映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

黒澤明監督「姿三四郎」2373本目

これが黒澤監督の初監督作品だそうな。

志村喬、大河内伝次郎(「百万両の壺」よりだいぶ年を取ってる)、月形龍之介といった大御所や轟夕起紀子が出てるのに、初監督作品というのはちょっと意外。

人間のどろどろした部分がほとんど出てこなくて、三四郎はさわやかなスポーツマンだけど、この頃の柔道は負けたら死ぬ武術だったようなので、かなり悲壮感が漂います。昔は「スポーツは爽やか」なんてイメージはきっとなかったんだろうなぁ。

何もない荒野での決闘の場面で、びゅうびゅうと風が吹きすさぶ中を、組んで固まった二人に至近距離から迫ったり、投げられた龍之介が斜面をずるずると滑り落ちる演出なんかは、なかなかどぎつくて、黒澤監督の味がすでに出てるなと思います。

黒い煙をモクモクと吐く、一両だけの蒸気機関車かぁ。なんか、いいもの見たなぁという気持ちです。

姿三四郎[東宝DVD名作セレクション]

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  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2015/02/18
  • メディア: DVD