映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

河瀬直美監督「萌の朱雀」559本目

森の怖さと、田舎のやさしさという、山奥に行くと否応無しに感じさせられる二つのことを映画にしたかんじ。 冒頭のうごめく森がいきなり怖いです。美しいけど。 生活感と相反するような、切り立った山の険しさ。ブータンかよ!?と思ったけど日本ですね。 行…

根岸吉太郎監督「遠雷」558本目

永島敏之って年齢不詳だなぁ。32年前に精悍な若者だったのが今は還暦のはずだけど、印象は全然変わりません。 まともな、人のいい若者で、好感がもてます。 ジョニー大倉はとても良いです。小さい頃この人好きだった…。 石田えりのおっとりとして物おじしな…

ヘンリー・キング監督「慕情」557本目

1949年の香港のハーフの女医がモデル。そういう映画だったんだー。エキゾチック! タイトルは、「splendored」じゃなくて「splendid」だと思ってました。(どう違うのかよくわからない)いやー、のっけから美しい。香港の、東西が入り交じった風景も魅惑的だし…

ウディ・アレン監督「マンハッタン」555本目

自分の見つけた素敵な女性とつきあって映画を作る監督っていっぱいいるみたいだけど、ウディアレンって… それをずーっと繰り返してるのかな? ダイアン・キートンもマリエル・ヘミングウェイもメリル・ストリープも、ほんとうにステキ。 そして彼の恋愛観?…

石井隆監督「ヌードの夜」556本目

情感とか情念とかがたっぷり、とっても湿度の高いロマンティック・バイオレンス映画。という感じ。 余貴美子がセクシー女性役で、しかもはまり役なのにすっごく驚きました。 といっても、同じ監督のほかの映画に比べると、ヌードは極端に少ないです。「天使…

福田雄一「コドモ警察」554本目

面白かったよ。 まあ下らないといえば下らないんだけど、アイデア勝ち。 コドモたちの演技が、みな真剣でとても良いです。 こまごまとしたコドモエピソードとか、基本のストーリーの飛躍とか、いろいろあるけど、名探偵コナンよりははるかにツジツマが合って…

阪本順二監督「亡国のイージス」553本目

おもしろかった。 大人の役者さんたちが、じっくりと成熟した演技を見せます。 これも結局は人間ドラマなんだよな。 「正義」を追い続けることは、他の誰かと致命的に対決するってことだ。 これ舞台が会社とか役所とかでもいいと思うんだけど、感情のリアリ…

オーソン・ウェルズ監督「ストレンジャー」552本目

スプレンディド! サスペンスの傑作ですね。 ストーリーもプロットも、素晴らしいけど他にもある。やっぱり、すごいのは映画の作りなんですよね。 追いつめられる男の心理を、緻密に表し尽くした映画です。 エンディングも完璧。感動しました。ヒッチコック…

三池崇史監督「藁の楯」551本目

「藁の楯」なんていうからには、人ってもろいのね、というヒューマンドラマかと思った…けど三池監督がそんなヤワなもの作る訳なかった。うーむ。善良な人に殺意を起こさせる実験という意味で、日本版「バベル」のようで発想は面白かったけど、面白いと思えた…

アルフレッド・ヒッチコック監督「三十九夜」550本目

スリルたっぷりなサスペンス映画の傑作、だけど、この時代のヒッチコックは「バルカン超特急」がやっぱり最高だなぁ。 普通の男が突然かつ偶然に、大きな陰謀に巻き込まれる。逃げるチャンスがないわけではないのに、どんどん深みにはまっていく。いい女が何…

ナンニ・モレッティ監督「ローマ法王の休日」549本目

以前フランス人やイタリア人と話したときに、ブラックユーモアきっついー!笑えねー!ってびっくりしたことがあります。だからこの映画も多分、ローマの映画館ではワッハッハって笑いながら見るのかもしれません。(私は笑えないけど)実際、法王って何度も選…

マイケル・クリストファー監督「ポワゾン」547本目

これそういえば前に見たわ。 わざわざ見に行くと思えないから、たぶんフライトの中で見たんだと思う。 アンジーが「私が美人だということを、あえて知らせなかったのよ」みたいなことを言うのが、不遜ですごいなーと思ったのを覚えてます。 アントニオ・バン…

デイヴィッド・リーン監督「アラビアのロレンス」546本目

「ベン・ハー」みたいな史劇かと思い込んでたので、冒頭イージーライダーみたいなのが出てきて「えっ」と思いました。(それはもしかして、タイトルからローレンス・オリビエのハムレットか何か連想してたのではないか) 考えてみれば、「インドへの道」は公開…

