映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ビクトル・エリセ監督「エル・スール」525本目

エル・スールというのは「南」という意味だそうです。
これを見ると、同じ監督の1つ前の作品「ミツバチのささやき」の意味が少し深くわかるような気がします。
社会派であり、叙情派でもある作品。おそろしい出来事を美しく描いた芸術的な絵本のようです。

スペインっていう国は、ヨーロッパの中では南のほうにあり、太陽がさんさんと輝る明るい国、というイメージがありますが、九州にも雪が降れば、スペインにも影があります。
油絵みたいに、全体にクリーム色がかかったような、暗い家と少ない明かり。

お父さんが切ないなぁ…。それを無邪気な娘の視点で描くなんて、ますます切ないなぁ。
いつもふさぎこんでたのに、急に明るく食事に誘ってくるなんて。
南の故郷に帰りたくても帰れなかったお父さん。
私はそこへ行きます、という場面で映画は終わります。
父と娘ってのは、距離感があるけど、微妙な感情のいきかう繊細な関係だなぁ、と思いました。