した、2012年のテレビドラマ「書店員ミチルの身の上話」をたまたま見返していて、この子最近はどうしてるのかな?と思ってたら、この映画で主演してるじゃないですか。写真だけ見たら坂井真紀かと思った。ちょっとそっち方面へ向かってます…

ロバート・ゼメキス 監督「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」1267本目

1989年。 こんなエンタメ作品で、これほど伏線張りまくり、きちんと拾いまくる作品は他にないですね。 未来といっても去年のことで(今日がこの映画の未来の日だ!って騒ぎましたね)、ふしぎとリアルな未来描写もあったりしました。理屈はいいですね、ほん…

ジャン・リュック・ゴダール監督「パッション」1266本目

イザベル・ユベールだ!ミシェル・ピコリだ!と思うくらいはフランス映画も見てるけど、ゴダール作品は「気狂いピエロ」と「ベトナムから遠く離れて」しか見てなかった。かなりの初心者です。この映画は、映画で名画を再現しようっていうコンセプトについて…

ジュゼッペ・トルナトーレ 監督「ニュー・シネマ・パラダイス」1265本目

前にいつ見たのか覚えてないけど、イタズラいっぱいの可愛い坊やの笑顔、冒頭やラストなどよく覚えてます。 久々に見てみたら、最初からすごくヨーロッパっぽいなぁ!風景も、色合いも、人の表情も、ハリウッドと全然違う。どことなくノスタルジックに感じる…

ロブ・ライナー 監督「ア・フュー・グッドメン」1264本目

1992年の作品。一見、トムクルーズとかデミムーアとか当時のスターが出てて、下っ端の兵隊を裁判から守り悪徳将軍を弾劾するという、正義の映画に見える。しかしこの場所の名前をわたしたちはその後起こった別の事件で知ってしまっていて、昔からひどいこと…

ガウリ・シンディー 監督「マダム・イン・ニューヨーク」1262本目

面白かった。じわっと満足感があって、幸せなきもちになれる映画でした。 主役の「古風な主婦」を演じたシィリデヴィが綺麗で可愛い。 彼女に一目惚れするフランス人シェフも素敵よ。 サリーを着たインド女性が、ニューヨークでサリーのまま暮らして、英語が…

チョン・ジュリ監督「私の少女」1263本目

これはまた、ズーンときますね。 韓国のひとたちは、心が深い。感情が深い。と感じてしまいます。 ペドゥナ演じる漁村の駐在所長も、孤独を持ちながら誰にもそれを見せずにいる。 天才的なキムセロンが演じるドヒは、”不幸な家庭に生まれて虐待を受け続けて…

ロバート・ゼメキス 監督「バック・トゥ・ザ・フューチャー」1261本目

面白かったです。こういう楽しい映画っていいね! 博士ってアダムス・ファミリーのフェスターだね、と今日気づきました。この人の愛嬌いっぱいなところ、好きだなぁ!

ウベルト・パゾリーニ 監督「おみおくりの作法」1260本目

え、この映画号泣しませんでした?(←ほかの人たちの感想を読みながら) なんか、北のほうのヨーロッパの、ぽーっとしてほんわかした映画で、オチがなかったり薄いハッピーエンドだったりするんだろうな、と思って見ていたので、ラストの重さに泣けて仕方あ…

ガブリエレ・ムッチーノ 監督「幸せのちから」1259本目

いいお話や。アメリカ人ってのは、苦労とか貧乏とかを隠し通して、まるで何もないみたいに平気な顔をしたがる人たちなんだな。強がってるうちに本当になってくる。 この映画のモデルになったクリス・ガードナーの実際の人生は、これとは違う部分もたくさんあ…

マーティン・スコセッシ監督「ケープ・フィアー」1258本目

「マイ・インターン」を見た友達と、「デニーロすっかり好々爺になっちゃって、あの恐ろしい殺人鬼の映画と同じ人と思えないー、あれ何だっけ何だっけ、そうそうケープ・フィアー」って会話をしたので、見てみました。(笑)確かに、怖い。悪い。「タクシー…

臼坂礼次郎 「おさな妻」1257本目

1970年作品。 お間違いなく、この映画はヌード映画ではありません。(私も誤解してました) しかし、関根恵子ってなんて美しいんでしょう! 端正で清潔で、完璧な果実のような少女ですね。 結婚相手の新克利も落ち着いたいい大人の男性だし、クラスメイトの…

濱口竜介 監督「ハッピーアワー」1256本目

2015年のキネマ旬報ベストテン、日本映画第3位ということで見に行ってきました。 12時50分から19時近くまで、3部構成3900円という大作なのですが、長いとか退屈という感じはあまりありません。4人のアラフォー女性を中心とした人たちの関わりようが、リア…

パオロ・タヴィアーニ 監督「サン・ロレンツォの夜」1255本目

1982年のイタリア映画。 第二次大戦末期の、終戦前夜、イタリアの”つま先”にある小さい村がドイツ軍の攻撃を受け、村人たちは村を後にする。逃げ惑う彼らが逃げ込んだ教会が爆破され、未来を担う妊婦もやられた。それを6歳の”わたし”は見ていた。語り口がと…

サーシャ・ガヴァシ 監督「ヒッチコック」1254本目

面白かった。 しかしアンソニー・ホプキンス。彼がヒッチコック役をやったことは知ってたはずなのに、いつものホプキンス的なアク(ex.レクター博士)がまったくありません。でも、ヒッチコックにも見えない(笑)。え、これ誰?という気持ちで見てしまいま…

ジョン・シュレシンジャー 監督「真夜中のカーボーイ」1253本目

冒頭で、テンガロン・ハットとカウボーイ・ブーツのテキサス男が「ニューヨークに行くんだ。金持ちの女どもが男を買うっていうぜ」・・・ああ、バカだ。バカが主人公の映画だ。と喜んだのは最初のほうで、ジョーの回想が入り乱れて前後して交錯するあたりか…

デヴィッド・リーン監督「インドへの道」1252本目

とうとう来ましたよ! この年末に初めてインドに行ったことだし、大学の英文科でE.M.フォースターのゼミにいたときにちょうどこの映画が公開されたことを思い出しつつ、いろんなことを思い出しながらじっくり鑑賞しました。先に原書を読んだもんだから、主人…