これが黒澤監督の初監督作品だそうな。
志村喬、大河内伝次郎(「百万両の壺」よりだいぶ年を取ってる)、月形龍之介といった大御所や轟夕起紀子が出てるのに、初監督作品というのはちょっと意外。
人間のどろどろした部分がほとんど出てこなくて、三四郎はさわやかなスポーツマンだけど、この頃の柔道は負けたら死ぬ武術だったようなので、かなり悲壮感が漂います。昔は「スポーツは爽やか」なんてイメージはきっとなかったんだろうなぁ。
何もない荒野での決闘の場面で、びゅうびゅうと風が吹きすさぶ中を、組んで固まった二人に至近距離から迫ったり、投げられた龍之介が斜面をずるずると滑り落ちる演出なんかは、なかなかどぎつくて、黒澤監督の味がすでに出てるなと思います。
黒い煙をモクモクと吐く、一両だけの蒸気機関車かぁ。なんか、いいもの見たなぁという気持ちです。