映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

羽仁進監督「不良少年」1877本目

リアルで力強い映像。
主役の喋り方がほぼ、ビートたけしです。なんだよこの野郎、馬鹿野郎。巻き舌で、俺がよぅ、それでよぅ、xxってんだからよぅ。東京の下町っ子なのかな。
少年院にいたことのある人たちを使って撮った映画らしい。ドキュメンタリーに近い、「再現映像」みたいな感じ。反抗する子たちには少なくとも気概というものがあるからか?この映像の力強さは。
最近の映画も、演技経験がほとんどない人たちを起用したものがどれも面白いのは、素人の方が演技が上手いからではないはずなんだけど、日本の映画はずっと、演技を学んできた人より人気のある美男美女を役者として使い続けてきたから、本当の素人と、美男美女俳優を並べたときに、リアルさで素人が勝ってしまうのかも。

そういう作り方がすごく成功したのがこの映画だと思うけど、羽仁進の映画ってあまり今語られないなぁ。私から見ると、映画監督というより、小さい頃よくテレビに出ていた教育関係の人というイメージです。作品の画像を並べてみると、サイケで前衛的で、評価の点数は低めだけど、ちょっと見てみたいなぁ。

サラリーマンを囲んで恐喝する場面があるけど、今はみんなあまり現金を持ち歩かないから、Suicaでも奪うのかしら・・・。クレジットカードを渡してしまったらもっとダメージ大きいなぁ。いや、道端でこんなことしてたら街頭カメラの映像を辿ってすぐに捕まっちゃいそうだ。

厳しい教官たちはどこから見ても元軍人。

私の世代は、こういう面構えの少年たちがロックバンドをやってた時代です。バンドマンから俳優になった人もいれば、音楽を続けてる人も、やめて別の仕事を普通にやってる人もいる。映画の中の少年たちのなかにも、彼らの強さを犯罪以外のことに注ぎ込んでカタギとして定年まで働いた人がきっとたくさんいたんじゃないかと思います。

不良少年 羽仁進 山田幸男 RFD-1149 [DVD]

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ロウ・イエ 監督「ふたりの人魚」1878本目

2000年、中国で中国人監督が撮った映画。
一人語りの感じや人魚のキッチュで可愛い感じが、ウォン・カーウァイ監督「恋する惑星」みたいじゃない?
この女の子、ジョウ・シュン がすごく印象的。
少女みたいに可愛く、峰不二子みたいに悪女で、強くて柔らかくて。こりゃすごい人がいるわ、と思ったら、「クラウド・アトラス」にも出てたのね。彼女がそこにいると、地味な映画には絶対にならない、というくらい目を引く。でもそのあとの活動が全然見えないなぁ。「中国4大女優」なんですか。みなさん美しくてエネルギッシュ・・・。

で、このチャーミングなマーダーという男性の方はどういう役者さんなんだろう?といろいろググってたら、「中国若手四大女優ジョウ・シュンとの交際でも知られた、中国の俳優ジア・ホンシュンが北京市内の高層アパートから転落死」というリンクを踏んだとたん、「Googleメンバーシップ・リワード」というフィッシングサイトにリダイレクトされてしまった。だいぶ探して、中国語のWikipediaの彼の情報を見つけたら、2010年に43歳で転落死してしまったのは事実のようです。寂しい気持ちになりますが、この映画の彼はとても素敵で、出会えてよかったと思います。

千葉茂樹監督「マザー・テレサとその世界」1879本目

1979年に日本の映画監督がコルカタに飛んで撮影したドキュメンタリー。
マザー・テレサがまだ若々しいし、コルカタはまだカルカッタと呼ばれています。
この時から40年近くたって、マザーが亡くなってからもう20年以上もたってしまったけど、コルカタの状況は少しはよくなったんだろうか?世界は悪くなってないだろうか?

まだ時代的には、「かわいそうなものをかわいそうに描く」空気が残っている感じがあるけど、この監督の視点には公平さが感じられます。ただ、日本にはもういないような、ハンセン氏病の症状が進んだ人たちの、一番不自由な部分にフォーカスしてしまう瞬間はある。

マザー・テレサとその活動のことを知らない人ってほとんどいないと思うけど、ここまで現地密着取材したものを見る機会って、実はあまりなかった気がします。彼女の施設で働くかわいい修道女たちの姿の清らかさとか、見なければわからないことがたくさんありました。

40年も前にこの映画を撮りにコルカタへ飛んだ監督の勇気と行動力に敬意を払いたいです。
人に囲まれて、守られて死ぬことはとても大切だと思います。私も最後の最後に誰かを少しでも幸せな気持ちにしてあげられたらいいな。それだけで自分自身、生きているかいがあるってものです。

DVD>マザー・テレサとその世界(個人観賞用) (<DVD>)

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