とってもとってもロマンチックでセンチメンタルな、昭和30年代の少女マンガみたいな映画。初期のアメリカの無声映画とかも、このくらいロマンチックなものってけっこうあったんじゃないでしょうか。淀川長治が「キレイキレイ」と表現したような。リリアン・ギッシュが出てる、たとえば「散りゆく花」とか。
絶世の美女・岸恵子は日系二世のアメリカ人。清潔なハンサムの鶴田浩二は、ハワイで行われる水泳競技に参加する日本屈指のアスリート。ハワイで出会って恋に落ちるこの夢のようなカップルが、美しくきれいにたわむれるハワイの風景は、まさに少女マンガ。でもこの幸せは続かず、第二次大戦で従軍する彼と彼女との間は引き裂かれます。終戦を迎え、ハワイで捕虜となって瀕死の重傷で臥せりつつ、彼女との再会を望む鶴田。彼は脱走して彼女の家を訪れ、最期のときに再会を果たします。彼を一生思い続けて教会に尼僧として暮らす彼女を、友人がのちに訪れるのが冒頭の場面でした。
岸恵子一家がほとんど英語を話さないことなど、問題ではありません。 のちの仁侠映画のイメージの強い鶴田浩二がスイートすぎて違和感があることも気にしません。絶世の美男・美女だから成り立つ美しい夢の世界こそが、映画ってものなんだよなぁ。と改めて実感した作品でした。