映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ヨーロッパ映画(80年代まで)

ジュリアン・テンプル監督「ビギナーズ」3672本目

1986年の作品。 当時ミュージックビデオで人気だった監督が撮ったこのコマーシャルでエンタメな音楽映画を今なぜ見るかというと、デヴィッド・ボウイが出てるから、というだけじゃなくて、楽曲がすごく懐かしいから。当時映画は見てないけど、サントラを聴き…

アキ・カウリスマキ監督「パラダイスの夕暮れ」3654本目

1986年、アキ・カウリスマキ監督の初期の作品。 まだ若いお姉ちゃんという感じのカティ・オウティネンは、今年になってから何度も仕事をクビになっている。ごみ収集業のマッティ・ペロンパーが彼女と出会ってナンパします。この方、「モーゼに会う」1994年の…

ルイス・ブニュエル監督「熱狂はエル・パオに達す」3651本目

これもDVDレンタル。 メキシコのブニュエル監督が撮ったフランス語作品か。主役がジェラール・フィリップだからだな。そういえば冒頭からのナレーションの声がジェラール・フィリップだ。 舞台の島はカリブ海のどこかのようだけど、OjedaやEl Paoという地名…

ロベルト・ロッセリーニ監督「無防備都市」3650本目

イタリアのネオリアリズモということは、「自転車泥棒」と同じジャンル? あれは孤独な父子の貧しい生活だけがぽつんと描かれた映画だったけど、これは熱く抵抗し、熱く戦った男たちと女たちと子どもたちの映画だった。救いのなさは似てる。 レジスタンスの…

ロベール・ブレッソン監督「田舎司祭の日記」3641本目

<いろいろネタバレあります> 何やら陰鬱な表情の、若い田舎司祭が新しく村にやってくる。「ラルジャン」のロベール・ブレッソン、誰にでもある良い心と悪い心の葛藤や、悪運に巻き込まれて逃れられない運命を、あの映画でも描いてたように思います。 この…

ジャン・リュック・ゴダール監督「アルファヴィル」3596本目

この作品、最近やっとVODで提供されたのかな?ふしぎとあちこちでタイトルを見ます。ゴダールは苦手分野だけどSF映画も撮るんだ・・・と思って見てみたら、そこが別の星だという設定になっているだけで、映像も演出もふつうにフランス映画でした。アルファヴ…

ダリオ・アルジェント監督「わたしは目撃者」3591本目

イタリア製スプラッターホラー映画の金字塔「サスペリア」のダリオ・アルジェント監督の、それより以前の作品。音楽や映像がなんとなく「テレビ映画」と呼ばれるサスペンスドラマっぽい。「刑事コロンボ」みたいな。 でも刑事コロンボより、いちいちあおって…

アルフレッド・ヒッチコック監督「バルカン超特急」3588本目

大好きな映画なのでまた見ました。1938年のヒッチコック英国時代の作品。 サスペンス色は強いんだけど、胃を締め付けるような死の恐怖、という感じではなくて、家族で見に行けそう。全体的にすごく見事に計画され、まとめられた、とても完成度の高い作品だと…

ミケランジェロ・アントニオーニ監督「太陽はひとりぼっち」3561本目

モニカ・ヴィッティがもはや気だるい美女にしか見えないという刷り込みをさらに深める作品。でも「赤い砂漠」よりは笑顔が多い気もする。 アフリカの人のまねをするのは、彼らのエネルギーに惹かれるからか。彼女は一貫して意志や考えなしに、流されていきま…

マッシモ・ダラマーノ監督「ドリアン・グレイ 美しき肖像」 3544本目

中高生のころ、オスカー・ワイルド好きだったんですよ。ヘルムート・バーガーはイメージ通りです。(2022年の今は、彼の現在の姿を映画の中につい投影してしまうけど、そうするとさらにリアリティが増してしまって・・・) で、この監督は誰だ。映画は冒頭か…

ジャン=リュック・ゴダール監督「カルメンという名の女」3514本目

この作品は、ゴダール本人がイメージ通りの気難しいおっさんとして入院しているのが、メタ的だけどリアルに感じられて、ちょっと見やすい映画かなと思ったんだけど、撃沈。クラシック音楽が大きく鳴り続けていて、きれいな女の子と男の絡み方が全然理解でき…

ジャン・リュック・ゴダール監督「メイド・イン・USA」3511本目

追悼ゴダールシリーズの続き。これは楽しい。なぜなら、ただでも可愛いアンナ・カリーナがあまりにも可愛い服を着てスパイごっこをしている感じが、もはやジャック・ドゥミやロジェ・ヴァディム監督作品、あるいはチェコ映画「ひなぎく」のようです。ゴダー…

ジャン・リュック・ゴダール監督「小さな兵隊」3503本目

追悼ゴダール監督。 見た作品もけっこうあるのに、見てない作品が山になってる。多作すぎる。 長い長いフィルムグラフィを見て初めて「中国女」や「東風」といったYMOの有名楽曲のタイトルが彼の作品から来てると気づく。(作詞してたクリス・モスデルの趣味…

ミハイル・カラトーゾフ監督「鶴は翔んでいく(戦争と貞操)」3500本目

<結末にふれています> 「怒りのキューバ」を見たら、これもモスフィルムの公式動画がYouTubeに載ってたので見てみました。カメラは「キューバ」と同じセルゲイ・ウルセフスキーだけど「キューバ」より7年前、1957年の作品。冒頭からなんだか重苦しいヨーロ…

ミハイル・カラトーゾフ 監督「怒りのキューバ」3499本目

Twitterでこの作品のハイライトシーンがなぜか何度も流れてくるのを見て、まるで実現不可能にしか見えないそのカメラワークに驚愕したのは私だけではないはず。YouTubeで公式動画が見つかったので見てみました。 キューバは憧れの国。ツアーで見て回れたのは…

