映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マルセル・カミュ監督「黒いオルフェ」3082本目

テーマ曲がすごく有名。オルフェウスとユリディスの古典をカーニバル中のブラジルに置き換えたらしい。オルフェウスの軽妙な好青年ぶり、ユリディスの清楚さ、彼を愛するミラの妖艶さが魅力的。

それにしても、ブラジル人って日系人がいたりアイルトン・セナがいたりするし(没後久しいけど)、もっとさまざまな肌の色の人がいると思ってたけど、この映画にはまるでセネガルあたりで撮られたみたいに、アフリカ系の人が多い。人口比半分のはずの白人は、カーニバルの隊列以外には登場しない。不思議だなぁ…。音楽もサンバというよりアフリカ音楽みたいだ。

ユリディスを付け狙う謎の死神、ちょっと怖い。メキシコだっけ、死者のまつりがあるのは?…無垢で愛されるゆえにねたまれ、憎まれるユリディスと、彼女を愛してしまって追いかけるだけのオルフェ。出会いから死まで、わずか2日間くらいで破滅へまっしぐらというドラマです。あまりにあっけない。エキゾチックな人々のカラフルでミステリアスなカーニバル、という面ではすごく魅力的だけど、人間の深淵につながる深みが感じられるということはなかったかな。ブラジル映画ってほとんど見たことないので(製作はフランスだけど)、珍しいもの見られたなーって感じはありました。