映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ブレント・ウィルソン 監督「ブライアン・ウィルソン/約束の旅路」3768本目

これまだ見てなかった。ビーチ・ボーイズの「グッド・ヴァイブレーション」は、ポップ・ミュージック歴代名曲ベストテンに入るくらいの名曲だと思ってます。短い曲のなかに、理屈でなく感覚だけに訴える緩急が詰め込まれていて、今でも聴くたびに鳥肌が立つ。ブライアン・ウィルソンはまさに天才だと思う。映画はこの曲から始まります。

ポップさで同様にベストテンに入りそうな「カリフォルニア・ガールズ」なんて、エディ・ヴァン・ヘイレンだって歌ったしレニングラード・カウボーイズ+ソビエト赤軍合唱団も歌ったくらいで、この映画のブルース・スプリングスティーンの言葉では「彼がカリフォルニアを再定義した」ことであの曲が明るく楽しいアメリカの象徴となったのは事実。多幸感があって、曲が終わるまでの時間が天国みたいに思える。冒頭がウエスタンだと本人がこの映画で言っているのを聞いて初めて、全くその通りだと気づきました。イントロだけ聞くと、駅馬車がゆるゆると走ってきそう。

最初に聞いたとき、なんて音程のいい人たちだ、ということと、複雑なコードを使った和音の美しさに驚いた。この映画では、ブライアンの人生の苦難だけじゃなくて、音楽的に何がどうすごいのか、彼が今いかに幸せに音楽をやり続けているか、も語ってくれているのが、すごくいい。悲しく切ないドキュメンタリーじゃない。

ビーチ・ボーイズを聴いていると、遠くなった自分の青春を思って泣ける、と語った人もいた。それもわかるな。小さい頃憧れたけど結局実現しなかった、素敵なビーチの夏・・・なんていうのも、ある意味遠くて泣ける。ほんとに、この人がこの世に生まれてきて、マジックの込められた楽曲をたくさん作ってくれて、今もやり続けてくれてありがとう、と語る人たちに私も加わりたいです。ブラボーでした。