フリッツ・ラング監督「リリオム」3487本目

<ネタバレあります> (この作品はラング監督の「映画監督に著作権はない」には出てきません。) 1943年の作品。 リリオムってメリーゴーランドに乗ってる細面のブロンド嬢の名前だと思ってたら、彼女に言い寄る係員の男の名前だったのね。その男を演じてる…

アキ・カウリスマキ監督「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」3485本目

やっぱり可笑しい・・・ 音楽雑誌か何かで初めて知ったんだと思う、彼らのことは。巨大なリーゼントのアメリカかぶれのソ連のバンド?(本当はフィンランド)という無謀なキャラクター設定が、今見ても爆笑してしまう。そしてカウリスマキ監督との出会いでも…

ガイ・ハミルトン監督「007 ゴールドフィンガー」3476本目

仕事仲間と話してた時にボンドカーの話題になって、アストンマーティン製の初期タイプのことがよくわかる作品として、これが見てみたくなりました。過去に何回も見てるけど、意外と楽しめますね。 1964年の作品・・・この頃の男性映画(戦争やスパイや金や暴…

マイケル・パウエル監督「黒水仙」3470本目

ジャン・ルノアール監督の「河」を見て、同じ原作者のこの映画も見てみたくなりました。マイケル・パウエルは「赤い靴」の監督か。そしてこの作品も、「河」と同様、インドのイギリス人が主人公。 山あいの”宮殿”はブータンのタクツァン寺院みたいだし、そこ…

フリッツ・ラング監督「ブルー・ガーディニア」3464本目

1953年にラング監督がハリウッドで撮った作品。 ロマンチックな音楽のオープニング、主題歌はナット・キング・コール、映画の黄金時代って感じです。主演はアン・バクスター、登場する女性は三人ともブロンドでキュート。舞台劇みたいにちょっとしゃれた会話…

フリッツ・ラング監督「無頼の谷」3463本目

今週はいつものU-NEXTをオフにして、Amazonプライムのウォッチリストに溜まった作品を片っ端から見てみます。これはディートリッヒ様がなんとフリッツ・ラングが監督した西部劇だそうです。三つ巴。ディートリッヒ&ラングというドイツ勢がアリゾナの砂漠で…

ジャン・リュック・ゴダール監督「男性・女性」3383本目

これは、ジャン・ピエール・レオを見出したトリュフォー監督ではなくて、宿敵(ともみなされる)ゴダール監督の作品。ゴダールの男たちの例にもれず、レオ演じるポールは、なんだか政治的なメッセージのような哲学のようなものをつぶやいています。 常に、め…

ルイ・マル監督「ビバ!マリア」3370本目

ブリジット・バルドーとジャンヌ・モローがフレンチカンカンを踊る映画を、「死刑台のエレベーター」のルイ・マル監督が撮ってた?冗談でしょう?(ある意味もっとすごい。セミ・ストリップだもんね) …と思いながら見てみたら、そういうシェルブールの雨傘…

ヴィム・ヴェンダース監督「さすらい」3365本目

冒頭の音楽が、ライ・クーダーみたいなスライドギターになってる。(クレジットの隅々まで見たけど名前はナシ。まだ監督とミュージシャンは出会ってないのかも)それ以外も、ガラガラな一本道をトラックで走りながら、ずっとアメリカっぽい音楽が流れてる。…

ヴィム・ヴェンダース監督「まわり道」3363本目

3部作の2つ目。 これがデビュー作のナスターシャ・キンスキーは、当時14歳。まだ女性になりきれてない少女で、少年と言われたらそうかと思いそうなくらい。でも目力がすごい。これはクラウス・キンスキーから受け継いだ目だなぁ。初めてパパの方を見たとき…

ヴィム・ヴェンダース監督「都会のアリス」3362本目

「まわり道」を見かかって、やっぱり時系列順に見ようと思ってこっちを先にすることにしました。 一瞬、ジム・ジャームッシュの初期の作品みたい?と思ったけど主役のキャラが違う。どう違うかというと(※自分の過去の映画経験にもとづく偏見に満ちた洞察)…

ロベール・ブレッソン監督「抵抗(レジスタンス)死刑囚の手記より」3304本目

「ラルジャン」の底のない悪の連鎖が印象に残るブレッソン監督。この作品はぱっと見、暗く難しげに見えたけど、徹底して淡々と脱獄に至る日々を描いていて、本当に日記のようでした。日々のリズムが単調なのもリアル。実話と思えないくらい管理がザルな監獄…

アニエス・ヴァルダ監督「ダゲール街の人々」3302本目

ドキュメンタリーなので比較的新しい作品ではあるけど、1975年なのでもう50年も前です。中年の夫婦が「1925年に生まれた」と話してたりすると「ん?」と思うけど、今ご存命なら97歳だ。取り上げられたお年寄りたちはもとより、中年の人たちもほとんど生きて…

アニエス・ヴァルダ監督「ラ・ポワント・クールト」3301本目

タイトルは、この映画に出てくる夫婦の夫のほうの生まれ育った町の名前らしい。映画ビジュアルの、男女の顔が重なってる写真、完全に「写真美術館」に展示されてる往年のフォトグラファーの作品に見える。彼女のビジュアルセンスは卓越してるよなぁ。デザイ…

ジャック・ドゥミ監督「天使の入江」3298本目

冒頭の60秒間の、まぁなんてスタイリッシュなこと。何度も見ちゃった。くわえタバコでやさぐれたジャンヌ・モローからすごい速さで遠ざかっていくカメラ、ミシェル・ルグランのドラマチックなピアノ。(最初クイーンの「セブン・シーズ・オブ・ライ」イント…