映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョエル・コーエン監督「バートン・フィンク」796本目

これがパルムドールか!
ヨーロッパの専門家たちが深読みしすぎて、本来の意図よりめいめいの思いを投影してしまったんじゃないのか?

なにか、薄暗い、いやーな気持ちが蔓延した映画でした。テーマは、アラ50なら江口寿史の”ワニが…赤いワニが…”で通じる、書けなくて書けなくて困っているクリエイター。
チェックインはできるけど決して外に出ることのできないホテル・カリフォルニアという名のハリウッド。
でろーんとはがれ続ける壁紙。
誰もが中身を知っているのに決して明かされない箱。
突然燃えているホテル。
廊下に並ぶピカピカの靴たち。(こんなに人が泊まってたんだ!)
いろんな作り話が次々出てくるけど、それもこれもみんな赤いワニの一種だ。

それにしても、ジョン・タトゥーロジョン・グッドマンの演技力が素晴らしすぎる。
コーエン兄弟の作品のなかでは、とても暗いしエンターテインメント性があるようでないような作品だったな。
私はうす暗い気持ちになったので、あんまり好きではないです。