映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

デイヴィッド・リーン監督「戦場にかける橋」251本目

1957年作品。
カラーで、そこまで古いと感じさせない画面(戦争映画ってわりとどれもそう)。日本軍の捕虜となった英国軍人たちが、日本軍が進軍するための橋を建設させられる話。斉藤大佐という役は、実際こうだったろうと思われる、日本語アクセントで堂々とした演説をし、早川雪洲っていうのはなかなか実在感のあるいい俳優さんだったんだなーと思います。

しかし・・・捕虜となった英国将校と日本将校はいつまでも意地を張り合い、工事は遅々として進まず、ああ戦争なんか嫌だ、だけど戦争映画を見るのもやっぱり嫌だ、と最後までひたすら忍耐が続きます。

斉藤大佐は上の命令に絶対服従の日本軍人で、厳しい処置もするけど、ニコルソン大佐に英国製コンビーフやスコッチをふるまうなど、人間的な面も描かれています。

マーチングバンドが奏でる、かの有名なテーマ曲の中で、最悪の結果を迎えたこの映画はフィナーレとなります。戦争に行った人が作った戦争映画って、ただ暗いだけでもただ悲惨なだけでもなくて「笑いもあったけど狂気の沙汰だった」っていうような描き方をするなぁと思います。やりきれない、胸苦しい想いを観客にさせるのが、この映画の目的なんでしょうね。1957年の評論家と2013年の評論家は違う環境に育っているので、今これがアカデミー作品賞を取るとは思えないけど、私たちはこれを評価する感覚をもう失くしてしまったのかな、という危機感もちょっと感じます。