映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ヴィットリオ・デ・シーカ監督「自転車泥棒」123本目

1948年、イタリア作品。

第二次大戦後のがらんとしたローマの町を、大勢の人たちがバスいっぱいに乗りこみ、自転車で走っています。

ひどく不景気で主人公の男性は長い間仕事につけていない。やっと職安で見つけた仕事には自転車が必須。家の使用済みのシーツまで質入れしてやっと質から出した自転車で、ポスター貼りの仕事を始めるが、仕事中にその大事な自転車を盗まれてしまう・・・・。

ストーリーはいたってシンプルで、どこの国の街角でも起こっている小さな事件の連なりなんだけど、これほどドラマも装飾もないシンプルでリアルな映画を、イタリアでこんな昔に撮っていたってのがちょっと驚きました。父にいつもくっついてくる、パツパツの元気な少年が、けなげです。

なんか・・・いま東北できっとこういう映画を撮っている人がいるんじゃないかな?とか思う。今なら自転車泥棒は生死にかかわるような事件ではないけど、この親子にとっては希望の綱。失ってどうしようもなく涙を流す姿に、説明や演出のしようもありません。
そんなことを考えました。…以上。