映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

園子温監督「気球クラブ、その後」記念すべき200本目

2006年作品。

昔やってた「気球クラブ」のリーダー村上が事故って死にそうだ。当時の彼女ミツコさんに誰かが連絡しなければ!・・・という映画。
紀子の食卓」より後だし、知ってる俳優さんが大勢出てるのに、なんか自主制作というか仲間内でハンディカムで撮ったビデオのようか香りがただよっています。

彼女を探せ、誰か番号を知らないか、誰か消息を知らないか。という、緊迫感と不安感が、冒頭からちょっとゾクゾクします。目の付けどころがうまい。「気球クラブ」の「その後」だもん。まつりとその後。夢みてた頃と酔いがさめた後。

気球って素敵ですね〜。空を飛ぶということもいいけどあの大きさもいい。近くで見るとだだっ広いビニールシートと、どでかい籠と、超強力バーナーだ。

謎のメッセージが最後の最後に残るところ、半分くらいは解けた気もするけどそのまま残ることもいい。園監督作品のなかでは、群を抜いてロマンチックでした。

それはいいんだけど、永作博美演じるミツコさんが泣くほどほれ込んだ気球男、村上がただの宴会野郎にしか見えないのが残念。バカみたいに俺たち真剣に命がけで夢見たよ、といえる熱さとバカさがほしかったです。ロマンチックだけど役者さんたちにこめる監督の魂が足りない、という、重要なところが物足りない作品ではありました。