サイレントの白黒映画。映像に古さはないけど、音楽+文字だけの画面なのでクラシック感があります。もともとセリフがあっても一言もわからないフィンランド語なので、この形式になってもほとんど違和感ありません。
カティ・オウティネンさんは、育ててくれた人の妻として田舎で暮らす美少女。都会から来た女衒にそそのかされて道を踏み外します。
この人ずっとこんな役だなぁ・・・つまり監督から見て彼女は、不幸(または不機嫌)な女を演じさせたらヘルシンキ随一の女優なんだろう。日本でいえば木村多江、麻生久美子系の薄幸美女か。(この二人はにこやかだけど。にこやかなのに、はかない感じがある)
物語はシンプルに悲劇。古典的ですらある。まさにサイレント映画の時代感覚。カウリスマキ監督のユーモアの裏には、こういう落ちていくだけの悲劇性が、そういえばあるような気もする。だいたいみんな少し愚かで、だいたいみんな失敗する。アメリカのシアトルあたりでも、年間の日照時間が短いため日本から転勤して「冬期うつ病」になる人がいるという(だから家で紫外線ライトを浴びたりするらしい)くらいで、フィンランドなんてみんなちょっと悲観的なくらいが標準なんじゃないか、などと思ってしまう。
・・・でも大丈夫、カティさんは逆境にとことん強い女で、男がみんな収監されても死んでしまってもちゃんと自活して生きていけるから(のちの作品を現実だと思っているかのようなコメント)。