映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

中島哲也監督「告白」173本目

2010年作品。

じっくり、じっとりと詰まった濃い力作でした。
なのに重苦しさがまったくない。

これはだいぶ前に原作を読んでいて、うわぁ重い、辛すぎる、と思っていたのですが、あれを「下妻物語」の中島哲也が映画化と聞いて、いったいどう料理したのか?と思っていました。

この軽やかな、まったく隙のない完璧なテンポ。
構成は原作に近いように思いますが、違う部分もある・・・(すみません、記憶が薄れてきています)
でも一番印象が違う部分は、原作にみられる苦い感情や人間の黒さが、みにくく響くことがなく、加害者全員が、ひどく傷ついた哀れな人々に思える点だと思います。中島監督が、人間に対する大きな愛情をもって映画化したことによって、昇華された・・・という印象。

出演者の演技はみなさんよく役を理解して、大げさな動きでなく抑えた演技で多くを表現しきっていると思います。主演の松たか子は、ポスターの表情はコワイと思ったけど、一切激こうすることなく、涙を流す一瞬も、激情のくやし涙ではなく、愛情とか赦しとかの美しい涙、と感じさせました。

岡田将生っていろんな役をやりますね。「悪人」では冷血プレイボーイ、大河ドラマ平清盛では友情あふれる語り部。なんにしろ印象の強い人だけど、すごい善人にも超イヤな奴にも見える。おもしろいです。

原作を読んだときの感想はちなみに<こちら>です。そのときから、監督の読み解き方と原作とに違和感を感じていたらしい(笑)。はからずも映画を見てその気持ちがさらに強くなりました。

そんな違いもあるので、この作品は、原作を読んでから映画を見るのもかなりオススメします。以上。