映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

フリッツ・ラング監督「ブルー・ガーディニア」3464本目

1953年にラング監督がハリウッドで撮った作品。 ロマンチックな音楽のオープニング、主題歌はナット・キング・コール、映画の黄金時代って感じです。主演はアン・バクスター、登場する女性は三人ともブロンドでキュート。舞台劇みたいにちょっとしゃれた会話…

フリッツ・ラング監督「無頼の谷」3463本目

今週はいつものU-NEXTをオフにして、Amazonプライムのウォッチリストに溜まった作品を片っ端から見てみます。これはディートリッヒ様がなんとフリッツ・ラングが監督した西部劇だそうです。三つ巴。ディートリッヒ&ラングというドイツ勢がアリゾナの砂漠で…

BJ・マクドネル監督「スタジオ666」3462本目<KINENOTE未掲載>

デイヴ・グロールが原案で、フー・ファイターズがアルバムを録音するために洋館スタジオ入りする設定のホラー映画、と聞いて、すぐに見てみることにしました。ニルヴァーナではキレキレのドラムを叩き、カート・コバーン亡き後はギター&ボーカルで自分のバ…

シアン・ヘダー 監督「CODA あいのうた」3461本目

フランスのオリジナル版を見ていいなーと思って、それで満足してたんだけど、アメリカ版も評判がいいのでアマプラ無料に下りてきたところで見てみることにしました。 オリジナルでは家族の仕事は漁業じゃなくて酪農だったんだな。そしてアメリカ版のタイトル…

永井聡監督「キャラクター」3460本目

<ネタバレあります!> エンドクレジットの中に「企画 川村元気」とあって納得した。この映画、キャラクター設定はいいと思うんですよ。必要以上に残虐なのも、最近の少年マンガはみんなそうだから(鬼滅の刃でさえ)驚きはない。でも、刑事が何の前触れも…

フランシス・フォード・コッポラ監督「ディメンシア13」3459本目

<ネタバレあります> ディメンシアって何だっけ、とつい調べてしまった。認知症だ。わずか13歳で死んだ子なのに?(最後まで回収されなかったので、このタイトルはヒントや伏線ではなかったらしい) この映画は、悪い妻が主役として偽装工作を行ったりして…

ポール・トーマス・アンダーソン監督「リコリス・ピザ」3458本目

ロマンチックさが皆無な恋愛映画。 リコリスといえば日本でぜったい売れないフレーバー、それがピザになったらどんなにマズいだろう?アメリカでは大人気らしいので、甘酸っぱい青春のイメージなのかな。 主役のルックスが平凡で、性格もしょうもない(とい…

フレデリック・ワイズマン監督「ボストン市庁舎」3457本目

4時間半あれば羽田から台湾まで飛べちゃう。映画館だとその間、水も食事も出ないし体勢を変えることもままならない。家で画面を前にしても、いろいろ済ませる準備が要る。映画館で見た方々に敬意を表したいです。(「ハッピーアワー」はなかなかソフト化され…

レイナルド・マーカス・グリーン 監督「ドリームプラン」3456本目

原題は「King Richard」。「ドリーム」(「私たちのアポロ計画」から改題、原題は「Hidden Figures」)を思い出します。これは小さい子どもにも見てほしい映画だと思うので、わかりやすい邦題にする必要があったんだろう。 ビーナス&セリーナの怒涛の活躍を…

ジャスティン・カーゼル 監督「ニトラム」3455本目

オーストラリアのタスマニア島は、私が老後を過ごしたい場所No.1。(というか叶わない夢)英国の流刑地だった歴史を持つオーストラリアの中でも、特別過酷な刑務所があったのがタスマニア島の端っこの半島にあるこのポート・アーサー。今は穏やかで優しい丘…

ケネス・アンガー監督「マジック・ランタン・サイクル」3454本目

誰だこの人は?サムネイル画像に見覚えがあって気になったので見てみましたが、この短編映画集の中で一番古い「花火」は1947年って戦後すぐじゃないか?カルト的なにおいがするけど95歳で健在。Wikipediaで解説を読んでも謎だ。KINENOTEでもこの映画の解説は…

ケリー・ライカート監督「ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画」 3453本目

ライカート監督作品って、巻き込まれがたのアンチヒーロー(ミシェル・ウィリアムズがその典型)がいつも主役というイメージがあるので、”加害者”が主役って意外。 犯罪の場面そのものが描かれるのも珍しい。ジェシー・アイゼンバーグ演じるジョシュが、普通…

ケリー・ライカート監督「ミークス・カットオフ」3452本目

Cut offは「ショートカット」=近道ってことだな。ミークの近道。 ある一家が荒野で道に迷っているところから始まる。道案内に雇ったミークという男のうさん臭いこと。まるで目的地どころか、水や食料のあるところにもたどり着けそうにない。馬も人間も飢餓…

ケリー・ライカート監督「リバー・オブ・グラス」3451本目

<ネタバレあります> フロリダが舞台のインディペンデント映画といえば、カラフルな「フロリダ・プロジェクト」を思い出すけど、こっちはまったく無彩色で、晴れていてもなんとなくぱっとしない。 「草の川」と呼ばれているのは、フロリダ半島の東岸突端近…

ケリー・ライカート 監督「オールド・ジョイ」3450本目

ミシェル・ウィリアムズがこの作品を見て「ウェンディ&ルーシー」の出演を監督に申し出た、と聞いて見てみました。 昔からの友達に急に誘われて、二人で山奥の秘湯へドライブに出かける。誘われた方は、それほど乗り気じゃないように見えたけど、行ってみた…

