映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ホナス・キュアロン 監督「ノー・エスケープ 自由への国境」1666本目

本当にあるのでは?あるのかも?とぞっとする映画でした。
実際には逃げ出す間もないのかもしれず、こんなにドラマチックな逃亡劇が繰り広げられることはないのかもしれません。特殊な兵器や怪獣やサイコパスは出てこないし、超常現象も起こりません。世が世なら自分自身も同じ立場になったかもしれない、現実に起こっていそうな事件を、リアルに作り上げてあるので妙に臨場感が強い映画です。
全編スペイン語、メキシコとフランスの合作。だよね、アメリカではこの映画は作れない。
ガエル君は友情に厚く機敏な青年という、いつもながらのはまり役。
メキシコ国境の壁って、作った方が彼らの命が守れるのでは?などと思ってしまいました。(越境できなくなるけど)

ヴィム・ヴェンダース 監督「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」1667本目

胸の奥にしみる。中南米的なやわらかい情緒が。
初めてこの映画を見たのは多分2000年代だろうな。バブルの時期にサンバ・カーニバルだのカリビアン・カーニバルだのといったイベントを野音とかでばんばんやってた頃にこの地域の音楽に出会って、なんでこう琴線に直接くるのかと驚いたのが最初。その流れできっと見たんだと思う。その時も、ボーカルの可愛いおっちゃんが憂歌団木村充揮によく似てるなぁと思った。

なんというか、圧倒される。切なさがほとばしって俯いてしまう。言葉で感想を書くことの意味がよくわからなくなる。50年ぶりに集まったミュージシャンの50年の長さが切ないけど、今この映画を見ると、もうこの世に姿がない人が多い。良いもの、素晴らしいものは全ていつかなくなる。(良いものだけじゃないけど)はぁ。
「ラスト・ワルツ」を見ていたときの感情に少し近いな。

近々キューバに旅行するので、それまで繰り返し見ておこう。着いたらいろんなことを、見逃さないように、聞き逃さないように、五感をいっぱいにしよう。