オリバー・ストーン監督「プラトーン」548本目

アメリカのすごいところは、ここまで赤裸裸な自分たちの悪事を映画にできるところだと思う。 「地獄の黙示録」もすごい映画だと思う。でも、オブラートにくるんである。 この映画は、ドキュメンタリーみたいに、キャーキャー叫ぶベトナム人を撃ち殺したり、…

エンキ・ビラル監督「バンカー・パレス・ホテル」545本目

ジャンルイに似たきれいなスキンヘッドのおじさんが出てると思ったら、本人だった。 24年も前の映画なんですね。「公開当時はフランスの観客動員記録を塗り替えた話題作」というので見てみたけど、すごーーく静かな、盛り上がりの何もない映画でした。フラン…

ジョン・アヴネット監督「フライド・グリーン・トマト」544本目

「こういう映画を見てると、アメリカが好きになっちゃうわ」シリーズ。 エヴリンと二ニー、最高。フランクで明るくて正直で勇敢な、開拓地の女性たち。ニューヨークとかロサンゼルスばかりじゃなくて、南部とか中西部とかにも行ってみたくなります。 自分も…

ルイ・マル監督「さよなら子供たち」543本目

「五月のミル」も「死刑台のエレベーター」も好きだけど、この映画はあまり充分にあじわえなかったかも。最初に母との別れを惜しむ場面で、「母親が見えなくなったら舌を出してイタズラを始めるのでは」などと疑ってしまった私の心は黒くてすみません。…でも…

アキ・カウリスマキ監督「街のあかり」542本目

アキカウリスマキの映画、なんか見ちゃいますね。 レニングラードカウボーイズの頃、この映画が面白いのはバンドのせいだと思ったけど、あの“なんともいえないおかしみ”は監督の持ち味以外の何者でもない、と、今ならわかります。はるか遠くのヨーロッパのよ…

山本薩夫監督「白い巨塔」541本目

大人になってから初めて見た田宮次郎が「悪名」で、口ばっかのチンピラがあまりにハマり役でびっくりしました。 むしろ「白い巨塔」のイメージだ、とか思っていたのですが、今見るとこの板についた関西弁、知性も美男子っぷりも大層なもんだけど、欲や嘘がに…

ミシェル・ゴンドリー監督「ヒューマンネイチュア」540本目

冒頭からおかしいんだけど、「毛深女」が森に入って"神の恵みの歌”をいきなりミュージカルふうに歌いだすあたりから、もっとおかしくなってきます。 野生の中で育った男性が、研究室の中でテーブルマナーを仕込まれるところとかも。 体中の毛をそり落とした…

ルイス・ブニュエル監督「アンダルシアの犬」539本目

ダリが関わったこういう映画があるということは、大昔から知ってましたが、やっと見ました。 これはストーリー映画と同列に並べるより、草間弥生やフランシスベーコンの美術展で見た展示映像の仲間じゃないか?1928年という、映画自体の黎明期といっていい時…

ミシェル・ボワロン監督「殿方ご免遊ばせ」538本目

ブリジットバルドーはもちろん可愛いんだけど、「素直な悪女」のほうが果物のような彼女の魅力が際立っていました。こっちも「いい女」ではあるけど、世界に二人といないすごい女の子!って感じがないです。大統領補佐官を演じているアンリ・ヴィダル、年代…

ロジェ・ヴァディム監督「素直な悪女」537本目

ブリジットバルドー、期待通りの可愛らしさ、初々しさ、セクシーさ。美しい子猫のようです。 そして“もてない純情男”役のジャンルイ・トランティニャン(名前言えるようになった)は、見た目は悪くないのに、なんとも気弱な感じ。彼がその後、遊び慣れたハン…

レオス・カラックス監督「ポーラX」536本目

主役の自爆的青年を演じたギョーム・ドパルデュー、ファム・ファタール姉のエカテリーナ・ゴルベワ、ファム・ファタール母のカトリーヌ・ドヌーブ、とても良いです。まさにそういう運命を持った人たちとして、しっかり成立しています。レオス・カラックスの…

リンゼイ・アンダーソン監督「if もしも…」535本目

キャー、マルコム・マクダウェルが出てる。知的で反抗的でギラギラした目つき、引きつけますねー。 (ググったら現在71歳の写真が出てきてびっくり。老人になったけど、挑戦的な目つきはそのままです) 今ちまたに、特に日本にあふれてる、がまんしてがまんし…