映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

オリバー・ストーン監督「プラトーン」548本目

アメリカのすごいところは、ここまで赤裸裸な自分たちの悪事を映画にできるところだと思う。
地獄の黙示録」もすごい映画だと思う。でも、オブラートにくるんである。
この映画は、ドキュメンタリーみたいに、キャーキャー叫ぶベトナム人を撃ち殺したり、同僚が両手を吹き飛ばされて死んでしまうところとかを、そのままに映画にしてるところが思い切ってる。

戦争に過剰に順応して残虐な行為を繰り返す人と、正義感を貫こうとする人がいる。
この映画では、誰の心の中にもその二人がいると言う。その通りなんだけど、日本では過去の自分たちの戦争のことで、ここまでの映画を撮ることは絶対にまだできないし、観客にとって、自分の中にも悪人がいると受け入れるのは簡単じゃないと思う。自分は真っ白だという意識がなければ、「倍返しだ!」とか「土下座させてやる!」なんて暴力的なことを肯定して見られないだろうから…。

なんか、映画作品としての凄みは「地獄の黙示録」のほうがあって、芸術的だと思うんだけど、こっちはアメリカの普通のテレビドラマがそのままベトナムに行ってしまったような、ハンバーガー屋でつるんでいそうな男たちが、すとんと死んだリ殺したりする怖さがあります。戦争は人を狂わせるというけど、この映画では普通の人たちがガソリンスタンドの仕事みたいに銃を撃ち、人を殴り、爆死する。

この人たちきっと、戦争に行くまでベトナムとタイの区別もついてなかっただろうにな…。