あー、切ない。
この映画は、1954年にビキニ環礁で水爆の灰を浴びた第五福竜丸の、ほとんどドキュメンタリーのような映画です。淡々と、普通の人たちのいつもの暮らしが描かれます。偶然仕事中に水爆を目撃し、灰をかぶっても、みんな顔がまっくろに焼けても、病院に入れられても、小さなことをおかしがって笑い、医師と患者の壁なく気さくに話しながら毎日を過ごす。そういう他愛ない日常が乱暴に、突然、奪われてしまうということを、この映画は訴えます。
新藤兼人の映画の中でも、ドラマチックな要素が本当に少ない、すごく抑えられた映画だと思います。静かに、目立たず、大声をあげることなく、原爆などというもののない世界を希求する。
今も第五福竜丸は「夢の島:で展示されているんだそうです。今度見に行ってみよう、と思いました。
ところでタル・ベーラ監督と新藤兼人監督って、極北的な共通点がありますよね。お互いに相手の作品をどう思ってたんでしょう。