アイヴァン・ライトマン 監督「パラダイス・アーミー」3449本目

ビル・マーレイが出てるなら見なければ。と思って見たけど、なんとなく、今見なくてもいい映画だったかもしれない。80年代の軍隊の映画が見たいなら「トップ・ガン」見た方がいいし。ベトナム戦争終結後、比較的平和な時代だったから作れたお気楽な映画だっ…

ケリー・ライヒャルト 監督「ウェンディ&ルーシー」3448本目

ミシェル・ウィリアムズは悪運に見舞われる普通の女性を演じるイメージが強い。これもそうだった。 彼女はひとり、愛犬ルーシーを連れてボロボロの愛車でアラスカを目指している。失職し家も失って、当地で仕事を見つけようと思っている。・・・二人で旅する…

ジェイソン・ライトマン 監督「ゴーストバスターズ アフターライフ」3447本目

<ネタバレあります> これも機内でとびとびに見ました。これは予想より面白かった。 フィービーちゃんのメガネは、イゴン・スペングラー(ハロルド・ライミス)だったのね。この子の大真面目な頑張りがよかったし、CGのイゴン博士もいい、めちゃくちゃお爺…

田中亮 監督「コンフィデンスマンJP 英雄編」3446本目

ここ2週間で、国内の飛行機往復を2回やったので、とぎれとぎれに見てみました。(今って国内線のプレミアムじゃない普通席でも映画がこんなに見られるのね。たまたま持ってた自前のイヤホンで聞いたら音も鮮明!) 「ダー子」「ボクちゃん」「リチャード」…

エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ監督「スペシャルズ!政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話」3445本目

サブタイトル長いよ~ それに、映画で描かれてる現実はとても複雑なのに「悪い政府vs民間のいいやつら」という二元対決に持ち込んで単純化しようとしている。こういうのは好きじゃないなぁ。 この「正義の声」という施設は、他のどの施設からも断られた重…

パブロ・ベルヘル 監督「ブランカニエベス」3444本目

<ネタバレあります> ブランカニエベスはスペイン語の「Snow White」=白雪姫か。スペイン語の響きは魅力的だけど、どういう映画かわからずうっかり見逃してしまいそうだったので、邦題は「白雪姫とこびと闘牛士団」とかのほうがいいような気もします。 ス…

今敏監督「パプリカ」3443本目

原作を読んだので映画のほうも見直してみました。すごいね、両方とも。とんでもないです。原作者も映画監督も、イカれてて言語道断で、神だ。 夢に入り込んで治療するというコンセプトは、たぶんこの原作が最初ではないだろうけど、2003年「エターナル・サン…

アイラ・サックス 監督「ポルトガル、夏の終わり」3442本目

<ネタバレあります> 日本では、人の名前の映画タイトルが、風景とか状況を表現したタイトルになることがちょくちょくある。もともと邦画は「丹下左膳」みたいな既知の英雄や「横道世之介」みたいに特異な名前でもなければ、タイトルに人名が使われることが…

ペマ・ツェテン監督「羊飼いと風船」3441本目

原題は「Balloon」だけど、「羊飼いの転生」みたいな邦題だったら、牧歌的なものを期待して気持ちを持て余すこともなかったかな・・・ この映画はチベットの伝統的文化vs中国の一人っ子政策、という観点から見るものなのかもしれないけど、ブータン好きの…

フランソワ・オゾン監督「しあわせの雨傘」3440本目

原題は「飾り壺」の意味のフランス語。”しあわせの雨傘”とはだいぶ違うよな・・・何十年ドヌーヴに「シェルブール」を負わせ続けるのか。(確かに傘会社の話だけど) ドヌーヴが、夫に代わって経営の才覚を表すのはいいんだけど、それまで長年、飾り壺として…

アーサー・ペン 監督「奇跡の人」3439本目

すごい映画だ。最後まで目が離せなかった。 視覚・聴覚の二重障害を持つ人に限らず、接点を作れそうにない問題児に、周囲の者たちがどれくらい真剣に向き合えるか、という問題の最高の答えじゃないだろうか? アーサー・ペン監督は、この5年後の「俺たちに明…

ジョン・フォード監督「怒りの葡萄」3438本目

1939年、大恐慌から回復しつつあるアメリカで、原作小説が発売された年のうちに公開された映画。ドキュメンタリー番組みたいなスピード感。 映画のなかでずっと「レッド・リヴァー・ヴァレー」が流れますが、レッド川って2つあるらしい。カナダ国境付近を流…

稲垣浩 監督「無法松の一生」3437本目

これ、過去(2015年)一度テレビでやったのを見て「感動した」とか書いてた私。稲垣監督の作品を見たのは過去にそれ1本だけ。三船敏郎がメキシコ映画「価値ある男」の主役に抜擢されたきっかけになったのがこの映画と聞いたので、じゅずつなぎ方式で再見して…

ウィリアム・ディターレ 監督「ゾラの生涯」3436本目

ポランスキーの「オフィサー・アンド・スパイ」を見たので、これも見てみます。あっちは2022年の公開されたばかりの新作だけど、これは1937年の作品。ワーナーブラザーズが作ったアメリカ映画です。 1894年のドレフュス事件を知らなかった(に限らず世界の歴…

川島雄三監督「暖簾」3435本目

川島雄三監督の作品は、人間が生きてて、完全な善人も完全な悪人もいない。みんなどこかズルくて、どこか可愛い。ふつうの人たちがワイドショーを見ることも、ネットで悪口を書くこともなかった時代。 戦後かつ”高度成長期”前夜の1958年(原作は1957年)。恋…