映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ヘクトール・バベンコ監督「蜘蛛女のキス」396本目

面白かった。じわーっと人と人との愛情のあたたかさを感じました。 「あたたかい」と「熱い」の中間くらいの温もり。って感じ。1986年にこの映画を見逃したまま、30年近くたってました。 主役の二人の魅力と、挿入される映画の夢のような想像力が印象的。 ウ…

ジャン・ルノワール監督「大いなる幻影」395本目

1937年に公開された、フランスの戦争映画。 映像も音声もきれいだし、役者さんたちも洗練されていて、ちっとも古さを感じさせない作品です。でも、フランスとドイツの間の戦争を描きつつ、テーマが”軍人と捕虜の友情”であるあたりが、ナチスとか原爆とか以前…

アンドレイ・タルコフスキー「僕の村は戦場だった」394本目

1963年作品。映画を見る順番ってあるよなぁ。タルコフスキー作品は、「惑星ソラリス」よりこっちを先に見た方がいいと思います。すばらしい映画だけど難解ではないです。これがわずか31歳のときの長編デビュー作って…天才かい? たった95分の作品だけど、…

イングマール・ベルイマン監督「処女の泉」393本目

北欧の昔話を映画化したものらしいけど、日本の地方民話に置き換えても完全に成立しそうです。 ベースが民話だからか、起承転結がはっきりしていて、わかりやすい。今までに見た「沈黙」と「野いちご」はもっとずっと難解。順番としては、この映画から見るべ…

スタンリー・キューブリック監督「シャイニング」392本目

この映画見るの、たぶん初めて。 みんなが怖い怖いというので、びくびくしながら見たおかげで、怖さ30倍! 誰かも書いてたけど、ジャック・ニコルソンとシェリー・デュヴァルの顔が怖すぎる。というか怖い顔の演技がうますぎる、けど素顔もやっぱり怖い。 …

ウォルト・ディズニー「ファンタジア」391本目

この作品、何年も前から一度見てみたいと思ってたんだけど、やっと見ました。 ミッキーの「魔法使いの弟子」を楽しみにしてたし、クラシック音楽と映像との素晴らしい出会い…ということにも、かなり私は幻想を持っていました。そういう意味では、残念ながら…

ロドリゴ・ガルシア監督「彼女を見ればわかること」390本目

難しい。オムニバスで章に分かれてるけど、全部がつながってるのかどうなのか、確信がもてません… 生き生きとして素敵に見える、そう見えるように振る舞っている女性が何人も出てきます。 キャメロン・ディアス、グレン・クローズ、ホリー・ハンター、キャリ…

ブラー「ノー・ディスタンス・レフト・トゥ・ラン」389本目

イギリスの人気バンド「Blur」のドキュメンタリー。こんなのまで見せてくれてHuluありがとう。 昔好きだったけどアルバム「Blur」以降全く聞いてなかったので、ギターのグレアムが辞めて戻った経緯なんかも全然知りませんでした。デーモンがやってる「Gorill…

黒澤明監督「羅生門」388本目

1950年作品。この映画見るの、何回目だろう。 評価が難しいですね。 実験的、意欲的な作品ではあるけど、“名作”なのかどうか。 黒澤明×三船敏郎の、濃すぎて暑苦しすぎる画面。役者さんの演技はすべてtoo muchだし、四社四様の証言はだいたい同じようにも聞…

ウィリアム・フリードキン監督「フレンチ・コネクション」387本目

面白かった。むかしのスリリングな犯罪/刑事ものとして、楽しめました。 実話だから、単純な勧善懲悪で終わらず、ちょっと後味が悪い。(最後の音楽も)主人公の「ポパイ刑事」ことドイル(ジーン・ハックマン)の暴虐っぷりが時代を感じさせます。 「4階に…

阪本順治監督「魂萌え!」386本目

面白かった。 まず原作がいいんだな。桐野夏生だから人間造形が確実でストーリー構築もすごい。ただ、彼女の作品に必ずある「人間のみにくさ」みたいなものが全然感じられませんでした。これは監督の影響なのかな?浮気して急死する夫が寺尾聡だもん、悪い人…

ロイ・ウィリアム・ニール監督「シャーロック・ホームズの 殺しのドレス」385本目

1946年、イギリス作品。69分間の小品なので、テレビドラマっぽくもあります。 出演は、シャーロックホームズにベイジル・ラスボーン、Drワトソンにナイジェル・ブルース、謎の女性に パトリシア・モリソン。ホームズは細面で知的で、BBCの人気ドラマ「シャ…

デイヴィッド・ハンド監督(ディズニーのアニメ)「白雪姫」384本目

デジタルリマスターばんざい! ブルーレイをレンタルしたのですが、絵のあまりの美しさにびっくりしました。 なんて滑らかで柔らかい動き。白雪姫や森のかわいらしい動物たちの動きに、驚きや喜びの感情があふれています。 これが1937年の作品!?この頃にこれ…

ルイ・マル監督「死刑台のエレベーター」383本目

画面いっぱいに女性の顔が映って、ジュテーム、で始まります。 イングマール・ベルイマンの映画にこういうのあった気がするな、と思ってたら、大写しはそこくらいで、その後はバランスの良い画面構成が続きます。考えてみれば、テレビの画面サイズはたとえば…

チャールズ・チャップリン「黄金狂時代」382本目

以前何度か見たことがあるけど、TVでやってたのでまた見ました。 やっぱりこの映画は面白い。 ゴールドラッシュで人が殺到したのは、アメリカ西海岸のカリフォルニアあたりだと思ってたけど、この映画ではアラスカです。(西っちゃ西だが) この頃のコメディ…

