映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

落合賢 監督「太秦ライムライト」652本目

テレビでやってたので見た。
私は元ネタの「ライムライト」が、いい映画だけどあまり好きじゃなくて、この映画にも少し先入観をもってしまったのですが、見てみたらよかった。思ったより面白く、心情的にも腹に落ちました。こっちの方が本家ライムライトより、同じ道の大ベテランということで、少女が老人に憧れる心理が腑に落ちます。

(以下ネタバレ)少女と老人が結ばれたりせず、ちゃんと老人を切り倒して、彼のバーチャル屍を超えて強く上昇していくのがいいです。

主役の福本清三さん(思わず「さん」付け)に対するリスペクトのために、評価2割増くらいになってしまっているかもしれません。
主演の山本千尋もいいですね。上手になったあとの立ち回りがキリッと決まってると思ったら、太極拳の選手なんですね。ステキです。殺陣のときの真剣な面持ちにも納得がいきます。
この二人のキャスティングが絶妙、というか、どちらかが違う人だったら成り立たなかった映画だと思います。

ところで、時代劇が減っていくこと自体は、たぶん避けられないと思ってます。映画がたくさん作られていた1950年代の映画人はおじいさんおばあさんの世代がまだリアルに江戸時代だったはず。1950年から2014年までもうすでに64年、その間にも映画にしたい題材はたくさんあったでしょう。未来の映画だって作りたい。今の50代が懐かしんで見たいのは江戸時代ではなくて昭和だし。以前に起こったことから時間がたてば、濃度が薄くなってくのは避けられないと思う。でも、数が減ってもいい時代劇をこれからもちょくちょく作ってくれるといいなと思います。