映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フランコ・ゼフィレッリ 監督「ロミオとジュリエット」671本目

1968年作品。

この映画の中の人は、(一部をのぞいて)みんなおそろしく衝動的です。「ゴッドファーザー」に出てくるマフィアの人たちみたい。愛と、その裏返しの憎しみ、生と安易な死。
若く美しくおろかな二人の恋愛は、はげしい性欲をともなって誰にも止められません。
電車が駅を出てちょうどスピードアップしているときに障害物に当たって急ブレーキ、みたいに、一番心拍数が高まったところなので、止められると反動ではじけてしまいます。誰にも反対されずに5年も付き合ってたら、倦怠期が来たかもしれないのに。

ストーリーは単純なのに、若さゆえの衝動が、あまりにも初々しい二人の魅力で説得力があるし、みんな結末を知ってるのにのめり込んでしまうのは、普遍的なテーマだからなんでしょうね。

冒頭と最後に、「むかしむかし…」みたいな語りが入るのは、熱くなりすぎた気持ちをすこし冷ます効果がある気がします。

14歳や15歳では、普通に知り合っても今なら親が反対するだろうな。でも、こんな燃えるような恋愛に一瞬だけ身を焼かれるという人生が不幸ともいえない。

思ったより衝動的で性急で、予想通りに美しい、青春映画でした。