石井隆監督「ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う」381本目

割と面白かったけど、この映画の分類は「エロス」か? というほど、佐藤寛子は映画の四分の一くらいずっとハダカです。 監督が「天使のはらわた」シリーズの原作者/監督のと石井隆で、ストーリーはこれも、悲惨な目にあっても心の美しさを失わなかった女性…

スティーブン・スピルバーグ監督「未知との遭遇」380本目

なかなか面白かったです。 公開当時見なかったんだけど、そのまま数十年経過。 CGというか特殊効果が、なかなか良くできています。空に星が多すぎたりするけど、つーっと流れ星のように流れるUFOの動きがなめらか。…そういう細かいところをうまく作ってある…

セルゲイ・ボンダルチュク監督「戦争と平和 完結編」379本目

後半に入って面白くなってきました。第三部=「完結編」前半の戦闘場面は、圧巻です。アンドレイがやられる直前に、シンフォニーが流れて、ザワッ!!と木立が風で揺れる絵に「風よ!緑よ!」みたいな語りが入る場面。なんと壮大な国だ、ロシア!と思い知らされま…

セルゲイ・ボンダルチュク監督「戦争と平和 第一部」378本目

「戦争と平和」の原作はさておき、この映画の場合、第一部と完結編に分かれてるのですが、私が見たのは2013年5月にNHK BSプレミアムで第一部〜第四部に分けて放送されたものです。元々2つに分かれてたのを4つに分けたということ。つっても、第1が2時間…

アン・ホイ監督「桃(タオ)さんのしあわせ」377本目

とても静かな、日常的な映画でした。 いつもお金を借りにきてたおじいさんが、お棺に花を手向けるところでちょっと泣きそうになったけど、淡々としていて、じーっと見てそのまま終わった。 でも今後何度も思い出すだろうな、と思います。アンディ・ラウが、…

河瀬直美監督「殯の森」376本目

こういう映画を撮る監督さんなんだ。そうか。是枝監督の「誰も知らない」の出演者が大きな賞を獲ったり、この映画がグランプリだったり、映画業界が求めてる新鮮味ってのは「ほんとの素人の日常」なのかな。作為のないところに美しさを見るなら、もうフィク…

ポン・ジュノ監督「グエムル 漢江の怪物」375本目

すごく面白かった!寝る前に、明日何を見ようかな〜と、サワリだけ見るつもりで再生ボタンを押したら、のっけから怪物が現れてどっかんどっかん盛り上げてくれたおかげで、寝られなくなってしまった。ホラー映画?いやコメディ?喜劇だけど家族ドラマ?…分類…

是枝裕和監督「空気人形」374本目

予想外に面白かった。 ”ダッチワイフが感情をもって動き出したら…?”っていう仮定まではできても、そのあとのストーリーはそう簡単じゃない。空気が入ってる人形は、申し訳ないけど燃えないゴミ、僕らは燃えるゴミだっていうだけのことなんだけどね。という…

ロバート・スティーヴンソン監督「ジェーン・エア」373本目

1943年制作。芯が強く根が明るい孤児のジェーンを演じるのは、ジョーン・フォンテイン。この人ヒッチコックの「レベッカ」の主役だった人なんですね。…最近見たんだけど、ちょっと印象薄くて…。 あんなに快活で賢い女の子だったのに、大人のジェーンはすっか…

蜷川実花監督「ヘルタースケルター」372本目

派手な宣伝や魅力的なビジュアルで、見てみようと思う人は多かっただろうな。 見てみたら、おそろしく凝った独特の感覚で全体の美術が構成されていて、お金も手間もかかった、監督のワガママがたっぷり具体化された映画だと思いました。くだんの沢尻エリカは…

蜷川幸雄監督「蛇にピアス」370本目

芥川賞受賞のときに読んだから、かなり前だけど、原作の印象とかなり近い映画でした。 3人の役者さんがよかった。役のイメージに近いです。 吉高由里子演じるルイは、投げやりで危ういけど二人を包む大きな愛情をもっている。 高良健吾演じるアマは、心が繊…

チャーリー・カウフマン監督「脳内ニューヨーク」371本目

NYに旅行したばっかりなので、すてきな思い出に浸れるのかと思って借りたんだけど、全然違う映画でした。さっぱりわからないまま、つまらないというほどのこともないので、最後まで通しで見る。 最後のほうでちょっと見えてきた気がしたので、もう一度見る。…

ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督「罪と罰」369本目

1932年のハリウッド映画。 もはやMy Favoriteと言っても過言ではない悪役ピーター・ローレが主演。 このギョロ目、丁寧なようでふてぶてしい感じ、ドイツ語なまりの英語。監督自身、子どもの頃にアメリカに逃れたユダヤ系ドイツ人であり、マレーネ・ディート…

澤井信一郎監督「Wの悲劇」368本目

1984年作品。 なんともう29年前ですね。いまテレビに出ている役者さんが多いので、それほど時間がたった気がしません。といっても、メイクの濃さやスカートの長さ、等々を見ていると、むしろもっと古い映画のような雰囲気もあります。薬師丸ひろ子が主演とい…

小津安二郎「大人の見る繪本 生れてはみたけれど」367本目

1932年作品。音楽もあんまりついていない、完全サイレント映画。「田舎はいいなあ」と彼らがいうのは、蒲田あたり。汽車の走る線路のまわりは野原で、まわりに何もありません。汚れたひざ小僧をした少年たちが、元気にたくましく暮らしています。 中でも「突…