映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

錦織良成監督「渾身」163本目

2013年公開予定作品。

俳優や監督に「地味・派手」があるとしたら、自分でその人の作品を見たときの感想であって、テレビにいっぱい出てるかどうかは関係ない。テレビでいっぱい宣伝してる映画を見ても、たまたま入ったツタヤで手に取ったDVDを見ても、いいものはいいし、よくないものはよくない。テレビで派手に宣伝してる映画を見に行ってそれがいいと思う人は、そういう感性なんだから、そうでない人がとやかく言うことではない。と私は思います。

どっかの観光地とタイアップした映画を撮るともうかると思ってる人がいて、それで実際利益が出てるんだとしたら、そういうもので映画産業がペイしているおかげで、新人監督を発掘したり、利益が薄い作品を世に出す余地ができるわけなので、そういう人たちにありがとうと言っておけばいいと思う。

この映画は、伊藤歩が主役というので興味がありました。「スワロウテイル」も「リリィ・シュシュ」も、連ドラ「おひさま」の彼女もとてもよかった。で、最近映画の感想を書いている「KINENOTE」が試写会参加者を募集していると聞いて、すぐに申し込みました。キネマ旬報さん、ありがとうございました。

フィクションのような、ドキュメンタリーのような映画でした。
隠岐島の「古典相撲」は、いまの大相撲の原型。地元の人たちが誇りに思い、今も楽しみに続けている、熱くエネルギッシュで、かつ畏敬の念や礼節のある、ほんとに素晴らしい行事です。現地の人たちがエキストラというより、立派な出演者としてたくさん出演していて、とても生き生きとした映像が見られます。そうだよね、相撲をするのにまず太らなければならないって言ってたくさん食べさせられること自体が変だ。この映画の中の「古典相撲」に出る一般の人たちは、だいたいみんな筋肉質です。

隠岐島の美しい風景、美しい伊藤歩、精悍だけどちょっと頼りない青柳翔、ほかにも誰でも知っている有名な俳優さんがたくさん出ていて、しっかりとした演技を見せてくれます。

個人的には、伊藤歩の演技はお行儀がよすぎて物足りなかった。彼女にはこの役はイイコすぎてじつは咀嚼しづらかったのでは?(ちょっと変わった子の役をやると超魅力的なので) あと、筋が追いづらい。おおまかな筋くらいは誰にでもわかるように作ってくれてもいいのでは?難解なテーマではないはずなので、お年寄りでも子どもにもしっかり伝わるということも大切ではないかと思います。

2時間以上ある長尺は、これはこれでいいのかも。古典相撲がたっぷり見られたのはよかったです。相撲ファンはそのルーツとして1回は見てみるといいと思います。もしも可能なら、全編地元の人で撮れたらよかったのでは?無理でしょうか・・・。以上。