原題は「The Damned」。ロンドンパンクのダムドのバンド名はここから来たわけだな。DVDジャケットの写真はまるで、シド・ヴィシャスの彼女だったナンシー・スパンゲンみたいだし(あ、男か)…しかし大胆なタイトルですよね。貴族の話なのにDamnedなんて。彼らが地獄に堕ちたのは当たってるけど、勇者どもじゃなくて紳士淑女たちですね。
「ベニスに死す」は、デリケートでロマンチックすぎて、実世界に適応できない中年貴族が超美少年に横恋慕する、とんでもない映画なんだけど、そのダメさがなんとも愛しくて、もしかして駄作なんじゃないかと思いつつ何度も見てしまいました。それがヴィスコンティの魅力。あの映画で中年貴族を演じたダーク・ボガードは、この映画ではフリードリッヒとして中心的な役割を演じています。あんな白塗りのわびしい男のわずか2年前の彼の精悍なこと。役者ってやっぱりすごいわ。
やけに細い貴婦人は誰だろうと思ったら、口元をちょっとだけ歪める笑い方が、シャーロット・ランプリングだ!若い。「愛の嵐」よりも4年も前だ。
ヘルムート・バーガーはアクの強い役をやっても美しいけど、女装はあんまりイケてないな…。これマレーネ・ディートリッヒだよねきっと。
フェリーニの映画とかを見ても、貴族って退廃するのが基本なんだろうか。いや、自己管理を続けてずっと成功し続ける人たちもいるはずだけど、映画の題材としては面白くないんだろうな、だから、映画の中の貴族はみんな没落する。この映画ではナチスの台頭と貴族の没落が平行して、影響しあって描かれます。ナチス側につく人たちにモラルや良心があるとは思えない…生き延びるためって自分に言い聞かせれば納得できるんだろうか?この美しい金髪の冷酷な人たちは、いったい私たちと何がちがってたんだろう…。