沖縄の西表島の炭鉱で働くために台湾から移住してきて、そのままずっと住み続けている人々がいる。国と国の関係は時代によって、政治や経済の影響でどんどん変わっていく。宣伝はお金と嘘でいっぱいだけど、見せられた夢に憧れる人の多くは失望する。失望したあとの人生は長い。けっこう長い尺を使って、アメリカから渡ってきた日系アメリカ人と思われる若者も生活を語る。テレビや雑誌で取り上げられる「ハーフモデル」などとは無縁の島の生活。
起承転結のないこういうドキュメンタリーを撮る理由は、”忘れられた人々”、invisible peopleに目を向けることだと思う。製作者が強く結論を意識すると、観客を誘導する作品ができてしまう(マイケル・ムーアとか)。それを避けたいという強い気持ちがあったんだろう。知らなかったことにただ目を向けることが、この映像を撮ってくれたことに対する観客のやることだと思う。
岸政彦が続けている東京、大阪、沖縄の生活史プロジェクトと似た感触の作品だとも思う。市井の人たちの語りは断片的で、長尺の映像作品としてまとめるのは難しい。でも、文字でなく映像として発表することで伝わることも多いから、なにか新しい方法論が出てきてもいいのかもしれない。