1996年作品。
この人の作品は、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を前情報なしに父親と映画館で見てしまったという苦い思い出があります。終わったときのドンヨリ感は、あれを超える映画はないくらいです。・・・おかげでこの映画を見始めるときに余計な期待をせずに済みました。覚悟ができた、というか。
妻ベスが子どものように可愛い。夫ヤンはごつい肉体労働者だけど、父親のようにベスに優しい。お互いをかけがえのない存在と信じて、愛し合っている夫婦。
・・・いやな予感がしますね。こういう無垢な美しい気持ちが、悪気のない人たちのシキタリによってズタズタにされてしまうのではないか。
「道」っていう映画がこの監督はきっと好きで、頭の弱い娘ジェルソミーナをさらにもっと精製純化しようと思ったのかもしれない。私の目には、ベスの方が天使に見えます。
人間は純粋だからなにかを盲信してしまって、愚かなことをする、だけど彼らが生きて愛し合った日々は宝石みたいにキレイだよ。
「薔薇の名前」の世界に、間違って子どもが紛れ込んでしまったみたいな映画でした。
この映画は首尾一貫してるけど、なんとなくこの監督には、もっと破たんしたものも作りそうな危うさを感じます。ほかの映画見るの、やっぱり怖いな〜。
昔どこかで聞いたような、古きよき70年前後のロック、ポップスが流れてやさしい気持ちを誘ってくれました。この時代の音楽すごく好きです。
以上。